『過去のあなたを誘拐しました(1)』未来の自分の犯罪への断罪ってどう思う?
『過去のあなたを誘拐しました』というタイトルに惹かれて何となく購入した作品。
未来の自分が犯す罪の罰が過去の自分に降りかかるという、いわゆる「卵が先か鶏が先か」というジレンマに対して考えさせられる作品になっています。
過去の主人公たちを裁く被害者とは一体何者なのか?
小橋川はなぜああも容易く未来の自分の罪を認めたのか?
主人公の未来の罪とは何なのか?
主人公が親元を離れる理由となった「ある事情」とは何なのか?
それから主人公の姉の役割とは?
などなど、何となく答えらしきものが想像できるものの、本当の正解が気になるようなタイプの謎がたくさん積み上げられていて、そういう部分を考えてみるのが面白い作品だと思いました。
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本作の概要
中学生の月島友孝は、複雑な過去を抱える同居人のミカと静かな日々を送っていた。だが突如、謎の集団に拉致されてしまう。見知らぬ“施設”で目覚めた友孝たちを待っていたのは、凄惨な“断罪”だった──。「未来のあなた」が犯す罪、その罰が「過去のあなた」に降りかかる──!! 戦慄のSFクライムサスペンス、始動!!
※出版社書籍情報より引用
少年時代に罪を犯したと思わしきガラの悪い男が、過去の自分を誘拐され断罪される衝撃的な導入シーンから本作品は始まります。
主人公が来る前に1人死んでいると栗栖川が言っているので、恐らく導入シーンで罰を執行されたのがその1人なのでしょうね。
そして、主人公のゆっぽんこと月島友孝と同居人の社会人である石川ミカは「裁かれるべき犯罪者の過去」として誘拐され、なぞの施設に連れ去られてしまいます。
そしてその施設では、被害者を名乗る謎の組織による理不尽とも思えるような断罪行為が行われていた。
設定も面白いですが、色々と謎があってその辺を考えてみるのも面白い作品です。
本作の見所
過去の主人公たちを裁く被害者とは一体何者なのか?
恐らく文字通りの意味も含まれているのだと思いますが、それだけではないような気がしています。
タイムマシンが開発された未来、何が起こるかわからない危険なものとしてその研究は凍結されたものの、権力者の都合に合わせて使えるように管理・開発が進められていたとのことですが、それを単なる犯罪の被害者が使えるわけがありませんよね?
そもそも、罪を犯す前の過去の犯罪者を裁くという発想も、普通の被害者が抱くようなものなのでしょうか?
過去の犯罪者を裁くことで、犯す罪自体が無くなるようなパラドックスが発生するのであればわからなくもないですが、それであれば罪を犯した後の未来の自分が罪を認めたら助かることの意味もよくわかりません。
つまり、少なくとも犯罪自体を無かったことにするパラドックスを起こすことが目的というわけでは無さそうですね。(今のところ誰も助かっていないので、そもそも助けるつもりが無い可能性もありますが)
それに何か黒幕っぽい人も登場しているので、裁かれなかった人の裁きということ以上の目的も何かあるのかもしれませんね。
小橋川はなぜああも容易く未来の自分の罪を認めたのか?
8人の幼児連続通り魔殺人の容疑者だったが嫌疑不十分で不起訴になった。
それが小橋川の未来の罪なのですが、そのことを小橋川は結構あっさりと受け入れていて、自分に断罪を与えることすらあっさり了承してしまいます。
そのことがちょっと不思議でした。
1巻では描かれていませんが、被害者側も断罪を了承することを問うているので、何かしらの自分の未来の罪を認めさせるための手段を持っているのかもしれませんね。
しかし、過去の自分ですら他人のように思えることがあるくらいなのに、未来の自分なんて完全に他人です。
例え、自分ならこんなことやってしまいそうだなぁという犯罪を、自分が将来起こすということ言われたとしても、僕なら絶対に認められません。
いや、そんなやってしまいそうな犯罪なんてないですけどね?(笑)
主人公の未来の罪とは何なのか?
ちょっと癖の強い部分もある主人公ですが、あまり罪を犯しそうな感じもありません。
それとも主人公は巻き込まれただけで、ミカの巻き添えにあったという感じなのでしょうか?
ミカも悪人ではなさそうですが、精神を病んでいて主人公が痛い目に合わされそうになったらその加害者にドロップキックを食らわせたり、危うい部分はありますからね。
普通の大人の女性のドロップキック。なかなか見られるものではありません。
それとも、主人公にもミカにもそれぞれ将来犯す罪があるのでしょうか?
主人公に罪を犯す理由があるとすれば、親元を離れる理由となった「ある事情」とやらが関係しているのでしょうか?
むかし馴染みとは言え、中学生男子と精神に病んだ女性会社員が同居している状況って、それだけで異常ですからね。
それから主人公の姉の役割とは?
書下ろし漫画には描かれている小学生と思わしきミカと、主人公と同じ目をしたツインテールの女の子。
ミカが「ゆっぽん」と、主人公と同じあだ名で呼んでいることから、主人公の姉であると推察されます。
彼女が本作においてどのような役割を担っているのかは今のところ謎ですが、恐らく重要な役割を担っているものと推察します。
主人公が親元を離れる理由となった「ある事情」とも関係があるかもしれませんね。
総括
いかがでしたでしょうか?
ちょっと怖い部分もありますが、色々と謎が積みあがってて良い感じですね。
今後はその謎が徐々に見えてくるのが見所になってくる感じでしょうか?
続刊も楽しみです!