『冠さんの時計工房(2)』時計の世界が楽しい漫画の感想(ネタバレ注意)
好きなものを仕事にすることに否定的な意見が何故か多いことに対して一定の納得感はありますが、『冠さんの時計工房』を読んでいると全くそんなことはないのだという気持ちになってしまいます。
好きなことだからこそ仕事にはしたくない。
そんな気持ちも分からなくはないですが、やっぱり仕事をしている時に輝いて見えるのは好きな仕事をしている人である気がしますよね。
だから、好きなことを仕事にしたくないというのは、好きな仕事でもなんでもない成り行きで従事することになった仕事に日々勤しむ僕のような大多数の人間によるヒガミのようなものなのかもしれません。
本作品の主人公である冠綾子は相変わらず働く姿もプライベートな姿もキラキラと輝いて見える女性で、魅力的に見える以上に羨ましいとすら感じてしまいます。
ほのぼの日常系の漫画ではありますが、読んでいて日頃のストレスが緩和されるような気持ちになれる良作です。
また、時計に関する豆知識が手に入るのも面白いところです。
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本作の概要
防水機能のある時計、思い出のある時計、時間に正確な人と鉄道時計、今巻も様々な時計とそれに関わる冠綾子が描かれています。
また、初めての自分の時計を選ぶ冠綾子の過去エピソードも、ちょっと子供っぽいところの残った冠綾子が垣間見えて面白いです。
本作の見所
防水機能について
なんとなくダイバーが使うような時計の防水機能と普通の防水機能は違うのだろうと漠然と思ったりはしていましたが、子供と川遊びに行くというお客さんに冠綾子がとても分かりやすく時計の防水機能について説明していました。
手を洗った時に水が掛かる程度のことを想定した日常生活防水。
水遊びや水上スポーツに水仕事のことを想定した日常生活強化防水。
空気ボンベを使用した潜水に耐えられる空気潜水用防水。
更に深い潜水である飽和潜水に耐えられる飽和潜水用防水。
・・と、一口に防水と言っても色々種類があるようです。個人的なイメージですが、用途など考えずに必要以上の防水機能に得意になっているような人も結構いそうな気がします。また、防水だからと想定された以上の用途に使ってしまう人もいそうですよね。
時計における一般的な機能のわりには詳しく知らなさそうな人が多い防水ですが、楽しみながら勉強になるところが良いと思います。
また、潜水機能のあるダイバーズウォッチのように特別な機能のある時計には、ずっと使っていても用途が不明な機能があったりするものですが、ダイバーズウォッチの周りのギザギザが何なのかについても説明されていて、まあ潜水時間を図るための機能なのですが安全のために反時計回りにしか回転しないようになっていたり、細やかな工夫がなされているのも興味深いです。
そういえば、1巻でも時計の中に水滴が付いてしまうエピソードがありましたが、日常的に使用する時計と防水というのは思っている以上に関連深いテーマなのかもしれませんね。
あと、本エピソードでは水着姿で警戒に泳いだり、水着姿を凝視されて恥ずかしがるという普段とは違った冠綾子が見られるのも見所となります。(笑)
時計の思い出
老夫婦のお客さんから預かった時計が入っている鞄は何なのか?
そう問われた時の冠綾子の「二人の思い出です」という回答が素敵ですよね。
腕時計や懐中時計のように日常的に身に付ける時計は、その一つ一つが長く使うもので思い出深くもなってくるものなので、言い得て妙な回答だと思います。
僕も今までの人生で4つの腕時計と1つの懐中時計を使っていますが、考えてみればそれを買った時のこととか、使わなくなった時計の処分を躊躇ったことを覚えています。確かに思い出深いものだったと。
鉄道時計
現代における懐中時計といえば、便利さ以上に何だかオシャレなイメージが強いのですけど、作中で言及されている通り昔の鉄道時計ってあまりオシャレな感じでもありませんよね。僕の祖父も鉄道関係者で所持品の中に懐中時計があった記憶があるのですが、作中で紹介されているような大きな文字盤の懐中時計だった記憶があります。
そして、なんでそんなデザインなのかとか、懐中時計という割にはサイズが大きいだとか、その理由を考えたことなんてありませんでしたが、本作中でその理由や時間を重視するに至った経緯・歴史が語られていてちょっぴり勉強になったような気がしました。
総括
いかがでしたでしょうか?
相変わらず素敵な漫画ですよね。
鉄道時計の話など、1巻よりも時計そのものの知識が語られることが多かったような印象がありますが、それを語らせるためのエピソードの完成度がとても高いように感じられました。
時計の知識の話も面白いので、こういうエピソードが今後増えたりするともっと面白くなりそうですよね。
次巻も楽しみな漫画作品です。