『金色のガッシュ!!(15)』平成最高の激熱バディもの漫画の感想(ネタバレ注意)
ついに最凶の敵クリア・ノートが登場する15巻です。(前巻のレビューはこちら)
魔物の王様を巡る戦いの生き残りも10名を切り最終盤に差し掛かっています。
全ての魔物を消し去ろうとする最凶の敵クリア・ノートが登場し、シェリー・ブラゴペアを含めた清麿・ガッシュペアの仲間たちの総力を挙げてクリア・ノートに立ち向かっていこうとするクリア・ノート編。
バトル要素のある少年漫画にしては珍しく長期間の修行シーンの無い『金色のガッシュ!!』でしたが、強敵クリア・ノートとの決戦に備えて各ペアともに力を付けていこうとする熱い展開です。
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本作の概要
全ての魔物を滅ぼす。
そんな思想を持った最凶の敵クリア・ノートに、手を組む魔物ゴーム。
いずれも大きな力を持った強敵で、今まで最強の人間・魔物ペアという威厳を放っていたシェリー・ブラゴペアですら全く敵いません。
アース、アシュロン、パピプリオ、そして力を付けたキャンチョメ。
いずれも残り10名まで生き残った魔物たちですがクリア・ノート、ゴームを前に本を燃やされてしまいます。
そして、そのゴームもクリア・ノートに反撃して返り討ちに。
残り10名の壮絶な戦いも、残り5名にまで減ってしまいます。
本作の見所
消える恐怖と約束
最初はガッシュのバオウを脅威として排除しようとしていたアース。
しかし、ファウード編中盤以降は清麿・ガッシュと共闘関係にある仲間になりましたね。
個人的にもエリー・アースペアはかなり好きなのですが、その最後はなかなか哀しいものでした。
今までの人間・魔物ペアは敗北して本を燃やされたとしても、魔物は無事に魔界に帰っただけであるという安心感があったはずです。
別れの哀しさはあっても死ぬわけではない。
それが魔物の王様を巡る戦いの特徴のひとつでした。
しかし、魔物の王様になった時の嫌いな魔物を消し去ることができる特典の存在が、そして全ての魔物を消し去ろうと考えているクリア・ノートの存在が、敗北の意味を一段階引き上げています。
(「金色のガッシュ!!」283話より)
ゴームに敗北したアースは、死ぬことへの恐怖を吐露します。
これは今までに敗退した魔物には見られなかった兆候ですね。
最初は主従のように振舞っている関係性だったエリーとアースですが、蓋を開けてみればメイン級の人間・魔物ペアを除けばトップクラスに素敵な関係性のペアだったと思います。
エリーは実際に精神的にかなり強い女の子ですが、実際以上に強く振舞おうとしている所があったのも事実だと思います。
アースとの別れのシーンでは、強さと弱さの両方を感じさせる複雑な涙を見せてくれました。
「アースを・・助けてくれ!! ガッシュが・・王となり、魂だけの状態となったアースを救ってくれ!!!」
アースを安心させるためにエリーは、アースの想いをガッシュに伝えることを約束していました。
最初は敵同士でしたが、誰よりもガッシュを信頼するようになっていることが伝わってきますね。
(「金色のガッシュ!!」284話より)
そして、その信頼を裏切るガッシュではありません。
改めてガッシュは、自分が王になることを誓います。
クリア・ノート
『金色のガッシュ!!』の最終章の敵はクリア・ノート。
竜族の神童でありバリーやキースといった強者よりも格上の魔物でもあるアシュロンや、清麿・ガッシュの最大のライバルであるシェリー・ブラゴペアですら子供扱いの強敵ですが、クリア・ノートの特徴はその強さではありません。
(「金色のガッシュ!!」289話より)
今まで清麿・ガッシュペアと戦ってきた魔物は、その性質が善であれ悪であれ魔物の王様になるという目的は共通していました。
それはゾフィスやゼオンも同じでしたね。
しかし、クリア・ノートの目的は「全ての魔物を滅ぼす」こと。
それは今までの敵には無かった凶悪な性質ですね。
ガッシュたちは魔物の王様を巡る戦い以前に、クリア・ノート編では魔界を守る戦いを強いられることになるわけです。
相手が危険思想の持ち主というだけでも緊張感があるのに、その上最大の強敵でもあるクリア・ノートとの戦いですが・・
本来であれば仲間という概念を排しているはずの魔物の王様を巡る戦いにおいて数々の戦いで共闘してきた仲間たちがいる清麿・ガッシュ。
最後にして最大の共闘が始まります。
デュフォーの協力
石板編、ファウード編でも一応は味方側だったシェリー・ブラゴペアですが、どちらかといえば単独行動という感じで共闘ではありませんでした。
しかし、クリア・ノートという最凶の敵を相手に今回ばかりは清麿・ガッシュたちと共闘することになります。
それにゼオンの人間パートナーであったデュフォーもまた、清麿・ガッシュたちが強くなるための協力者となります。
(「金色のガッシュ!!」293話より)
デュフォーにどストレートに「頭が悪い」と言われ、その上キャンチョメは「頭が良い」と言われ、ティオとシェリーがキレているのが面白いですね。
答えを出す者(アンサー・トーカー)の能力のひとつなのかどうかは分かりませんが、ガッシュの仲間の魔物たちの潜在能力を見抜いてトレーニング方法を指導するデュフォー。
清麿に対しても答えを出す者(アンサー・トーカー)の能力を引き出すトレーニングを施そうとしたり、非常に協力的なのが意外ですが・・
(「金色のガッシュ!!」294話より)
チームワークは抜群でもどこか冷たい関係に見えたデュフォー・ゼオンペアの間にもまた普通の絆があったようですね。
かつての敵が仲間になるのはありきたりではありますが、少年漫画らしい熱い展開で僕は好きです。
強くなるキャンチョメ
デュフォーの指導で大きな力を得たらしいキャンチョメ。
「必要なら「バオウ・ザケルガ」も使え」
清麿・ガッシュペアとフォルゴレ・キャンチョメペアとの練習試合で、新呪文が出ているキャンチョメを相手にバオウ・ザケルガを使えとまで清麿にアドバイスするデュフォー。
(「金色のガッシュ!!」294話より)
そしてこの練習試合。
追い詰められた清麿・ガッシュペアは本当にバオウ・ザケルガを使う必要に迫られ、そしてバオウ・ザケルガを使ったにも関わらず敗北します。
「フォ・・フォルゴレ・・。僕・・僕・・強くなれた・・。ガッシュを倒せるほど・・」
最弱と呼ばれたキャンチョメですが、ここにきて最大限にパワーアップしたようです。
ライオンとカバ
今巻のキャンチョメは大きく成長しましたが、一方で大きな力に溺れてしまうような様子もあります。
一言でいえば、セルと戦っている時の孫悟飯状態です。(笑)
「ちゃんと罪はつぐなわせないと・・。同じか、それ以上の苦しみと痛みを与えてね」
はい。完全に孫悟飯ですね。
何て言うのでしょうか?
