あるいは 迷った 困った

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『ラブひな(11)』現代お約束ラブコメの原点とも言える作品の感想(ネタバレ注意)

 

浦島景太郎不在の11巻です。(前巻のレビューはこちら 

あっさりと留学試験に合格した浦島景太郎の旅立ち、そして帰ってくる直前まで時間が飛んで、浦島景太郎が不在のひなた荘が描かれているのですが・・

そこに浦島可奈子という浦島景太郎の妹が登場する波乱の展開になっています。

極度のブラコンであり、独占欲が強く兄に近づく女性に非常に厳しいヤンデレな一面もあります。

考えてみれば、『ラブひな』の連載当時にはヤンデレという属性はまだ一般的ではなく、ようやくツンデレが認識され始めたくらいだったような気がしますが、どんな属性であれ昔から存在はしたということですね。

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本作の概要

浦島景太郎は当初頭が良くないキャラクターとして描かれていましたが、東京大学に合格した今、そんな風な目で読める読者はほとんどいないでしょう。(笑)

というわけでどうやら頭が良かったらしい浦島景太郎は自身で見つけたやりたいことをやるために留学試験にあっさり合格し、半年間の留学が始まります。

そういうわけで管理人である浦島景太郎がいなくなったひなた荘。

そして、もうすぐ浦島景太郎が帰ってくるという時期になって現れたのが浦島景太郎の妹を名乗る浦島可奈子でした。

ブラコンでヤンデレの浦島可奈子が平和だったひなた荘の日常に一石を投じます。

本作の見所

浦島景太郎の旅立ち

浦島景太郎は最初に比べて本当に格好良くなってきたと思います。

考えてみれば、もともと幼い頃の約束を守るためとはいえ明確な目標を持って東大受験に臨んだりしていたくらいなので、そもそも目標を持ったらそこに向かって真っ直ぐなところがある性格なのだと思います。

そして、そんな浦島景太郎に徐々に惹かれていった成瀬川なるは、意外と既に骨抜きと言っても過言ではないくらい浦島景太郎のことを好きになってきているのではないかと思われ、この浦島景太郎の旅立ちのシーンではそういう部分がかなり強調されていた印象があります。

「・・だって、だって半年よ・・。半年もたったら私の気持ちだってどうなってるかわかんないじゃない。せっかく私あんたのこと・・」

自分もアメリカに付いていくのだと我儘を言ってしまったり、明らかに浦島景太郎のことを好きになっていることを認めるセリフを言っているところも、ここまで自分に素直な言動をしている成瀬川なるは珍しいですね。

「その・・俺、むこうでがんばって勉強してくるから。半年後・・4月になったら・・今度こそ一緒に東大行こう。幸せになれるかなんてわかんないけどね。でも・・俺、前にも言ったけどお前のことが・・好きなんだ・・だから・・ね。ムチャ言わないで・・」

誰だこのイケメン・・っ!

・・って思ったら浦島景太郎でした。

以前の浦島景太郎であれば成瀬川なるの言動に舞い上がってしまって、またドタバタコメディが始まるところですが、今回は格好良く締めていますね。

主人公なだけあって、もっとも大きく成長しているキャラクターであることは間違いありません。

浦島景太郎のいないひなた荘

浦島景太郎がいなくなって半年。

成績が悪かったしのぶは成瀬川なるの家庭教師のおかげで県内トップの高校に進学し、ちょっと大人っぽくなってきています。

高校一年生といえば初登場時の素子と同じですし、いつまでも子供っぽい感じじゃ可哀そうですしね。(笑)

そして、そんな素子はといえば・・

「すいません。なる先輩、キツネさん。勉強に集中できませんので静かにしてください」

そんな予感はしていましたが、まさかの浪人生に。

浪人生だった浦島景太郎を馬鹿にしていたことがあるだけにこれは恥ずかしいですね。

しかし、どちらかといえば凛としたところのあるキャラクターだった素子のこういうギャップが見られるようになって、それはそれでキャラクターとしての魅力を増してきているような気がします。

スゥ、サラ、キツネはあまり変わりませんが、そういう変わらない部分があるのもそれはそれで良いと思います。

浦島可奈子が初登場

ラブひな』には数多くのお約束的なキャラクターが登場しますが、その中でも浦島可奈子は当時としてはかなり珍しいレベルでオタク受けしそうなキャラクターだったのではないかと思います。

ちょっと普通ではないレベルのブラコンで、兄である浦島景太郎に自分以外の女性が好意を持つことすら許さないヤンデレで、変装と腹話術が得意得意だったり、そのファッションセンスさえも現代日本を舞台とした一応は日常系作品である『ラブひな』のキャラクターとしては異質でした。

今では、そういう類の作品に一人くらいはそういう少し世界観ブレイカーなキャラクターが登場するのは定番といえば定番な気もしますが、当時としては珍しかったと思います。

一癖も二癖もあるはずのひなた荘の住人たちを翻弄するほど周囲を自分のペースに巻き込むのが得意な浦島可奈子ですが、そんな彼女に寄り添おうとする成瀬川なるには少しずつ心を開いていこうとするのが可愛らしかったと思います。

しかし・・

「その・・私が・・私がその約束の女の子なの・・(多分)」

浦島可奈子が真の敵とまで公言する約束の女の子は、ほぼ確実に成瀬川なるであることはこの時点で明らかになっています。

「・・あなたのことだけは信じてたのに・・ひどいです・・」

そのことを知ってショックを受ける浦島可奈子。成瀬川なるに少し心を許しかけていた証拠ですが、ここでショックを受けるあたりがもともとの言動とはギャップがあって可愛らしかったです。

ひなた荘の恋愛偏差値

ドラゴンボール』の戦闘力しかり、バトル漫画では強さが数値化されることはままあることですよね。

それと同じではないかもしれませんが、浦島可奈子によってひなた荘の住人の浦島景太郎への好意を偏差値化しているのが面白いです。

一応受験漫画の一面もあるからか、ただの得点ではなく偏差値としているのも良いですね。

ダントツ一位であることに照れつつも、全く反論はしない成瀬川なるがひとつ印象的で、もっと前なら「なんで私が!」と文句のひとつでも言っていたのではないかと思われます。

そう、かなりの高偏差値に訂正を要求する素子のように。(笑)

もちろん、この偏差値は浦島可奈子の主観でしかないものなんですけど、カオラ・スゥが二位なのも意外性があって面白いですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

ラブひな』は今までにも何度か通して読み返している作品ですが、浦島可奈子が登場するといよいよ終盤が近づいてきたという風に感じます。

次巻は、帰ってきた浦島景太郎に注目ですね。

(次巻のレビューはこちら