『Jog!Jog!Jog!(1)』ジョギング初心者の楽しみ方がわかる漫画の感想です。
みなさん走るのは好きですか?
僕は割とガチで好きで、毎週末のジョギングはもう何年も欠かしていません。
しかし、ジョギングは趣味としてはかなりポピュラーな部類に入るものの、実のところ好き嫌いはかなりハッキリわかれていると思います。
嫌いな人はよく「走って疲れるだけなのに何が楽しいのかわからない」的なことを言いますよね?
なるほど、確かに疲れるし「何が楽しいのか」と問われたら言葉に詰まります。
いや、間違いなく楽しいと思っているのですけど、じゃあ何が楽しいのかと嫌いな人にも伝わるような説明を僕は持っていません。
なぜならば、走ることによって得られる快感は言葉で説明できるような類のものではなく、しかも性質の悪いことにそういう快感はある程度走れるようにならないと得ることができないから、普段走らない人に体験させることも難しいからです。
そして『Jog!Jog!Jog!』という漫画は、そんな走ることの楽しさを上手く伝えてくれている漫画だと思います。
陸上競技の長距離種目をテーマにした漫画は今までにも多数存在します。しかし、大抵はハイレベルなランナーを描いていて、普段走らない読者に自分も走ってみようと思わせるような内容ではありません。
しかし、『Jog!Jog!Jog!』は走ることに興味を持ちつつも苦手意識は拭えない少女が主人公になっていて、周囲がそんな主人公に走ることの楽しさを伝えようとしていくような内容になっています。
つまり、ジョギングが嫌い(苦手)な読者でも自分を重ねやすく、結果的に走ることに興味を持つことにも繋がるのではないかと考えられます。
もちろん、趣味を他人に押し付けるようなつもりはありませんが、ジョギングはその楽しさそのものを知らずにいる人も多いのも事実だと思います。
知って嫌っているのならまだしも、知らずに敬遠しているのはもったいない!
まずは『Jog!Jog!Jog!』を読んで疑似的にジョギングの楽しさに触れてみてはいかがでしょうか?
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本作の概要
運動が苦手で根性もない女の子・穂坂藍は、友人の青木椎奈の誘いで陸上部に入部しようとします。
今まで運動なんてしてこなかった藍がなぜ椎奈の誘いに乗ったのか?
それは、コンビニ帰りにすれ違ったランナーを格好良いと感じたからなのですが、何とそのランナーは陸上部の先輩・千綾あやめでした。
しかし、筋金入りの運動嫌いである藍。部長の橘美里の指示でちょっと気楽に400mのグラウンドを2週半、つまり1km走ることになるのですが、たったそれだけで尻込みし、完走した後には走るのが嫌になってしまいます。
そんな藍が、徐々に走ることの楽しさに目覚めていく物語となります。
本作の見所
楽しくない
普段運動する習慣の無い人の目に、街中を走るランナーはどのように映るのでしょうか?
藍には、街中を走る千綾あやめが格好良く見えたそうです。
そういう事情もあって、高校入学直後に陸上部に見学に行こうという椎奈の誘いに簡単に乗ってしまいます。
しかし、いざ走るとなると尻込みする藍。
そして、椎奈と一緒に1kmを走ることになりますが、陸上経験者である椎奈に運動嫌いの藍がついていけるわけもありません。
必死で走る藍ですが、息が苦しい、足が思うように動かない、脇腹も痛い。
ただただツライだけの結果に終わり、一度は陸上部には入らないと宣言します。
「だって楽しくないもん」
「苦しいだけであんまり楽しくないっていうか・・」
藍の言い分は、典型的な走るのが嫌いな人、苦手な人の言い分ですね。
そして、そんな藍に走ることの楽しさを伝えたいあやめは「一緒にジョギングをしてみない?」と誘いを掛けます。
さて、一度走って楽しくないと言った藍をジョギングに誘って何が変わるのか、走るのが好きな人なら既にピンと来ていることかと思います。
ジョギングとは?
そもそもジョギングとは何なのか?
特にランニングとの違いを知らない人は非常に多いと思いますが、ジョギングとはかなりゆっくりとしたペースで走ることを言います。
レース目的の練習の意味合いが強いランニングではかなり息が弾むペースで走ることになりますが、ジョギングでは軽い会話くらいはできる程度のペースで走ることになります。
「喋りながら走れるスピードで長時間走る。それがジョギングだよ」
作中でもあやめがそう説明していますね。
運動が苦手であるはずの藍が、あまりの遅さに驚くほどです。
さて、ジョギングの心地良い疲れに藍も1km走をした時に比べて楽しそうですね。少なくとも、辛そうではありません。
「体中がブワーってなってゾクゾク━━ってして体が軽くなったんです!! 足も腕も全部!!! あっ、嘘じゃないですよっ。ホントに今までの疲れがなくなったみたいで、まだまだ走れるぞ━━って感じでっ」
いや、相当楽しそうですね。(笑)
そして、これは走るのが嫌いな人で経験したことがある人はあまりいないのではないでしょうか?
