『金色のガッシュ!!(1)』平成最高の激熱バディもの漫画の感想(ネタバレ注意)
バトル漫画といえば、やっぱり少年週刊ジャンプのイメージが強いですが、その他の漫画雑誌にも名作バトル漫画は数多く存在します。
『金色のガッシュ!!』もまさにそんなバトル漫画のひとつです。
とりわけバディもの作品の中では平成最高の漫画作品だったのではないかと思うんですよね。
高嶺清麿とガッシュ・ベルのコンビに勝るバディものバトル漫画の主人公なんて、将来的にもそうそう登場しないのではないかと思うくらいです。
では、『金色のガッシュ!!』という作品のどういうところが名作なのか?
そのひとつには、本記事の表題にもしているとおり熱さがあると思います。
最初は、天才的な頭脳を持ちながら周囲には馴染めずにいた高嶺清麿。それに弱い魔物と認定されていたガッシュ。そんな2人がそれでも一本筋の通った信念を持って成長していく様には胸が熱くなります。
それに熱くなるのは胸だけではありません。
本を燃やされたら魔界に送還されるという設定により、「死」という概念を排しながらも「死」に近い別れが数多く演出されていて、中には目頭が熱くなるような別れも描かれています。
コルルペアの別れなど、その最たるものですよね。
実は、本レビューを記載するにあたり『金色のガッシュ!!』を読み直した際、コルルペアのエピソードでは普通に泣いてしまいました。
そんな感じで色々な意味での熱さが『金色のガッシュ!!』という作品の最大の魅力になっているのだと思います。
また、この手のバトル漫画って格好良さが重点的に描かれている傾向があると思うのですが、『金色のガッシュ!!』の場合はそれだけではないんですよね。
子供や女性でも可愛いと親しみやすいキャラクターデザインも魅力的です。
主人公の一人であるガッシュもまさにそういう可愛さを持っているキャラクターの一人ですが、そんなキャラクターが数多く登場するのも他のバトル系漫画にはあまり見られない特徴なんですよね。
ちょっとロボットっぽい子供ウケの良さそうなキャラクターもいたり、普通に格好良いキャラクターも登場する。
なんというか裾野が広い感じがしますね。
一方でそんな可愛いと思えるキャラクターたちの内面は、まさに激熱のバトル漫画のキャラクターらしいものというギャップがたまらない魅力なんです。
また、他のバトル漫画に比べたらギャグの要素も濃厚で、ギャグシーンだけを見ると完全にギャグ漫画になっています。(笑)
それなのに作品のバランスが崩れているわけではない。
最初から最後まで抜群のバランス感覚を誇っているのも魅力的ですよね。
前書きが長くなりましたが、そんな『金色のガッシュ!!』の全巻レビューを始めていきたいと思います!
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本作の概要
高嶺清麿はMIT首席の卒業論文を暇つぶし程度に理解してしまうほどの天才中学生ですが、その優れた能力を原因に学校には馴染めずにいました。
そんな清麿の元に、父親から清麿を鍛えなおす名目で派遣されてきた記憶喪失の子供。
子供らしからぬ独特の喋り方をする子供の名前はガッシュ・ベル。
天才である清麿にも読めない謎の赤い本を持ち、口から電撃を出し、頭には小さな角も生えている正体不明のガッシュでしたが、徐々に魔物の王様を巡る戦いの全容が明らかになっていきます。
1巻では高嶺清麿とガッシュ・ベルという最高のバディが誕生し、「やさしい王様」という『金色のガッシュ!!』という作品の根幹となるキーワードが登場します。
本作の見所
天才少年と電撃を出す子供
『金色のガッシュ!!』の主人公のひとり。高嶺清麿はその天才性から学校に馴染めず不登校気味になっていました。
考えてみれば、『金色のガッシュ!!』の時代にこういう頭脳系のバトル漫画の主人公って珍しかったような気がしますが、そういうところも『金色のガッシュ!!』がウケた要因だったのかもしれませんね。
そして、もうひとりの主人公のガッシュ・ベル。
非日常的な巻き込み系のキャラクターですが、記憶喪失だったこともあって、清麿と一緒に魔物の王様を巡る戦いに巻き込まれていく感じになっているのが興味深い所ですね。
普通、こういう非日常系の巻き込み系キャラクターは、巻き込まれる側に説明する役割を担っていることが多いと思うのですが、『金色のガッシュ!!』の場合は謎を提示するだけして答えは知らないというところに導入の面白さがあります。
そして、ガッシュというキャラクターは良くも悪くも素直で真摯なんです。
だからこそ清麿の父親に頼まれた「清麿を鍛えなおす」という目的のために、学校だけではなくガッシュも拒絶しようとする清麿にただただぶつかっていくことができた。
そして、その結果が・・
(「金色のガッシュ!!」1話より)
個人的には平成の漫画作品の中でも最高峰だと思うバディの誕生に繋がったわけですね。
電撃を口から出す能力や赤い本などの謎を膨らませつつ、魔物の王様を巡る戦いのことすら知らない状態で清麿・ガッシュというコンビができあがった感じになっているのが熱いところですね。
魔物の王様を巡る戦いの中で名コンビぶりを発揮していくことになる2人ですが、魔物の王様を巡る戦いなど関係なくても良いコンビになっていたのではないかというところを想像させますね。
悪用される力
『金色のガッシュ!!』に限らず、突然大きな力を手にするパターンのフィクション作品に触れた後、もしも自分がこんな力を手に入れたらと想像したことの一度や二度は誰にでもあるのではないでしょうか?
