あるいは 迷った 困った

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『この恋はこれ以上綺麗にならない。(1)』綺麗ってなんだろうって思う漫画の感想(ネタバレ注意)

 

この恋はこれ以上綺麗にならない。は、潔癖症の少女と綺麗な殺し屋の少年のボーイ・ミーツ・ガールな物語となります。

潔癖症というのはその名の通り病気の一種なので、それをキャラクター属性のように扱っているというのはいささか不謹慎であるとも言えなくもないのですが、非常に興味深いテーマでもあると感じて本作品を読んでみました。

人間誰しもどこかしら潔癖な部分はあるものだと思います。

潔癖症とまでは言わないまでも、生理的に受け付けない何かって絶対にありますよね?

僕の場合はどうしてもタバコが苦手で、歩きタバコをしている人の側を通る時には息を止めていますし、喫煙コーナーの近くには極力近づかないようにしていたりしますが、こういうのも潔癖の一種なのだと思います。

ですが、この恋はこれ以上綺麗にならない。の主人公である漆原杵真の潔癖症はそんな甘っちょろいものではなく、かなり重度のようです。

他人の物には手袋なしには触れられないというのは、かなり極まっていますね。

ちなみに、潔癖症の人の中には潔癖であるが故に汚いものに触れることができず、掃除ができない。ゴミ屋敷に住んでいる人が実は潔癖症だということは往々にあるようなのですが、漆原杵真の場合はむしろ過度に掃除しなければ気が済まないタイプの潔癖症のようですね。

そんな潔癖症の少女が、殺し屋の少年と出会って死体の掃除をするという、可愛らしい表紙とは裏腹にかなり狂気的な作品ではあるのですが、他に類似作品の無い面白い作品だと思いました。

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本作の概要

潔癖症の女の子で主人公の漆原杵真は、なんで自分の綺麗好きが周りに受け入れられないのかが理解できません。

潔癖症が原因でゴミ屋敷に閉じ込められたり、うまく周囲に馴染めませんが、閉じ込められたゴミ屋敷で綺麗な殺し屋の少年と出会います。

本作の見所

潔癖症の女の子

家の戸締り確認をちゃんとやったのか?

服を着る順番や体を洗う順番はどうか?

必要ないものを捨てられないことはないか?

このような誰でもある程度は気にすることに対する強迫観念を持ってしまい、病的なまでに執着してしまうことを強迫性障害というようです。

そう言われると、ジンクスやルーチンといった行動もある意味では強迫性障害の一種なのかもしれませんね。

僕も病的にまで拘ることはないものの、日常生活における行動の順番というか、リズムを崩されることを極端に嫌うタイプなので、素人考えですがもしかしたら軽度の強迫性障害にあたるのかもしれません。