かなり遅いペースで走るジョギングでは、体が温まる内に全身が軽くなり、辛くなるどころか楽になってくるようになります。むしろ、初心者の場合はそれでペースを上げてしまい疲れてしまうというミスがありがちなのですが、そういうミスがありがちになるくらいに体が羽のように軽くなるのですね。
実際、作中でも藍が最後にペースを上げてしまっていましたね。(笑)
走るのが嫌いな人は「そんな馬鹿な」と思われるかもしれませんが、いやはや・・
「そんな馬鹿な」と思った人は、恐らくジョギングをした経験が一切ないはずだと思います。
そう言うと、学校の体育の授業でくらい走ったことがあるって言われるかもしれませんが、あれはジョギングではありません。(ジョギングをしている学校もあるかもしれませんけど)
というか、学校の授業中の短時間でジョギングをやらせるのは難しいでしょう。
大抵の場合は、いきなりレースから始まるのでは無いでしょうか?
レースは走るのが得意な人にとっても辛くてシンドイものだし、しかも学生というレベル差の大きい学生達が揃って一緒に走るという環境。
しかも、早ければ早いほど成績も良くなる。
得意な人はまだ良いかもしれませんが、苦手な人にとっては大きく差を付けられた上に走り終わったら全身疲労で倒れそうになる。
そりゃあ好きになれって方が無茶なものです。
実力差のある椎奈と1kmのレースをした藍と同じ状況ですものね。
つまり、走るのを嫌いな人はジョギングというものの本質を知らずに、ジョギングに対しても学校の授業で走ったようなレースのイメージを持ってしまっているのだと考えられます。
ツライならゆっくり走ればいい。そんな当たり前のことを、実は学校の体育の授業では教えてくれていません。
ウェアとシューズ
走るのが楽しくなってきたら、ウェアやシューズが欲しくなってきますよね。
「わたしもかっこいい服が欲しいっ!!」
藍も、先輩たちや椎奈の着ているようなウェアが欲しいようです。
美里の実家であるスポーツ用品店でウェアを探す藍ですが、美里が先輩らしくウェアの選び方を教えてくれています。
そして藍の勘違い。タイツを勧められて、タイツは先輩たちのように本格的な人がはくものなのではないかと疑問に感じているようです。
確かに、街中を走るランナーを見てもタイツを履いている人を見かけたらガチっぽく見えるので、藍の気持ちも分かります。
しかし、美里の言う通りでタイツには故障防止の意味合いが強いので、初心者こそはくべきものなんですよね。
僕の場合、タイツはピタッとしてはくのが面倒かつ恥ずかしいという理由ではきませんけどね。(笑)
そしてシューズ選び。
陸上用のシューズと言えば超軽量というイメージが強いかもしれませんが、ジョギング用となるとクッション性の強いちょっと重めのものが一般的です。
そうとは知らずに、というか店員に教えられても軽いシューズを買っていく人は意外と多いらしいですが、これは故障の原因になります。
作中でも美里がシューズについて語っていますが、スポーツ用品店の店員は思っている以上に足の形や合っているシューズの選び方に精通しているので、是非ともアドバイスを仰ぐようにしましょう。
気軽でお金のかからない趣味代表のジョギングですが、シューズだけはケチってはいけません。
「学校の運動靴と全然違う! 羽が生えたみたいに軽くなって、足が勝手にぐんぐん進んでいく」
シューズを手に入れた藍の感想ですが、普通の運動靴と走るのに特化したシューズではその快適さには雲泥の差があります。
モチベーションにもつながりますし、何より故障の防止にもなるので、シューズ選びには慎重になりましょう!
お菓子を拒否する藍
藍の姉で、藍が大好きな紫。
走るのに夢中で構ってくれなくなった藍をお菓子で釣ろうとしますが、お菓子好きのはずの藍が釣れません。
ジョギングをする人には少なからずダイエット目的の人がいると思いますが、そうでなくても楽しくジョギングするためにはそれなりの体形を保つ必要があるので、必要以上の間食は控えようという気持ちになってきます。
ただ、間食を控えるくらいならまだしも極端な食事制限はしない方が良いかと。
ジョギングはかなりのエネルギーを消耗するので、栄養が足りていない状態で走るのはそこそこ危ないような気がするからです。
僕もジョギング中に過去二度ほどいわゆるハンガーノック現象に陥ったことがありますが、あれは辛いものだし回復にも時間が掛かります。ちなみに、ハンガーノック現象とはいわゆるガス欠のことで、息も上がっていない、足が痛いわけでも無い、だけど体がただただ動かないという状態になります。
陸上部の応援
陸上部の部長である美里は、ジョギングで走ることの楽しさを知った藍をいつか陸上部に引き入れようとしているようです。
レースは走るのが得意な人にとってもシンドイものだと前述しましたが、ある程度走るのが楽しくなってきている人にとっては、早く走れることの喜びが辛さを上回るようになってきます。
藍に陸上部の応援をさせることで、今度はそういう種類の楽しさを伝えようとしているのかと思われますが、果たしてあやめの走りを見た藍がどう感じるのかが気になる所ですね。
総括
いかがでしたでしょうか?
読後、思わずジョギングに繰り出したくなるような漫画でした。
ジョギング初心者の藍は、既にジョギングの楽しさに目覚めつつあります。
そして、一度楽しいと思ったら意外に終わりの無い奥深さがあるのがジョギングです。今後、藍がどのようにその深淵に嵌っていくのかに注目です。
また、今巻の最後には陸上部の応援にやってきた藍ですが、そこであやめの走りを見ることになる藍がどう感じるのかが気になりますね。
続刊も楽しみにしています!