『恋愛3次元デビュー』赤裸々すぎる婚活コミックエッセイが超面白い(ネタバレ含む感想)
漫画、ラノベ、映画など、本ブログでは今まで様々なフィクション作品のレビュー記事を書いてきましたが、世の中面白いのはフィクション作品だけではありません。
いわゆるコミックエッセイに類されるノンフィクション作品も、時にはフィクション作品とは違った 味わいがあって僕は好きです。
性質上どうしても恋愛や結婚に出産といった女性にとっての一大イベントがネタになりがちなのが、いろんな作品を読んでみたい僕のような乱読派には本来物足りないと感じてしまいそうな要素ではあるものの、生の体験が元になっているだけあって十人十色の面白さがあるのがコミックエッセイの魅力だと思います。
とはいえ、最近はこれといって「面白い!」と思わされる作品は少なくなった印象があります。もちろん僕個人の主観でしかなく、人によっては面白い作品もたくさんあるのだとは思いますけどね。
そして、それは何故なのだろうと思って僕が最初に「コミックエッセイって意外と面白いなぁ」と感じた作品を久しぶりに改めて読み直してみました。
それは漫画家のカザマアヤミ先生によるコミックエッセイです。
恋愛経験ゼロからの婚活を描いた『恋愛3次元デビュー』。その後の新婚生活を描いた『嫁いでもオタクです。』。そして、不妊治療から始まる妊娠と出産を描いた『出産の仕方がわからない!』の三冊からなるコミックエッセイなのですが、これが下手なフィクション作品よりずっと面白いんですよね。
実は、『恋愛3次元デビュー』を読む前に僕はそれほどコミックエッセイというジャンルに興味はありませんでした。正直こういう作品は女性が読むものだと思い込んでいましたし、面白くするために作られたフィクション作品を超えた面白さは期待できないと思っていたからです。
しかし、発売当時に『恋愛3次元デビュー』がかなり話題になっていたことと、作者が紺野あずれ先生の漫画のあとがきに登場していて、何だか面白そうな人だと感じたことを覚えていたこともあって興味を持ったわけです。
そしてそれが想像していた以上に面白くて、『恋愛3次元デビュー』を読んだ後はしばらくいろんなコミックエッセイを読んでみた覚えがあります。当然、『恋愛3次元デビュー』に続く『嫁いでもオタクです。』『出産の仕方がわからない!』も読んでみました。
『出産の仕方がわからない!』あたりは、あからさまに大人の女性をターゲットにしている風のタイトルなので昔の僕なら間違いなく読まなかった本ですが、それでも発売日に即買いしたのを覚えています。
・・とまあ、『恋愛3次元デビュー』が僕にコミックエッセイって面白いんだよってことを教えてくれた作品になったわけなのですけど、前述したとおり最近はあまり面白いと感じられないのです。
しかし、カザマアヤミ先生のコミックエッセイ三冊を読み直してその答えが分かったような気がします。
なんというか、カザマアヤミ先生のコミックエッセイはハッキリ言って無難じゃないんですよね。日記でもここまで書くかってくらいに赤裸々なんです。
それに比べると最近どうも微妙だと感じているようなコミックエッセイは、どこか無難に収めている印象が強い気がします。いや、コミックエッセイなんてものにしている時点で赤裸々なものではあるのですけど、カザマアヤミ先生ほどさらけ出している作者さんは少ないと思われます。
そこをもっと詳しく書いたら面白いのにって部分は、恐らく書き手にとってはかなり恥ずかしい部分なのだと思います。そして、そこを濁してしまうから面白さが半減してしまっているのが最近コミックエッセイに対して微妙に感じている違和感の正体なのだと思われます。
というわけで、もう5年ほど前のコミックエッセイですが改めて『恋愛3次元デビュー』って面白いと感じたのでこうしてレビュー記事を書いてみようと思いました。
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『恋愛3次元デビュー』の見所
小学生の頃には男子と関わっただけで恋愛を妄想する体質になってしまい、中高大と女子校で恋愛初心者のままアラサーになってしまったカザマアヤミ先生が結婚するまでのアレコレが描かれたコミックエッセイ作品となります。
それだけなら普通の婚活が描かれているコミックエッセイという感じですが、そこに至るまでのカザマアヤミ先生の言動が、こう言っては失礼かもしれませんけどあまりにも面白く、なかなかに変態な漫画を描かれているはずの紺野あずれ先生が紳士的な常識人に見えてしまい、作品からはかなり冷静っぽい印象を受けるものの場合によっては振り回されたりもしています。
「さすがにないわ~」って思ったりもするエピソードも多いのですけど、カザマアヤミ先生の不慣れな必死さと紺野あずれ先生の冷静さが噛み合って相性が良さそうなのが素敵だとも感じました。
しかし、出会いを求めてのアプローチ、紺野あずれ先生を好きになるキッカケ、スカイプで告白したのに顔を覚えていなかったり、男性に耐性が無かった代わりに知識が偏っていて痴女っぽい言動になってしまったり、あまりに面白いんですけどよくネタにしたなって感じです。
特に凄いと思ったのは、付き合っている相手に直接自分に女性的な魅力があるのか相談したり、紺野あずれ先生は隠していたけどあからさまにプロポーズがあるだろうって誰でも予感しそうなイベントの三日前にそれを話題にしてしまい、しかもプロポーズされた後に自分がプレッシャーをかけるようなことを言ったからと不安になってしまうというエピソード。
紺野あずれ先生の用意していたプロポーズはなかなか格好良いんですけど、それを受ける側が少々残念だという具合ですね。
ちなみに、このコミックエッセイで面白いのは相手の紺野あずれ先生も結構有名な漫画家ってこともあり、各話ごとにそのエピソードに対する紺野あずれ先生のコメントがイラスト付きで記されていること。