そして、そんな想像の中には悪い想像も大なり小なり含まれるのではないかと思います。
積極的に悪用する感じではなくても、ムカつく奴を酷い目に遭わせてやれとか、誤解を恐れずに言えばその程度のことなら僕も考えてしまったことはあるかもしれません。
『金色のガッシュ!!』に登場するキャラクターは終盤になるほど敵ではあっても何か信念めいたものを持っているキャラクターが増えてきますが、序盤はそういう大きな力に溺れてしまっているようなキャラクターが多かったりします。
「こいつは、オレの夢を叶えてくれる道具なんだぜ!!」
思い通りにいかない世の中に復讐し、私利私欲を肥やす者。
「チッ・・ダメじゃねーか・・。みんな、しっかり逃げてくんねーと・・。オレたちのトレーニングになちゃしねえ」
面白がって周囲の人間を犠牲にトレーニングする者。
そんな魔物と人間のペアが、清麿・ガッシュのコンビが最初に相手をする敵となります。
面白いのはそんな敵の相手をしたからこそ、清麿とガッシュの正義の部分というか、一本芯の通った部分が浮き彫りになってきているというところでしょうか?
魔物の王様
『金色のガッシュ!!』に登場する魔物と人間のペアは、前述したような悪人ばかりではありません。
清麿とガッシュとは敵対関係にあるので一見すると悪に見えることはあっても、実はそれぞれの信念を持っているだけで悪ではないようなキャラクターもいます。
シェリーとブラゴのペアなんてまさにそんな感じですよね。
初登場時のブラゴの悪役っぷりはなかなか半端ではありませんが、『金色のガッシュ!!』を最後まで読んだ人ならブラゴもまた魔物の王の風格を持つキャラクターなのだということが分かると思います。
そして、ガッシュが記憶喪失だったことで断片的に少しずつしか情報を得られなかった清麿に、魔物の王様を巡る戦いについて説明したのがシェリーとなります。
「そう・・この魔物の子供達は、この人間界で最後の一人になるまで戦い・・互いの本を燃やしあう・・」
いわゆるバトルロイヤルですね。
そして、シェリーはガッシュの赤い本を渡すように清麿を脅します。
現時点では圧倒的に力量差のある相手に、しかし赤い本を渡すことはガッシュが消えることを意味するので屈しない清麿。
現時点では語られていないもののシェリーにもまた譲れない戦う理由があるので、そんな清麿が諦めるまで攻撃の手をゆるめません。
「いいではないか!? 「人より優れている」で!!! 化け物だけではつらすぎるではないか!!? 私は・・私は化け物なりに前を向こうとしたのではないか!!!」
記憶喪失のガッシュは恐らく自分のことを人間だと思っていたはずです。
しかし、自分は口から電撃が出る化け物だと知って、人知れず苦しんでいました。
そんなガッシュの苦悩を知ったからこそ、清麿はシェリーに対して引くことができなかったのかもしれませんね。
(「金色のガッシュ!!」10話より)
『金色のガッシュ!!』は魔物と人間のペア同士の戦いが描かれた漫画ですが、このガッシュペアとブラゴペアの初対峙は、攻撃しているのはブラゴなんですけど清麿とシェリーの意地の張り合いというか、人間同士の戦いになっている所が面白いですね。
人間の身でありながらガッシュを想ってブラゴという強キャラの攻撃に耐え続ける清麿には胸が熱くなりますね。
やさしい王様
『金色のガッシュ!!』の16話から18話。
この3話が清麿・ガッシュペアの目標が定まった、ある意味では『金色のガッシュ!!』の始まりとも言えるエピソードだと思います。
相手が魔物だろうが人間だろうが傷つけてしまうことを忌避する魔物であるコルルは、コルルを妹のように可愛がるしおりを姉のように慕っていました。
しおり・コルルのペアは、その性格的に積極的に魔物の王様を巡る戦いには参加していくことはなさそうな様子でしたが、どうやらコルルのように戦う意思の弱い子供には別の人格が植え付けられ、強制的に戦闘させられるようになってしまっているようです。
