『金色のガッシュ!!(8)』平成最高の激熱バディもの漫画の感想(ネタバレ注意)
レイラとシェリーのための1冊って感じの8巻です。(前巻のレビューはこちら)
『金色のガッシュ!!』って本当に見所が多すぎて困ります。こうしてレビュー記事を書くときに纏まらないから。(笑)
8巻では、もちろん清麿・ガッシュとその仲間といったメイン級のキャラクターも活躍していますが、それ以上にレイラやシェリー。それにパティやビョンコといった準メイン級のキャラクターの活躍が特に目立っていたような気がします。
一度清麿・ガッシュたちに協力したものの石化の恐怖から涙ながらに敵対してしまうレイラに、ついにブラゴとともに仇敵との戦いに臨むシェリー。
そして、自分たちの行い顧みて後悔するパティとビョンコ。
熱いバトルも素晴らしいですが、どこか涙腺を刺激してくるような展開も素敵な作品だと再認識させられます。
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本作の概要
ついにゾフィスが本領を発揮し始めますが、同時にシェリー・ブラゴペアも登場してきます。
圧倒的な強さを誇るシェリー・ブラゴペアがゾフィスの相手をし、清麿・ガッシュたちは月の石の破壊を目指す分担となりました。
再び石板にされてしまう恐怖に一度は清麿・ガッシュたちを助けたものの敵対してしまうレイラや、そんな哀しいレイラの状況を見て自らを顧みることになったパティにビョンコ。
そんな風に自らの立ち位置に苦悩するキャラクターが目立つのが印象的な一冊だったと思います。
本作の見所
シェリー・ブラゴペアの強さ
シェリー・ブラゴペアは『金色のガッシュ!!』に登場するメイン級の人間・魔物ペアの中でも最初から独特な立ち位置のキャラクターだったと思います。
大海恵・ティオペアのように明確に仲間になったわけではない。
むしろ絶対的に敵であると言えます。
とはいえ例えばゾフィスのような倒すべき敵かと言われたらそうではないでしょう。
ライバルという言葉がしっくりきそうですが、あまりにも実力差があるのでそれも少し違う気がします。
ではシェリー・ブラゴペアとは清麿・ガッシュペアにとっての何なのでしょうか?
(「金色のガッシュ!!」143話より)
清麿が言っているように「いつか越えなければならない壁」というのが清麿・ガッシュペアにとってのシェリー・ブラゴペアの立ち位置なのだと思います。
「倒すべき敵」と何が違うんだと思う人もいるかもしれませんが、実際に清麿やガッシュはブラゴのことを敵だとは言っていません。
敵ではなく、あくまでも壁なのですね。
それに魔物の王様を巡る戦いにおいていつかは倒す必要があるのは、それこそティオやキャンチョメ相手だって同じですが、清麿とガッシュは彼らのことを「倒すべき敵」だとは間違っても思っていないでしょうし、そこはシェリー・ブラゴペアに対する思いも同じである気がします。
そして、今巻でシェリー・ブラゴペアは1000年前の魔物との戦いで清麿・ガッシュペアを大きく上回る活躍を見せ、ブラゴが本当に高い壁であることそれを改めて再認識させられます。
相手がシェリーの仇敵であることも相まって、今まで登場した時以上に張り切っている感じがして、その分活躍も大きかったような気がします。
「ゾフィスはオレ達にとっても許せない魔物だ。必ず倒してくれ。オレ達も「月の石」の方のカタがついたらゾフィスを・・」
譲ったという言い方が適切なのかは分かりませんが、憎しみを持ってゾフィスに臨むシェリーにゾフィスのことを任せ、清麿・ガッシュたちは「月の石の破壊」という別の役割を担うことになりました。
そして、それが終わったら自分たちもシェリー・ブラゴペアの増援にと提案する清麿でしたが・・
(「金色のガッシュ!!」144話より)
この憎悪と決意と自信が入り混じったようなシェリーの表情がヤバいですね。
確かシェリーも二十歳前の子供だったはずですが、その年齢でこんな表情ができるとは凄まじいと思います。
ちなみに、前巻でもナゾナゾ博士相手にシェリー・ブラゴペア以外の魔物がゾフィスに手を出させないようなことを言っていて、仇敵相手とはいえ自分たちで倒すことにこだわりすぎている感じもしますが、ここには実は仇敵だからということ以上の理由があったりします。
それは何なのかは次巻のお楽しみですね。
レイラの葛藤
レイラは最初からロードことゾフィスのやり方が間違っていることに気付いていて、反発して清麿・ガッシュの味方をしていました。
しかし、「月の石」を破壊しようとやってきた清麿・ガッシュたちにレイラは攻撃を仕掛けてきます。
(「金色のガッシュ!!」145話より)
ゾフィスに再び石化の恐怖を植え付けられ、それに勝てなかったレイラ。
良い魔物であることが既に分かっているからこそ、敵になってもレイラに攻撃を仕掛けられない清麿・ガッシュですが、そういうところゾフィスは狡猾ですよね。
心の強さが力になる人間・魔物ペア同士の戦いにおいて、心をコントロールするゾフィスの厄介さが改めて認識させられます。
「レイラはもう石に戻らない!!! ゴーレンの石の呪いは、完全に解けているんだ!!!」
聡い清麿は既にゾフィスにも一度解いた石化を元に戻す術は無いことに気付いていて、それをレイラに訴えますが・・
「目の前が真っ暗になって、心臓が止まりそうになる!! おさえようがないのよ!!!」
