『金色のガッシュ!!(5)』平成最高の激熱バディもの漫画の感想(ネタバレ注意)
ガッシュの成長が感動的な5巻です。(前巻のレビューはこちら)
今までも清麿・ガッシュペアはやさしい王様を目指して奮闘していましたが、グスタフ・バリーペアやナゾナゾ博士・キッドペアといった強敵を前に明確に成長を望むようになってきます。
ガッシュとティオの二人だけで訓練したり、ナゾナゾ博士・キッドペアとの戦いではまさにガッシュの強くなりたい気持ちが反映された呪文を覚える展開が熱いです。
グスタフ・バリーペアは現時点でかなり清麿・ガッシュよりも格上感がありましたが、清麿・ガッシュにも純粋な腕力ではない強さがあることが現れていて良かったと思います。
それに、キャンチョメもまた心の強さを見せて格上の魔物相手に勝利を収めています。
そろそろ最初の大きなエピソードに突入していきますが、改めて考えると今巻ではそれに向けてのキャラクターの成長が描かれていたのではないかと思いました。
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本作の概要
ガッシュの強くなりたい想いが今までになく強くなっています。
パートナーの人間である清麿や大海恵も頑張っているのを見て、ティオと2人で特訓に勤しむ姿は微笑ましくも熱いですね。
また、グスタフ・バリーペアとの戦いでは強敵相手に清麿・ガッシュペアはボロボロになってしまいますが、それが更なる成長への渇望へと繋がります。
本作の見所
ガッシュとティオの訓練
ガルザ・バランシャペアとの戦いでは、まるで狩猟のような戦い方に苦戦するものの最後は狩る側になって逆転勝利した清麿・ガッシュペアですが、勝利したものの逃げられてしまいました。
(「金色のガッシュ!!」83話より)
既に残っている魔物の数は過半数を下回っている。
ティオの言うように今でも残っている人間・魔物ペアは一筋縄ではいかない何かがあるのかもしれませんね。
清麿・ガッシュペアがまさにそうなので、その言葉には一定の説得力があります。
「ウマゴンは、なぜ生き残ってるんだろう・・?」
そんな中、パートナーの人間を見つけることすらできていないウマゴンがなぜ生き残っているのかというティオの疑問は、ひょっとしたら作者の言葉の代弁なのかもしれないと思います。(笑)
ともあれ、ガッシュとティオは二人で特訓することになるのですが、回想的にしか描かれていないのにそのシーンが地味に微笑ましくて好きなんですよね。
「いつの間にこんなに強くなったのかしら?」
ティオもガッシュの成長を実感していますが、今巻はそんなメインキャラクターの成長が多く描かれている印象が強いですよね。
キャンチョメの戦い
メインキャラクターの中でも今までの登場回数が比較的多いキャンチョメですが、完全に戦闘向きではない能力である都合上なのか、他の魔物との本格的な戦闘というと今回が初めてだったような気がします。
また、『金色のガッシュ!!』の登場キャラクターの中でも最も臆病そうに見えるキャラクターでもあるのですが、それを補ってあまりある勇気を持っているキャラクターでもあると思います。
(「金色のガッシュ!!」87話より)
フォルゴレのいない時に出会ったルシカという少女を妹のように可愛がっているキャンチョメは、ルシカの家から羊を奪い去った人間・魔物ペアを相手に勇気を持って立ち向かいます。
力のある者がヒーローになれるのはある意味簡単なのかもしれませんが、今巻でのキャンチョメのように臆病を押し殺して誰かを守ろうとする姿こそ本当のヒーローというか、通り越して勇者と言えるのかもしれませんね。
目標の有無
徐々に清麿・ガッシュペアの前に現れる人間・魔物ペアのレベルが上がってきているような気がしますが、今巻のグスタフ・バリーペアは今までにない強敵って感じがしますね。
また、このエピソードでは力はあるけど自身がどのような魔物の王様になるのかというビジョンの曖昧なバリーと、やさしい王様という目標が明確なガッシュの対比が興味深く、改めて清麿・ガッシュペアの目指すところを再認識させられるところが面白いと思います。
「以前倒した奴らが言っておった。日本にいるガッシュという魔物に戦いを挑みにいって帰ってきたものはおらぬと」
強い魔物との戦いを望んでいそうなバリーへのグスタフの提案。
どうやらガッシュの活躍は思っている以上に広まっているようですね。
ともあれ、ガッシュという強者を求めてグスタフ・バリーペアは日本にやってくるのですが・・
(「金色のガッシュ!!」89話より)
シリアスなシーンから飛んでコミカルに。(笑)
コメディパートのガッシュは普通の子供というか、いじめられっ子体質というか、そんな感じなのですが、誰よりも強者を求めていそうなバリーが最初にコメディパートのガッシュに出会うというギャップが面白いですね。
「おそらくそれほどに強い奴なら、一目見ればわかるハズ」
格好良くそんなことを言っていたバリーですが、明らかにガッシュよりも強そうなナオミちゃんをガッシュと勘違いしてしまっているあたりは普通に面白かったです。
しかし、周囲に危害を加えると言われたガッシュの目の色が変わったのを見て取って、バリーは普通にガッシュとの戦いにワクワクしている様子です。
ともあれ、清麿・ガッシュペアとグスタフ・バリーペアの戦いが始まるのですが・・
ハッキリ言って完全にグスタフ・バリーペアの方が一方的に優勢な感じで勝負が進みます。
しかし、清麿もガッシュもボロボロになりつつ全く諦める気配はなく、バリーも勝負を決めあぐねている様子。
むしろ、清麿やガッシュの真剣みを帯びた目を見て、精神的には押され気味になっています。
「ガッシュといったな・・おまえはどのような「王」を目指しておる?」
精神的に押され気味のバリーをよそに、グスタフはガッシュに問いかけます。
その答えは言わずと知れたやさしい王様ですね。
それは困難な道で、実は今回の戦いでもその意思を曲げなかったことにより清麿・ガッシュペアは最初から不利な状況での戦いを強いられています。
しかし・・
(「金色のガッシュ!!」92話より)
「それ以外に私の王はない!!」というガッシュのセリフには痺れますね!
