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『金色のガッシュ!!(16)』平成最高の激熱バディもの漫画の感想(ネタバレ注意)

 

ついにやさしい王様が誕生する最終巻です。(前巻のレビューはこちら

大きくは邂逅編、石板編、ファウード編、そして最後のクリア・ノート編の4つに分類される『金色のガッシュ!!』ですが、これで最後になります。

長期連載の少年漫画には、どんな名作であっても最後が微妙な作品は少なくありません。

連載していると出版社側の都合や何やらで作者の思い通りにいかないこともあるからなのだと思われますが、その点『金色のガッシュ!!』は本当に美しくクライマックスを迎えた珍しい作品だと思います。

魔物の王様を巡る戦いという最後の目的が明確な作品であり、そこに向かって余すところなく描かれきった感じがするからでしょうか?

なぜかクリア・ノート編が連載の引き延ばしのためのエピソードであると言われていたこともありますが、個人的には週刊の長期連載の少年漫画の中でもトップクラスに綺麗に終わった作品だという印象があります。

少年漫画らしい非常に熱い作品ではありますが、この最終巻は涙するほど感動すること請け合いです。

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本作の概要

デュフォーの指導を受けて成長した清麿・ガッシュたちは、ついにクリア・ノートと激突します。

クリア・ノートの元へと向かう途中の超長距離の戦いでは次々と本を燃やされてしまう仲間たち。

成長した清麿・ガッシュペアとシェリー・ブラゴペアの共闘でも苦戦するクリア・ノート。

そして金色の本の登場と決着。

金色のガッシュ!!』という作品の集大成がここにあります。

最後には清麿・ガッシュペアとシェリー・ブラゴペアによる最後の戦いが取り行われ、ついに魔物の王様を巡る戦いの決着も見られます。

本作の見所

クリア・ノートの元へ向かう戦い

クリア・ノートの術はかなりの遠距離まで有効で、トレーニングを完了した清麿・ガッシュたちがそこに近づいていく過程だけでも壮絶な戦いが始まります。

より多くの魔物がクリア・ノートの元にたどり着くことを目標とした作戦。

基本的には相手と対峙して戦うことになる『金色のガッシュ!!』という作品において、数千キロくらすの超長距離戦という新しい戦いがここで見られます。

また、そんな遠距離にいるクリア・ノートに成長した清麿・ガッシュの仲間たちが次々と倒れていく。

クリア・ノートの強さを再認識させられるとともに、力を出し切った仲間たちとの別れが感動的なエピソードとなります。

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(「金色のガッシュ!!」309話より)

ティオの「また明日」というセリフに込められた思い。

クリア・ノートとの戦い。全ての魔物が消滅させられてしまうことに怯えていたティオにとって、まだ明日があるというセリフはガッシュに対する最大限の信頼の証だったに違いありません。

だからガッシュに不安を吐露して、そして勇気づけられた時にも「また明日」と口に出ていたのだと思います。

考えてみれば「また明日」なんてありふれたシンプルなセリフですが、それにこんなにグッとくる何かがあるというのも珍しいような気がしますね。

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(「金色のガッシュ!!」311話より)

ウマゴンには例によってセリフはありませんが、超高速の移動手段を持つウマゴンがクリア・ノートの元に近付くための最大の功労者であることは間違いありません。

最後には、サンビームがウマゴンの本を大海恵に頼んで自ら燃やすことを決断するほどボロボロになるまで清麿・ガッシュを乗せて走る姿が感動的ですね。

どうやらウマゴンには元々、ウマの魔物が誰かを乗せることに嫌悪しているところがあったようですが、だからこそ清麿・ガッシュを乗せて走ることに誇りを持っているような姿が格好良く見えます。

ガッシュペアとブラゴペアの共闘

そういえばシェリー・ブラゴペアと本格的に共闘するようなエピソードって今まで無かったような気がします。

石板編でのシェリー・ブラゴペアはほとんどゾフィス目的での別行動でしたし、ファウード編の終盤にファウードを転ばせる重要な役目がありましたが、ストーリーの本筋には絡んできていませんでした。

なんというか、清麿・ガッシュの物語の裏側として描かれることは多かったものの、実は接点は少ないんですよね。

序盤から最大のライバルって感じで描かれていたわりには意外な事実です。

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(「金色のガッシュ!!」312話より)

