『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?(9)』トナカイはちょっと美味しそうかも(ネタバレ含む感想)
飯テロにならないグルメ漫画である『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』の9巻目。
9巻には目立って「コレは凄い」と思わされるほどの雑食は登場しませんが・・というかそう感じてしまうこと自体が麻痺しているのかもしれませんが、この一冊の目玉というのはいなかった印象です。
しかし、その分9巻では登場する雑食の数が多い。
雑食プレゼンバトルのエピソードでは、人によって興味をそそられる雑食に違いがありそうで面白そうですよね。
また、季節イベントも雑食が絡むだけでなかなか恐ろしい感じになっていて面白いです。
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本作の概要
見た目は普通の食材ですがただ普通よりデカかったり、お馴染みの昆虫食にはついに昆虫の王者が登場し、増えてきた雑食仲間たちがプレゼンするちょっぴり毒のある雑食の数々。
相変わらず新たな世界へと読者を誘おうとする圧が凄いものの、全く誘われる気にはならず、しかし興味だけは惹かれる面白い漫画です。
本作の見所
巨大シジミ
お酒を飲んだ翌朝のアルコールの残った体に染みるシジミ汁ですが、桐谷さんが今回取り出してきたのはシジミという馴染みの深い食材。
しかし、桐谷さんが意気揚々と取り出してくるシジミが普通のシジミであるわけがありません。
シジミといえば島根県の宍道湖のシジミが有名ですが、桐谷さんのテンションを上げるシジミは沖縄のマングローブ産の巨大シジミでした。
貝殻の部分を合わせた大きさとはいえ通常のシジミの200倍近い重さがあり、まさに圧巻なシジミです。通常よりオーバーサイズな同名の食材は無くはないですが、それにしたって大きいですよね。(笑)
それにしても、大きな野菜とかならまだ何とか生理的に受け付けそうな気もするものの、グロテスクなところもあるけど小さいからそこまで気にならないシジミが巨大化してしまったら・・
正直食指は動かないですね。(笑)
とはいえ、榊先生の反応からはシジミ感は無いもののホタテっぽくて美味しいらしいです。まあ、貝殻の大きさに比して身は驚くほどの大きさというわけでもありませんでしたし、本作品に登場する雑食の中ではおとなし目の食材だったのではないかと思います。
スイカと言えば・・
小学生。昆虫採集。カブトムシ。そしてスイカ。
いきなり何を言っているのかといえば、何故かカブトムシを捕まえた時にその餌としてスイカが定番ですよねということなのですけど、桐谷さんはこれをカブトムシに付け合わされたスイカという料理と捉えてしまっています。
本作品では何度も昆虫食が登場していますが、馴染みのない昆虫であればまだ「あ~そういう食材もあるのか」と思えるものの、カブトムシのような馴染みのある昆虫だと拒否感が倍増しになりますよね。
カブトムシの場合はちょっとゴキブリっぽいのもキツイですし、そもそも甲羅っぽい羽根の部分の食材感の無さが強い。桐谷さん曰くエビの尻尾みたいらしいですが、その例えを聞いてもやっぱり美味しそうには聞こえませんね。
桐谷さんはエビの尻尾っぽい味にテンションが上がっていますが。(笑)
雑食プレゼンバトル
たくさんのちょっぴり毒のある食材が登場します。
タピオカドリンクかと思えば神経毒を持つカエルの卵ドリンクだったり、普通に美味しい野草の天ぷらかと思えばあえて毒草が混ぜられていたり、おどろおどろしい雰囲気のコウモリには感染症や狂犬病のリスクがあったり、何だか怖いですよね。
僕はタピオカドリンクは好きですけど、飲めなくなるからやめろって思いました。(笑)
まあ、普通に食べている食材の中にも冷静に考えたら、最初に食べようと思った人すげ~なって思えるようなものもありますし、生まれた環境によっては胃が受け付けないような食材もあったりするものですから、こういった雑食もいざ食べてみたら美味しかったりするのかとも思ってしまいます。
まあ、僕にはその度胸が足りませんが。(笑)
侵略!! 外来種鍋
料理の中には一種のコンセプトがあるようなものもありますよね。季節を感じられるような料理なんかはその代表格ですし、親子丼のように文字通り親子の食材を使った料理もコンセプト料理であると言えるでしょう。鶏卵と鶏肉で親子ってね。
そして、雑食大好き桐谷さんの作るコンセプト料理は一味違います。
アライグマに雑草、ムラサキイガイにブラックバス。名前だけ聞くとどういうコンセプトなのか分かりづらいですが、どれも外来種という共通点があるそうですね。そして、それらをぶち込んだ外来種鍋というのが桐谷さんたちの作った鍋料理のコンセプト。
昆虫鍋とかにならなかっただけまだ食べられそうな気もしますが、発想が一味違っていて面白いです。(笑)
クリスマスと言えば・・
クリスマスと言えばサンタクロース。
サンタクロースと言えばソリを引くトナカイ。
そして桐谷さんが今回料理するのはトナカイです。ジビエ系の食材は雑食と言っても普通に美味しそうというか、食べて見たくなるものが多いような気がしますが、トナカイもまた普通に食べてみたいとは思います。
しかし、そういう食材では主に調理過程をおどろおどろしい感じにするのが本作品の特徴ですよね。トナカイもまたサンタクロースの相棒としての可愛らしいイメージを一気に壊しにかかっていて、それがまた『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』らしくて良かったです。
お正月と言えば・・
外来種鍋もコンセプト料理でしたが、このエピソードで登場する花札おせちもそんな感じですよね。
花札のこいこいで勝利したらおせちを食べられるというルールのゲームが開始されるのですが、勝利した時の手札にあやかった料理を食べられるということで、手札によってはかなり雑食感のある料理になるのが面白いです。
花札のことはほぼ知らない僕でも知っている有名な猪鹿蝶という役なんて前2つのジビエは良いですけど最後のインパクトが大きすぎますよね。同じ昆虫食でも、蝶々の羽根の食材感の無さはずば抜けている気がします。
総括
いかがでしたでしょうか?
飯テロにはならないグルメ漫画。古今東西の雑食をとことん楽しむ『桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?』も次でいよいよ巻数が二桁に突入します。
食欲をそそられて「飯テロじゃん!」って文句の一つでも言ってしまいたくなるようなところがグルメ漫画の魅力の一つであることは間違いありませんが、その要素を自ら捨てているような作品であるにもかかわらずここまで続いているのが驚きですね。
まあ、食欲がそそられないかわりに、それ以上の好奇心がそそられる作品になっているからこそなのではないかと思います。
次巻予告を見てもピラニア茶漬けなるこれまた好奇心をそそられる食材が出てきそうですし、まだまだ楽しませてくれそうな漫画です。