そもそも強迫性障害は日本で40人に1人が持っているようなので、強迫性障害とまではいかないまでも何かしらの強迫観念を持っている人は多いのかもしれませんね。

そして、本作品のテーマの1つである潔癖症強迫性障害の一種です。

「一日に何十回も手を洗ったり、お風呂に2時間近く入ったり、手袋なしでは他人のものに触れられない。そういうのはおかしいらしい」

綺麗であることは悪いことではない。

不潔であることの方がよっぽど悪いことである。

本作品の主人公、漆原杵真はそのように考える潔癖症の女の子です。

その考えは間違っていないとは思いますが、しかし生きづらい、受け入れられづらい思想であることもまた事実だと思われる。

他人には理解できない拘り。

それを害されることの気持ち悪さは理解できます。

僕にもそういう拘りの一つや二つありますしね。

しかし、必要以上に潔癖であることは周囲からは相当異様に見えてしまうことも確かだと思うのです。

それに自分よりも潔癖である人を見ると、相対的に自分が不潔だと言われているような気がして気分が悪いもの。

実際、漆原杵真の潔癖症であるが故の言動は周囲の反感を買ってしまうこともあるようですね。

ゴミ屋敷に閉じ込められる漆原杵真

時たま社会問題として取り上げられるゴミ屋敷ですが、実はゴミ屋敷に住んでいる人が潔癖症だということは往々にしてありえることだそうですね。

不潔なものに触れられないため、結果的に掃除ができないようになってしまうという理屈です。

しかし、漆原杵真の場合は恐らくそういうタイプの潔癖症ではなく、とにかく掃除をしなければ気が済まないタイプの潔癖症なようです。

とはいえ、さすがにゴミ屋敷に閉じ込められたら潔癖症な人でなくとも正直鳥肌ものですよね。

漆原杵真に至っては体中に湿疹が出るほど心身に影響がありました。

「私はおかしい。でもそれが私なのだ。不潔なままでなんて許せない。キュパキュパに掃除しなくてはならない。私がどれだけ大変でも、この世界はキレイであってほしいのだ」

そんな状態なら、僕ならゴミ屋敷からの脱出を真っ先に考えるところですが、ゴミ屋敷の不潔さの方が許せず、そこから逃げ出すより前に掃除することを選ぶのが漆原杵真というキャラクターです。

綺麗な殺し屋の少年

掃除に掃除を重ねて床が見えてきたゴミ屋敷ですが、床下の格納庫から物音がします。

普通なら怖いと思う所ですが、この辺なかなか度胸のある漆原杵真は床下の扉を開けるのですが、そこには長髪の綺麗な少年が閉じ込められていました。

「この世の悪い奴らは大抵不潔で汚れているけど、その男の子は・・男の子にしてはなかなか清潔だった」

カンパニュラとなのる少年に対する漆原杵真の感想ですが、明らかに悪人っぽい家主を殺害している姿を見てそんなことを思うとは、なかなか独特な感性なのではないかと思います。

また、漆原杵真にとっての清潔の定義って何なんだろうと考えさせられもしますね。

漆原杵真にとってカンパニュラの何が綺麗だと感じるのか?

「そして私の中に、何だかよくわからない気持ちが唐突に生まれたのだ」

この何だかよくわからない気持ちというのが恋なのであれば、恋は盲目ということなのでしょうか?

それともやっぱり何か綺麗だと感じる基準があって、それ故芽生えた気持ちなのかは分かりませんでした。

それが何なのかの答えも、今後描かれていく本作品のポイントなのかもしれませんね。

それにしても、カンパニュラが殺害した家主の男の死体の処分(掃除)を進んでやりたがるとは、漆原杵真の潔癖症も相当なものです。

「溶解剤を投入するとたちまち死体は解けていく。袋の口の端に弁のついたストローを挿し込んでそこからガスを排出させた。私は、その姿に見惚れてしまった」

確かに、死体の後片付けをする人のことを掃除屋と呼んだりもしますが、そんな掃除までやりたがるとはって感じですね。

やっぱり漆原杵真にとっての綺麗と不潔の概念が気になるところです。

転校生と殺し屋ラブコメ

「君を護りに来たんだ」

田中貫太と名乗ってカンパニュラが漆原杵真のクラスに転校してきました。

何から護りに来たのか。今のところ詳細は不明ですが、謎めいていて裏がありそうなカンパニュラではありますが、何となく護りに来たというのは嘘ではないように思えますね。

「でも君、言葉使いや人への接し方は出来るだけ改めたほうがいいよ?」

「私と私のものに触らないでって、どうやって言うべきなの?」

謎めいていて裏のありそうな少年であるカンパニュラよりも、漆原杵真の言動の方が普通ではないのがちょっと面白いですね。

また、最後にどうやらカンパニュラに気がありそうなヒマワリという女の子の殺し屋が漆原杵真を狙って登場します。

カンパニュラにヒマワリ。

どちらも花の名前ですが、これはいわゆるコードネーム的な何かなのでしょうか?

続きが気になるところですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

他に類似作品の無い面白い作品でしたが、こういう独特の世界観には何となくゼロ年代前半の雰囲気があるような気もします。

個人的には、漫画やラノベといったエンタメ作品を読み漁るようになった時期の作品に雰囲気が近いこともあって、この恋はこれ以上綺麗にならない。の雰囲気には少々懐かしさを覚えました。

最近は気軽に読めてスカッとする感じのする異世界転生・転移ものの主人公が無双する系の作品にハマり気味ですが、こういう作品もやっぱり面白いと思いました。