『服を着るならこんなふうに(9)』アパレルとテクノロジーの組み合わせが面白い漫画の感想(ネタバレ注意)
毎巻思うのですが、『服を着るならこんなふうに』を読んだ後は無性に洋服屋さんに行きたくなりますね。
それなりにオシャレに興味はあるけど、ファッション誌なんかまで読むほどではない。だけど漫画は好きですよぉ~って層にとっては、ある意味どんな広告よりも効果がある作品なのではないかと思っています。
少なくとも、僕の場合は『服を着るならこんなふうに』を読んだ後に結構アパレル業界にお金を落としているので、若干面白い広告くらいな気持ちで読んでいたりもします。(笑)
今巻は、ファッションには詳しいけど電子機器に弱い環がついにスマホを手に入れた影響もあるのか、アパレル業界とテクノロジーを絡めたようなエピソードが多かったような印象があります。
どんな業界でもどんどんITの活用で便利になっていく世の中ですが、そういう面ではいつまでもアナログな印象のあったアパレル業界ですが、それでも徐々に変化していっていることが分かる興味深い内容だったと思います。
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本作の概要
今の時代、何をするにもスマホアプリって感じの世の中、電子機器が苦手だった環もついに重い腰を上げてスマホを購入します。
そういうわけで今巻はアパレル業界におけるテクノロジーの活用事例についてのエピソードが主軸になっています。
また、今まではファッション弱者の祐介に対してファッションを教えるのがエピソードの主軸でしたが、大人である祐介とは違うもうすぐ大学生の子供。祐介の友人の井上の弟の大翔にファッションを教えるエピソードによって、今までより若い世代に対しても参考にしやすい内容になっているのではないかと思います。
本作の見所
スマホを使う環
「教えてほしいんだ・・スマホの買い方を!」
今巻はそんな環のセリフから始まります。
1巻で洋服を買うのに尻込みしていた祐介も、その買い方に苦手意識を持っていたような気がしますが、何であれ一番最初のところで躓いて苦手意識を持ってしまうケースが多いのかもしれませんね。
僕はどちらかといえば祐介のタイプで、こういうガジェット系のものを買ったりするのには特に苦手意識はありませんが、未だにガラケーを使っているようなタイプの人は購入の段階でスマホに苦手意識を持っていたりするのでしょうか?
とはいえ、さすがにスマホの社会への影響度は無視できるようなものではなく、本当に何をするにも必要になってくるので、それを自覚している環もついに重い腰を上げたわけですね。
その後、環がLineを使っているシーンがあるのですが・・
「全然続き来ないんだけど何これ!? どうしたの環!?」
高橋奈那に「こんにちは」と一言Lineした後、その後のメッセージが続かなった環。
これは受け取った方からすれば確かにナニコレってなりますよね。(笑)
だけど、確かにLineって一度に言いたいことを言い切るんじゃなくて短い文章を区切って出したりしがちで、それに慣れないと変なことになってしまったりするかもしれませんね。
僕も、さすがに環のような理由で会話が途切れたことはありませんけど、誰かにLineしている途中で何かしら割込みが入って中途半端に会話が途切れてしまったことならあります。
ともあれ、スマホというガジェットを新たに手に入れた環。
「そうとわければ頑張らないとね・・」
アパレルというまだまだIT技術の活用が後進的な分野とはいえ、今まで全く使っていなかった環にとってはかなり世界が広がったに違いありません。
今巻では時々バイトを増やそうとしている環が印象的でした。(笑)
アパレルとテクノロジー
洋服自体がかなりアナログな存在であることも相まって、アパレルとテクノロジーってあまり相性の良い存在ではないと思っていました。
例えば、僕は割と何でもAmazoneとかで買い物をする方ですが、洋服だけは通販で購入したことはありません。
なんであれ実物を見た上で買いたいものってあると思いますが、洋服ってその筆頭ですからね。
デザインや質感、自分の持っている服とのコーディネートなんか、ネット上の写真を見た印象と実物を見た印象では全然違いますから、同じように思っている人は多いと思います。