それでも本の力を使わなければ問題無いようですが、しおりはコルルのピンチに本の力を使ってしまいます。
その結果、清麿・ガッシュペアとの戦闘になってしまうのですが、涙を流しながら戦いたくないのに戦うしおり・コルルペアを見て、ガッシュは攻撃せずに耐え忍びます。
結果、コルルは元に戻るのですが・・
「ガッシュ! 燃やして! この本を燃やすの!!」
自分の意志に反して戦い、その爪痕を目撃したコルル。しおりにまで怪我をさせてしまったコルルは、自ら魔物の王様を巡る戦いからのドロップアプトを宣言します。
しかし、それはコルルが消えてしまうこと。つまりは別れを意味するのですが、戦いたくない者にとって無理やり戦わされ、挙句の果てに大事な人を傷つける結果になるのは耐え難かったのかもしれませんね。
(「金色のガッシュ!!」18話より)
ガッシュは何とか思いとどまらせようとしますが、清麿が哀しみと怒りの混じったような涙を浮かべながら泥をかぶることになります。
一見すると清麿は、ガッシュやしおりといったコルルが消えることを拒むキャラクターの言葉を無視して勝手に本を燃やしたような形になるのですが、ガッシュやしおりにコルルが消える決断をさせなかったところに清麿の優しさが見え隠れしていますね。
(「金色のガッシュ!!」18話より)
そして、別れの間際にコルルの言った「やさしい王様がいてくれたら・・」というセリフこそが、清麿・ガッシュペアの魔物の王様を巡る戦いにおけるモチベーション、そして目的になっていきます。
やさしい王様という何ともシンプルなキーワードが、『金色のガッシュ!!』という作品を語る上で絶対に外せない重要な言葉だというのが興味深いですね。
今後、やさしい王様というキーワードは何度も登場することになるのですが、その度にコルルのことが思い出されるということもあって、個人的にこの18話こそが『金色のガッシュ!!』の中でもトップクラスに印象的に残っています。
何度読んでも涙なしにはいられない名シーンですね。
ちなみに、このコルルについてはこちらの記事でも語りつくしているので、興味がある人は読んでみてくださいね。
オマケページ(ガッシュカフェ)
『金色のガッシュ!!』の完全版は電子書籍(Kindle)限定の商品です。
基本的には文庫版と同様の内容ですが、ガッシュカフェというオマケページが付いている所が魅力です。
実は、僕は文庫版を全巻持っているのですが、ガッシュカフェ目的で完全版も全巻購入してしまいました。(笑)
作中ではあまり絡みの無い魔物同士の掛け合いなんかが見られるだけで、正直大満足です。
そして、1巻のガッシュカフェはガッシュとゴフレがゲストとなります。
「ゴフレってどんな魔物だっけ?」と思いましたが、ブラゴが初登場した際にガッシュに擦り寄ってきていた犬ですね。
犬なのにいきなり喋りだしてビックリしますが、確かに本編中でも狂暴化した時に喋っているんですよね。(笑)
本編でゴフレが清麿に攻撃した時のことを引き合いに出して、攻撃を受けた清麿のリアクションの面白さに言及するというメタいネタが地味に面白かったです。
総括
いかがでしたでしょうか?
実はこうして過去作品の全巻レビューをする時、今まで他作品のレビューでは単行本の巻数ベースで書いてきましたが、今回は完全版をベースにしています。
なぜか?
理由は2つあって、1つは完全版に収録されているオマケページ(ガッシュカフェ)が面白かったので、そこについても触れていきたいと思ったこと。
そして、ガッシュが「やさしい王様」を目指すという『金色のガッシュ!!』という作品における原点となるコルルのエピソードまでが最初の1冊に収録されていてキリが良かったことがあります。
その甲斐もあって1巻目のレビュー記事はかなりノッて書くことができました。(笑)
王様を目指す戦いの中の敵でありながらも仲間となるキャンチョメペアやティオペアといったところが登場する次巻も楽しみですね。(次巻のレビューはこちら)