今までもキャンチョメは弱くても勇敢なところもあるキャラクターでした。
そこに力が伴ったことで、正義に酔っているような状態になっているのかもしれませんね。
連載当時、このキャンチョメに対して良い印象は持てなかったのですが、そしてそれは今も変わらないのですが、考えてみれば気持ちは分かるというような気もします。
今までの戦いでもキャンチョメはもどかしい立場にいることが多かったですからね。
逆に好感度がグッと上がったのがフォルゴレです。
幼い正義を振りかざすキャンチョメに対して、静かに見守っているというか、少しずつ優しく諭そうとしている所が、どちらかといえばおっちゃらけたキャラクターの印象の強かったフォルゴレにしては意外に感じました。
(「金色のガッシュ!!」300話より)
キャンチョメと同じく臆病なところもあるフォルゴレですが、『金色のガッシュ!!』の作中通しても最大限に格好良い見せ場が、敵をキャンチョメから護ろうとするシーンだというところが皮肉なものですね。
フォルゴレのカバとライオンの例えは素晴らしく、いざという時は勇気を発揮するけど基本的には愉快なスターであるフォルゴレは確かに、初登場時からずっとカバだったのではないかと思います。
ガッシュの約束
ティオはどちらかといえば弱い姿をあまり見せない。見せたがらないキャラクターだと思いますが、クリア・ノートとの戦いを前に大きな不安を抱えているようです。
ちょっとティオらしくないとも思いましたが、考えてみれば今までの戦いとは状況が全く違うので当然といえば当然なのかもしれません。
要は、アースと同じなのですね。
(「金色のガッシュ!!」302話より)
クリア・ノートに負ければ魔界への帰還ではなく消滅が待っているかもしれない。
通常、魔物の王様を巡る戦いの敗者に待っているのは「別れの哀しみ」だけだったところに、突然「死への恐怖」が追加されたわけで、これで全く不安にならないのはどんな蛮勇の持ち主だったところで正常な状態とは言えないと思います。
だからティオがガッシュに不安をぶちまけるのは、ある意味では正常な反応なのです。
では、ガッシュはどうなのか?
(「金色のガッシュ!!」302話より)
ティオの不安を晴らすように、自分が王になることを改めて誓います。
しかし、これは蛮勇ではありません。
ガッシュ自身も不安はあるのだと語っています。
「だが、それ以上に私はみなの思いを叶えねばならん。不安などにかまっておれん。私は、そういうものを背負っておるのだ」
不安以上に背負っているものが大事だと、そういう思いがガッシュを強くしているのかもしれませんね。
しかし、考えてみればガッシュもティオも、それに他の生き残っている魔物たちも背負っているものは同じはずです。
そんな中、堂々と自身の背負っているものに言及できるガッシュには既に王の風格があると言えるのかもしれませんね。
オマケページ(ガッシュカフェ)
ファウード編、クリア・ノート編のラスボス2人の組み合わせです。
ガッシュの好物はブリですが、ガッシュの兄のゼオンはカツオが好きみたいで、本編で大暴れ中のクリア・ノートとシリアスな会話を繰り広げならがらも美味しそうにカツオを嗜んでいるのが面白いですね。
「いつも思うが、ゼオンがカツオブシを食べてる様は面白いな・・」
あまり面白いことに反応しなさそうなデュフォーですら面白いと思うのがまた面白いです。(笑)
クリア・ノートがカツオブシの作り方に詳しいのも意外な一面って感じですね。
総括
いかがでしたでしょうか?
何故か昔、このクリア・ノート編は作者の意図しない引き延ばしだと噂されたことがあるのですが、そこは作者本人により否定されています。
というか、まだ魔物の王様を巡る戦いの決着が付いていないファウード編で終わりとか考えられないですよね?
ハッキリ言って、『金色のガッシュ!!』は最初から最後まで非常に綿密に描かれている完成度の高い漫画だと思うので、クリア・ノート編も含めて不要なところが見当たらないと思うのですが・・
むしろ、クリア・ノート編の決着する次巻(最終巻)は、マジで感動もののクライマックスになっています。
ついにやさしい王様が誕生する最終巻にも注目ですね!(次巻のレビューはこちら)