非常にプライドの高いブラゴですが、野生を取り戻すトレーニングを経てより完全な生き残る道を見つけられるようになっていて、そしてそれが共闘を優先することだったようです。

もはや、既にデュフォーゼオンペアに勝利しファウードを止めた清麿・ガッシュペアを弱者だとは思っていないようですね。

連載時も、成長して最後にぶつかることになるかと思われたライバル・・というか目標となるキャラクターと、最後に共闘するような展開になるとは予想していなかったので少し驚いた記憶があります。

答えが出ない戦い

デュフォーの協力を得たトレーニングで大きく成長した清麿・ガッシュペアとシェリー・ブラゴペアの共闘は、『金色のガッシュ!!』の作中でも最強のタッグであることは間違いありません。

しかし、クリア・ノートはそれでも一筋縄ではいかない強敵です。

「奴を倒す答えが・・「ない」!! 奴を倒す答えが「出ない」・・」

デュフォーのトレーニングにより再び答えを出す者(アンサー・トーカー)の能力を使えるようになっていた清麿ですが、だからこそ清麿には他のキャラクターよりも大きな焦りがあったあったかもしれません。

何しろ、どんな答えを出すことができたとしても、存在しない答えを出すことはできないのですから。

むしろ馬鹿でいた方がまだ希望が得られるというものです。

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(「金色のガッシュ!!」315話より)

しかし、答えが出ないくらいで諦める清麿、そしてガッシュではありません。

今現在答えが無いのであれば、作り出すのだと即切り替えることができるのは、さすが主人公ペアといったところでしょうか。

金色のガッシュ

清麿・ガッシュの気迫の強さは、もはや説明する必要はないでしょう。

しかし、心は折れていなくても清麿・ガッシュペア、シェリー・ブラゴペアの両方が満身創痍の状態。

しかもクリア・ノートにはまだまだ余裕がある様子。

ガッシュにはもう立ち上がる筋力すら残っていません。

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(「金色のガッシュ!!」316話より)

そんなガッシュの脳裏によぎるのは、今まで戦った魔物たち。

ティオには明日を約束し、キャンチョメには必ずクリア・ノートを倒すと、ゼオンとは一緒に暮らそうと約束しました。

そして、コルルにはやさしい王様になると約束しました。

そんな記憶が、たくさんのものを背負っているガッシュの力となって再び立ち上がります。

すると・・

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(「金色のガッシュ!!」316話より)

そんなガッシュの意志に反応したのか、ガッシュの赤い本が金色に輝き始めます。

この異変は一体何なのか?

「この、魔界の王を決める100名の魔物の子の戦いにて・・。ガッシュの仲間になった・・友達になってくれた魔物だ!!!」

どうやらこの金色の本にはガッシュが背負っていたはずの、他の魔物たちの力が宿っているようです。

これこそ、清麿の答えを出す者(アンサー・トーカー)の能力でも出せなかった、新たに作り出した「答え」なのかもしれませんね。

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(「金色のガッシュ!!」318話より)

今までガッシュと懇意にしていた魔物たちの、人間界にいた頃には使えなかったものも含めた最強呪文を清麿・ガッシュペアが使えるようになり、それをクリア・ノートにぶつけていきます。

ティオのシンの術がサイフォジオだって所も熱いですね。

ティオは盾の使い手ですが、サイフォジオこそが何だかんだで重要な局面で何度も活躍した作中でもかなり重要な立ち位置にある術ですからね。

なんならバオウ・ザケルガより活躍していたまであります。

やさしい術

大量の魔物の最強の術を受けて、さすがのクリア・ノートも宇宙に逃げ出そうとします。

そんな後一歩という重要な局面で登場したのが・・

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(「金色のガッシュ!!」318話より)

なんとコルルです。

たとえ宇宙空間だろうが「生命」を守るシン・ライフォジオ。

コルルらしい、やさしい術です。

「もう少し待っておるのだぞ。必ず「やさしい王様」になるからの」

最後の正念場、この重要な場面でガッシュが、再びコルルにやさしい王様になることを約束する展開が激熱ですね。

もしかしたら、ここでコルルを登場させるための金色の本だったのではないかとまで思ってしまいます。

ちなみに、このコルルについてはこちらの記事で語りつくしているので興味がある人は読んでみてくださいね。

www.aruiha.com

クリア・ノートとの決着

「今のお前に力を貸さぬ者はいないだろう。お前の民を思う姿はオレ達魔界に住む魔物を一つにした」

最後はガッシュの魔界の民を思う姿に王を見たゼオンが、清麿・ガッシュの背中を押します。

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(「金色のガッシュ!!」319話より)

