『幽遊白書(5)』短めだけど濃密な名作の感想(ネタバレ注意)
いよいよ暗黒武術会が開幕した『幽遊白書』の5巻目となります。
こういったバトル漫画におけるトーナメントのエピソードでは、最初は順当にお祭り騒ぎの雰囲気で始まったところから徐々に不穏な事件に繋がっていくような流れが多い気がしますが、暗黒武術会の場合はトーナメントの形式は最後まで保たれていているものの、各戦闘の雰囲気も様々だったりしてメリハリのある感じになっています。
読んでいて気持ちが良いと感じさせられる対戦相手との戦闘もあれば、胸糞悪くなってしまうような酷い相手との戦闘もあります。
そして、そんな違いが同じチームのメンバーの中ですら発生しているのが面白いところで、つまりは相当な人数が存在する対戦相手の一人一人が個性的で良くも悪くも魅力的なキャラクターとして描かれています。
トーナメントを勝ち進むにつれ、少しずつ何かしらのトラブルが発生していくのも読んでいて飽きさせませんね。
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本作の概要
VS六遊怪Tの結果は浦飯幽助と酎との試合に委ねられ、結果は浦飯幽助の辛勝となりました。1回戦から波乱が起きた浦飯Tでしたが、相手チームや大会運営の陰謀で2回戦、3回戦と選手を欠いた状態で挑んでいくことになります。
また、今巻には蔵馬と飛影の出会いを描いた短編も収録されています。
本作の見所
DrイチガキT
暗黒武術会は招待された浦飯Tは例外として基本的に妖怪が出場する大会なのだと思っていましたが、考えてみれば例外が許されている以上他にも人間が出場しているチームが存在してもおかしくないですよね。
そういうわけでDrイチガキTは、2チーム目の登場にしていきなり人間の霊能力者が登場します。
『幽遊白書』におけるバトルといえば相手はほとんど妖怪だというイメージが強いですが、後に登場する仙水忍というラスボス級に乱童編でのトーナメント、それにこのDrイチガキTとの対戦と意外に霊能力者とのバトルも多いような気がします。
そして、1回戦の六遊怪Tとの対戦では比較的純粋な武術会らしい武術会の対戦というイメージだったのに対して、2回戦のDrイチガキTの陰謀渦巻く感じが興味深いですね。
リーダーのDrイチガキ自身はリーダーかつブレインというような役どころで、蔵馬と飛影が出場できないように刺客を差し向けたり、そもそもチームメンバの霊能力者3人も望まない戦いを強いられていたり、分かりやすい悪党という感じです。
しかし、頭は回るようで状況の変化に応じた勝率をシミュレーションしているのですが、徐々の浦飯Tの勝率が高まっていくことに焦りを感じていく様子が面白いです。
また、この対戦の中で覆面選手の覆面が外れる点も興味深いところ。
幻海かと思われた覆面選手の中身は若い女性で、浦飯や桑原が苦戦していた霊能力者3人にアッサリとトドメを刺す実力も明らかになります。
この覆面選手の正体についてはもう少し後の続巻で明らかになるので、知らない人はその辺にも注目ですね。
魔性使いT
DrイチガキTとの試合では対戦相手の陰謀によって蔵馬と飛影を欠いた状態で苦戦を強いられることになりましたが、今度は大会運営側の陰謀で覆面選手と飛影を欠いた状態で戦うことになります。
飛影は連続での欠場ですが、初戦のダメージが残っているので作者的にも試合させて活躍させ辛かったのではないかとメタいことも考えてしまいます。(笑)
そんなわけで魔性使いTとの試合では三連戦した蔵馬の活躍が目立ちました。
メインキャラの中ではバトルシーンの少ない印象の蔵馬の珍しい活躍シーンとなります。
漫画的な演出もあるのだと思いますが、蔵馬の戦う相手の中にはトリッキーだったり、相手を侮らない冷静さがあったり、理知的なところのある相手が多いような気がしますが、三戦目で既に戦闘不能状態の蔵馬をボコった爆拳のような脳筋タイプの相手もたまにいます。
しかし、どちらの対戦相手の場合でも蔵馬の良さを引き立てているような気がして、そのあたりが興味深いところですよね。
総括
いかがでしたでしょうか?
暗黒武術会編の良いところは、相当数いるにも関わらずとにかく対戦相手が個性的で魅力的な所だと思います。
この独特なキャラクターの個性は作者の冨樫義博先生の特徴のひとつで、後の作品となる『HUNTER×HUNTER』ではより一層磨きが掛かっていますが、そんな特徴が顕著に表れ始めたエピソードなのではないかとも思います。
次にどんなキャラクターが登場するのか、そしてどんな戦いを見せるのか、誰もが個性的でどんな戦闘シーンだったのかも記憶に残る印象的なものだったので、最初は常に次の展開にワクワクしていた覚えがあります。
というわけで5巻は暗黒武術会の前半戦という感じでしたが、中盤以降となる6巻以降も楽しみですね!