頭では清麿の言っていることが正しいと分かっているようですが、それでも1000年間も石板として過ごした経験からくる恐怖にはなかなか勝てません。
しかし、それでも最後には身を挺してレイラを説得する清麿に触発され、石化の恐怖に打ち勝ってきました。
(「金色のガッシュ!!」147話より)
その後、完全に清麿・ガッシュたちの協力者となったレイラですが、ド天然なところや蠱惑的な表情を見せるようになったり、より一層魅力的に感じられるキャラクターになってきたのではないかと思います。
デモルトとの戦い
ブラゴが力だけならゾフィス以上だと感じ取るほどの魔物・デモルトとの戦いは歴代の戦闘シーンの中でも随一の厳しさを誇る戦いだったのではないかと思います。
(「金色のガッシュ!!」150話より)
デモルトのパートナーであるローベルト・ヴァイルは、ゾフィスの跡を継ぐと豪語する清麿・ガッシュからしたら無視できない許されざる存在で、だからこそ圧倒的に力量差がある状況でも少しの光明を目指してデモルトに挑んでいきます。
しかし、頼みの綱のバオウ・ザケルガを弱点に直撃させたにも関わらず、それでもダメージが無い様子なのは今までに無かったことです。
今までならバオウ・ザケルガが清麿・ガッシュペアにとってのジョーカーになっていましたからね。
そんな清麿・ガッシュペアを助けたのは・・
まさかのパティとビョンコでした。
ガッシュ、レイラ、アルベールの涙を見て、パティはようやく自分のしてきたことの酷さに気付き、清麿・ガッシュに加勢することにしたようですね。
結果的にパティもビョンコも本を燃やされることになってしまいますが、パティに至っては明らかにこだわっているであろうトレードマークの髪を犠牲にしてまで清麿・ガッシュのピンチを救いました。
「あの子は一生懸命がんばったの!! 魔界で仲間はずれにしないで!!」
本が燃やされて消えてしまう直前、パティは自分は良いからビョンコとは魔物の王様を巡る戦いが終わって魔界に帰ったら仲良くしてほしいとガッシュたちに懇願します。
最初にパティを巻き込んだのはビョンコだったはずという野暮いことは言うまい。(笑)
当然、この状況でそれを拒否するガッシュではありませんし、パティとだって友達だとガッシュは断言します。
(「金色のガッシュ!!」153話より)
ビョンコの最後のセリフを思い出すパティ。
ここは『金色のガッシュ!!』の作中全体でも指折りの感動シーンであることは間違いないと思います。
ゾフィスとの戦い
今までも清麿・ガッシュペアよりもずっと格上の人間・魔物ペアは少なからず登場していますが、直接優劣が付けられているわけではないのにシェリー・ブラゴペアこそが一番強いんだろうなぁという漠然とした認識はありました。
デュフォー・ゼオンペアあたりはどうだろうという感じでしたが、連載当時はこの時点でデュフォー・ゼオンペアはかなり謎に包まれていましたからね。
なんでそう感じていたんだろうと考えた時に、力が強いだけではなく、シェリーもブラゴも他の人間・魔物ペアに比べて最初から心の強さがあったからなのではないかと思います。
今巻の前半でも、その強さを改めて再認識させられましたね。
しかし、ゾフィスは心をコントロールすることに長けている上にシェリーの親友を手中にしています。
なのでさすがのシェリーも今回の戦いではかなり追い詰められていました。
(「金色のガッシュ!!」159話より)
シェリーに心の力が無くなり、呪文が出せなくてブラゴも追い詰められはじめ、ついにはシェリーがブラゴの本を燃やすように懇願し始めます。
後にも先にもシェリーが呪文すら出せないほどに追い詰められたのは、ゾフィスとの戦いが最初で最後だったと思います。
(「金色のガッシュ!!」160話より)
しかし、最後にはシェリーが親友ココとの絆を信じることができて、ゾフィスを圧倒することができました。
シェリーのように信じてくれる親友がいるココも、何が何でも助けたいと思える親友がいるシェリーも、何だか眩しく見えますね。
オマケページ(ガッシュカフェ)
今巻のガッシュカフェはビョンコと・・
まさかのペンダラム・ファルガです。
いや、ペンダラム・ファルガって確かに魔物っぽいけど、魔物じゃなくてパムーンの術ですよね?(笑)
いや、確かに『金色のガッシュ!!』に登場する術って生き物っぽい姿の術が多いですけど、こういうネタにするとはって感じです。
「パムーンは石にされた上にブリで叩かれたりラクガキされたり、不遇で可哀想な魔物なんだ」
確かにパムーンは本編での扱いに少々不遇なところがありますが、オマケでまでこういう扱いになるとは・・
まあ、それが面白いんですけどね。(笑)
総括
いかがでしたでしょうか?
いよいよブラゴとゾフィスの戦いも決着し、長かった石板編もいよいよエピローグですね。
こうしてレビュー記事を書きながら読んでいると、普通に読んでいた時には得られなかった気付きが多々あったりするのですが、石板編でもそういう気付きがとても多かったと思います。
今まで1000年前の魔物たちの内心とか、そういうことをあまり考えたことがありませんでしたが、要所要所で登場してきた魔物にはそれぞれの思惑があって興味深かったです。
そして次巻からは、石板編が終わったばかりですがすぐに次の大きなエピソードへの布石が打たれ始めます。(次巻のレビューはこちら)