ここで「金色のガッシュ!!」のタイトルの伏線回収。

シン・ベルワン・バオウ・ザケルガ。

ガッシュ最大の攻撃呪文で、ついにクリア・ノートを撃退しました。

最後の戦い

クリア・ノートとの決着でなんとなく全てが終わった感じになりましたが、魔物の王様を巡る戦いはまだ残っています。

清麿・ガッシュペアとシェリー・ブラゴペアの決着。

それが『金色のガッシュ!!』最後の人間・魔物ペア同士の戦いになりました。

僅かに清麿・ガッシュペアが優勢という勝負になりましたが、何だか嬉しそうに戦うブラゴが印象的なエピソードとなります。

「よくぞここまで戦ってくれた・・。よく・・このオレについてきてくれた・・。お前がパートナーでなければ、オレはここまで戦えなかった」

自らの敗北を悟ったブラゴの、シェリーに対する感謝の言葉が忘れられません。

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(「金色のガッシュ!!」321話より)

何故、弱い人間とパートナーになって戦わなければいけないのか?

足手まとい以外のなにものでもないのではないか?

思えば序盤のブラゴはそんなことをずっと言っていましたが、シェリーがいたからこそ今のブラゴがいるのも事実なのでしょう。

もしかしたら、そのことはかなり前から自覚していたのだと思いますが、ブラゴはシェリーに感謝している素振りなど微塵も見せませんでした。

だからこそ、最後の最後にシェリーに語った感謝の言葉が感動的ですよね。

魔界の王様

そして、ついに誕生します。

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(「金色のガッシュ!!」323話より)

やさしい王様ガッシュ・ベル。

ついに悲願が果たされたわけですが、それは清麿とガッシュの別れを意味します。

考えてみれば最初から、最後まで勝ち残ったとしても別れが待っているのが魔物の王様を巡る戦いというものでした。

そう考えるとなんて哀しい物語なのだろうとも思うのですが、不思議とそう感じさせない清々しい読後感があったと思います。

魔界に戻った後のガッシュや、清麿のその後、ずっと未来にあるかもしれない再会なんかは気になるところですが、これで終わりで良かったのだと思います。

週刊連載の少年漫画にしては、ちょっと珍しいくらい綺麗なエンディングですしね。

ちなみに、魔界に戻った後のガッシュに関しては少しだけどうぶつの国の6巻に収録されているので、興味がある人は読んでみましょう。

オマケページ(ガッシュカフェ)

最後のガッシュカフェは、ガッシュの父親の前魔界の王ダウワン・ベル。そして魔本の1人と1冊ですね。

前魔界の王はともかく魔本とはビックリですね。(笑)

そして、魔本によって前魔界の王ですら知らない、魔物の王様を巡る戦いという試練をなぜさせるのかという疑問について、かなり踏み込んで答えています。

かなり踏み込んでいるものの、いろいろ仄めかされただけで結論は分からないのですが、『金色のガッシュ!!』ファンなら興味深い話ですよね。

総括

いかがでしたでしょうか?

連載作品って出版社の都合が入ったりもするから、どこか違和感のあるストーリーになることも珍しくありませんが、その点『金色のガッシュ!!』は本当に美しいストーリーだったと思います。

こうしてレビュー記事を書いていると、頭をカラッポにして読んでいる時に比べて色々気付くこともありますが、特に「コルルという魔物の存在」「やさしい王様というキーワード」が思っていた以上に『金色のガッシュ!!』という作品の根幹になっていることに気付かされました。

なんというか、今まであまり何とも思っていなかったシーンにも、その背景にそれらがあったということに気付かされたといった具合です。

ここまで熱さがあり、感動もあり、そして楽しくて、完成度も高い作品も珍しいので、興味を持った人は是非読んでみてください。

最後は苦手な絵でコルルを書いてみました。(笑)

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