同じ出来事でも視点が違えば見え方も違うものですが、そういう視点があるのもこのコミックエッセイの良さだと思います。
『嫁いでもオタクです。』の見所
このコミックエッセイは『恋愛3次元デビュー』の発売後、「カザマさんのことだからまたなんかやらかしてるでしょう?」という担当編集者さんの一言から始まったようです。
確かに『恋愛3次元デビュー』というコミックエッセイは、恋愛初心者のアラサー作者の恋活・婚活が描かれた作品ですが、そんな主題以上に作者のカザマアヤミ先生がそんな活動の中でやらかしてしまった言動が楽しい作品でした。
結婚はゴールとしたコミックエッセイは多いですけど、結婚はゴールではなくスタートであるはずですし、面白いコミックエッセイであれば結婚したその後も読んでみたいと思うものですしね。
そんなカザマアヤミ先生の言動の特徴として、『恋愛3次元デビュー』でもそういう所が描かれていましたが、紺野あずれ先生に関することを本人に相談したり聞いたりしてしまうことがあるようで、そういう部分が『嫁いでもオタクです。』でも健在だったのが面白かったです。
ただ、このコミックエッセイで描かれているカザマアヤミ先生の言動は実に面白いのですけど、『恋愛3次元デビュー』と『嫁いでもオタクです。』では少し違った印象を受けるところがあります。
『恋愛3次元デビュー』ではどちらかといえばカザマアヤミ先生の必死なところ、必死で頑張っている結果としてやらかしてしまう姿が描かれている印象が強かったのに対して、『嫁いでもオタクです。』のカザマアヤミ先生にはある意味余裕がある。(笑)
そりゃあ「一人で寂しい!」ってなっている時より相手を見つけて結婚した後の方が余裕は出るものなので当然ですよね。
そんな風に余裕があって楽しそうなんですけど、そんな中でも何かしらやらかしてしまっている姿がとても楽しいコミックエッセイだと思います。
ちなみに、このコミックエッセイのシリーズを読んでいるとカザマアヤミ先生が相当変わった人物に見えてしまうと思いますが、個人的には実のところそんなことはなく、ちょっと不慣れなだけの普通の人という印象を持っています。
どんな人にでもあるはずのちょっと変わった部分をあけっぴろにコミックエッセイに描いてしまっているという所を除いて。(笑)
だからこそこのコミックエッセイは、ちょっと変わった人物が描かれているように見えても共感できるところもちゃんとあって面白いのだと思います。
『出産の仕方がわからない!』の見所
個人的には、これこそ単品なら間違いなく興味を持たなかった作品の筆頭です。やっぱりこういうのは女性の方が興味を持ちやすいのは間違いないでしょう。
『出産の仕方がわからない!』というタイトルからにじみ出る混乱の感情に本当の意味で共感できるのは女性だけでしょうからね。
僕も『恋愛3次元デビュー』『嫁いでもオタクです。』が面白かったからこそ興味を持ちましたが、当然ながらタイトルに対する共感はありませんでした。
しかし、不妊治療や妊娠に出産といった女性の困惑や苦労が「ここまで描いちゃうの?」ってくらい赤裸々に描かれていて、それは男性ならなかなか知ることのできない体験なのではないかと思います。
それが前2作と同じように面白おかしく描かれているものだから男性でも共感しやすい作品になっていて、だからこそ出産を控えた奥さんがいるような人にはオススメの作品と言えるかもしれません。
作中で紺野あずれ先生も言及していますが、出産に関する男女の苦労の差は比較するのもおこがましいほどのものであるはず。しかし一方でそれはあまりにも普通で当然のこととどこかで思ってしまっている人も多いのではないかと思います。
そして、確かに普通で当然のことではあっても、だからといって女性がとても大変だってことに違いはないのだと『出産の仕方がわからない!』という作品に改めて気付かされます。
相変わらずコメディ色は強いものの、前2作に比べると真剣度の高い作品という印象ですが、ある意味では一番勉強になる作品でもあるかもしれませんね。
総括
いかがでしたでしょうか?
もちろん読み物として面白くするための工夫はなされているのだと思いますが、カザマアヤミ先生にしても紺野あずれ先生にしても、下手なフィクション作品のキャラクターよりはるかに個性的で、そんな個性的な部分を赤裸々に綴っているのが本当に面白い作品だと思います。
まあ、偏見かもしれませんけど漫画家先生ってその職業自体が個性的なものですから、そのキャラクター性も個性的になるのかもしれません。(笑)
とはいえ、どんなに個性的で言動が変わっている人であっても持っている悩みは同じというか、そういう所が伝わってきました。
面白いと感じるコミックエッセイの特徴として、その登場人物に大きく興味を持たされるという点があると思います。
カザマアヤミ先生って、紺野あずれ先生って、いったいどんな人たちなんだろう?
そんな風に思わされた時点でコミックエッセイとしては成功しているってことなんでしょうね。
普通に生きていて人が他人に興味を示すことって、実はとても少ないのではないかと思います。なぜなら、大抵の人は自分自身の深い部分は隠しているから。
しかし、一方でそういう深い部分を見せてくれる人にこそ好感が持てるっていうのも一つの真理だと思います。
そういう意味では、相当深いところまでさらけ出しているからこそ『恋愛3次元デビュー』『嫁いでもオタクです。』『出産の仕方がわからない!』の三冊は面白いのかもしれませんね。
個人的にカザマアヤミ先生のコミックエッセイは本当に面白いと思うので、できればまた新しいシリーズを読んでみたいと思ってしまいます。
あるとしたら、今度は子育てとかがテーマになる感じですかね?
自宅がエロ本だらけの家庭の子育て、興味があります。