ガッシュの目標はそもそも魔物の王様になることではなく、やさしい王様のいる世界なのだとぶれない姿勢が格好良いと思います。
そして、そんなガッシュを見たグスタフ・バリーペアは今回は見逃すと帰っていきました。
さて、実は今回のエピソードって『金色のガッシュ!!』の中でも地味に興味深い要素のあるエピソードだと個人的には思うんですよね。
それはなぜか?
それは、今回戦った2組のペアの両方に引き分けではなく敗北を与えた上で、どちらの本も燃やされなかったという点です。
メタい意見ですが、敗北イコール本を燃やされ消えてしまうことを意味する魔物の王様を巡る戦いにおいて、実は本当の意味での敗北をメインキャラクターの経験させるのは難しいことだったのではないかと思います。
しかし、今回の清麿・ガッシュペアは明確に力及ばずグスタフ・バリーペアには負けていました。たとえやさしい王様を目指す清麿・ガッシュに精神的に押され気味だったところで、最終的にはグスタフ・バリーペアが勝っていたのは間違いないでしょう。
一方のグスタフ・バリーペアにしても、この戦いで清麿・ガッシュペアの本を燃やすことができたとしても、それは本当の勝利では無いと感じたから引いたのだと思います。
負ければ終わりのはずの魔物の王様を巡る戦いにおいて、2組もの今後敗北を糧にしていくことになるであろうキャラクターが誕生したのは興味深いことだと思います。
ナゾナゾ博士
グスタフ・バリーペアに敗北したことで、ガッシュは今まで以上に強くなりたいと願っていました。
敗北を糧に成長していく展開はありきたりですが、もっとも熱い展開でもあると思います。
それに前述した通り『金色のガッシュ!!』という作品においてはメインキャラクターに本当の意味での敗北を与えるのは難しいはずなので、こういうシーンは意外と貴重なんですよね。
ナゾナゾ博士のヒントにより、自分を信じることで眠っている力を呼び覚ませると気付いた清麿は、ガッシュに自分を信じるように言い聞かせます。
その結果・・
第六の術ラウザルクというガッシュ自身を強化する呪文を新たに覚えました。
(「金色のガッシュ!!」97話より)
ラウザルクとは、いわゆる身体強化系の呪文で『金色のガッシュ!!』に限らず定番の技って感じの呪文なのですが、それを覚えるに至るまでの過程が感動的だと思います。
「これほど・・嬉しい力はない!!!」
それは、清麿がボロボロになって悔しい思いをしなくて済む力。
グスタフ・バリーペアとの戦いでは、今までになく清麿までボロボロになってしまいました。
それをずっと悔しいと思っていたガッシュにとって、自身を強くする呪文は本当に嬉しかったに違いありません。
グスタフ・バリーペアとの戦いの敗北からナゾナゾ博士・キッドペアとの戦いでの成長に至るこの流れは本当に良かったと思います。
王たる風格
成長しているのはガッシュやキャンチョメだけではありません。
圧倒的な強者ではあっても、どこか冷たい印象の強いブラゴもまた少しずつ変化しているようです。
(「金色のガッシュ!!」99話より)
「心を持った人間を力だけで動かせると思わないで!!! あまり人間をなめるんじゃないわよ!!!」
大きな力を持ってはいても感情の機微の分からない者に王になる資格などないと、かつてシェリーはブラゴにそのように言い放ったようですね。
そんなシェリーがパートナーだったことも影響しているのか、厳しいことを言いつつも人助けをするようなキャラクターにブラゴもなってきたようです。
前にも書きましたが、このブラゴの変化と最終巻でのセリフは本当に感動的なんですよね。
オマケページ(ガッシュカフェ)
今回のガッシュカフェは4巻で共闘での戦いを見せたパピプリオとゾボロン。そしてキッドの3人です。
パピプリオとゾボロンはともかくキッドが意外な組み合わせですね。
なんでキッド何だろうと思ったら、恐らくゾボロンが喋りだして嘘を付くというネタがやりたかったわけですね。(笑)
嘘に対して一番反応が面白そうなのがキッドなのは確かだと思います。
しかし、どこまでがネタなのか分かりませんけど、ゾボロンが雌(女?)だったのは地味に驚きです。
総括
いかがでしたでしょうか?
『金色のガッシュ!!』は清麿・ガッシュペアが主人公なので当然その周辺が一番気になるところではあるのですが、キャンチョメやブラゴなど、清麿・ガッシュとは直接関わらないところでのそれぞれの成長が描かれているのが良いですよね。
清麿・ガッシュは成長していっている。
だけど成長しているのは何も主人公ペアだけじゃないんだという所が熱いですよね。
次巻は、いよいよ最初の大きなエピソードに突入し始めます。
僕は少年漫画のエピソードって序盤の短いけど新しい発見の多いエピソードの方が好きだったりするのですけど、壮大なエピソードに突入していくワクワク感もやっぱり楽しみなものですよね。(次巻のレビューはこちら)