とはいえ、有名ブランドだった通販をするようになってきている時代。
アパレル業界もテクノロジーをちゃんと活用しているんだよということを今巻では強調して教えてくれます。
ZOZOSUITなんて本書を読んで初めて知りましたが、洋服を通販する上で最大のネックとなるサイズの問題をこういうアプローチで解決していこうとする試みがあったりするんですね。
考えてみれば、アパレルの通販における最大の問題はサイズの問題であるはずですが、何とか試着しやすいようにしたり、ぴったりのサイズを選びやすいようにするアプローチの工夫は面白いと思います。
3Dワンピースや電子ペーパー、それに自動で靴紐調整してくれるスニーカー。収納に特化したコートや気温の変化に対応してくれる洋服。
3Dワンピースはともかく、洋服というよりは今のところ色物の面白ガジェット感のある代物ですが、洋服よりはガジェット的なものに興味を持ってしまうような僕のようなタイプの人間でも面白いと思いやすいものがアパレルの世界にもあるんだと教えてくれました。
オシャレの先生
「俺別にオシャレになりたいわけじゃないんで・・」
主人公の佐藤祐介の年齢も相まって、どちらかといえば大人の男性のファッションが主題になりがちな『服を着るならこんなふうに』ですが、祐介の友人の井上の弟の大翔の大学デビューのための洋服を選ぶエピソードでもっと若い世代のファッションについても教えてくれています。
オシャレをしようとすること自体が格好悪いという大翔の考え方は、僕も昔は多少なりとも思っていたところですが、今思えばただただ視野狭窄な考え方だったなぁと思っています。
ただし、メッチャ気持ちは分かるかもしれません。
若い頃ファッションといえば機能性重視で、今でも多少はその傾向はあるくらいなので。(笑)
ともあれ、環をはじめとするファッション強者の3人で大翔にファッションを教えるエピソードが2編ありますが、どちらも誰のプレゼンが受け入れられるのかという競争になっていて面白かったと思います。
また、少ない予算内でどれだけオシャレができるのかという視点も面白かったですね。
祐介の場合、何だかんだで結構高額な買い物もしていますから、参考にしきれない部分も多いですから。
他人目線のファッション
今巻では祐介の後輩の金子がファッションを教えるエピソードも多かったような気がします。
環が祐介にファッションを教えるのが主軸の漫画ですが、ファッションのような答えの無いものに対しては様々な視点でものを言うキャラクターがいた方が面白いし説得力があるということなのだと思っていますが、この金子のファッションに対するスタンスにはかなりなるほどと思わされました。
「俺を見るのは俺じゃないんで」
金子もまたオシャレ男子ですが、そのスタンスの中心は「他人からどう見えるか」であるようです。
当たり前といえば当たり前の発想なのだと思いますが、ちょっと「なるほど」と思ってしまいました。
洋服を買う時、もちろん誰かから見てどう感じるものになっているのかを考慮するわけですが、その誰かとは大抵自分自身だったりすると思います。
しかし、人の好みはそれぞれで、自分が良いと思っているものが必ずしも人から受け入れられるとは限りません。
他人目線でどう見えるファッションなのか?
そういう割り切った考え方で洋服を選んでみるのも面白いのかもしれませんね。
総括
いかがでしたでしょうか?
相変わらず、人並み程度にしかファッションに興味がない僕にもファッションの面白さを教えてくれる良い漫画だと思います。
漫画9冊分も飽きずに読まさせるファッションの奥深さにも驚きますが、考えてみればファッションを専門に仕事にしている人も山ほどいるわけで、そりゃあ奥深くて当たり前といえば当たり前なのかもしれませんね。
ちなみに、基本的にはメンズファッションを主題にした『服を着るならこんなふうに』ですが、これの女性版も出るみたいです。
僕は男性なのでどうしてもメンズファッションの方が興味を持ちやすいですが、ファッションの最先端がレディースであることもまた間違いないのだと思います。
普通に勉強にもなるし面白そうなので、これもまた単行本が出たら読んでみたいと思っています。