『金色のガッシュ!!』原作漫画全巻のレビュー記事まとめ(ネタバレ注意)
『金色のガッシュ!!』という作品のことを、これまで「平成最高の激熱バディもの漫画」だと紹介してきました。
これは僕が昔『金色のガッシュ!!』という作品を読んだ時に感じた率直な感想そのままとなります。
しかし、今回全巻をレビューするにあたり久々に読み返すことによって、今まで気付いていなかった『金色のガッシュ!!』という作品の性質にも気付くことができました。
それは、『金色のガッシュ!!』という作品が想像以上に完成された作品だということ。
なんというか、ストーリーもキャラクターの行動も、成長したり変化することはあっても根本のところは全く変わっておらず、最初から最後まで綺麗に一貫し続けているような気がするのです。
特に週刊連載の作品の場合、どんな名作でもある程度は「ここでテコ入れしようとしたんだろうなぁ~」とか、「連載を引き延ばそうとしているんだろうなぁ~」とか・・とにかく特有の違和感が多少はあるものだと思うのです。
しかし、『金色のガッシュ!!』の場合はその違和感が全く無いのです。
もしかしたら、実際にはテコ入れやら何やらはあったのかもしれませんが、少なくとも僕には感じ取れませんでした。
週刊連載で30巻オーバーの作品でこれは非常に珍しいような気がします。
例えば、主人公の清麿・ガッシュペアは最初から最後までやさしい王様を目指していて、全ての重要な行動がその目標にのっとったものになっている。
決して最初から強かったわけではない清麿・ガッシュペアが積極的に戦うようになった理由。そして強くなっていった理由。どんな強敵が相手でも妥協しない理由。
その全ての根幹にコルルという魔物とやさしい王様というキーワードがある。
清麿・ガッシュペアが何に対して一番熱くなるのか。何をいちばん許せないと思うのか。そういう部分もよくよく考えたら常に一貫しています。
だからこそ、最初から最後までどのエピソードも心に響くのだと考えられます。
本記事では、そんな名作『金色のガッシュ!!』をこれまで全巻レビューしてきた内容をまとめていきたいと思います。(完全版ベースの巻数となります)
?
- 1巻(邂逅編)
- 2巻(邂逅編)
- 3巻(邂逅編)
- 4巻(邂逅編)
- 5巻(邂逅編~石板編)
- 6巻(石板編)
- 7巻(石板編)
- 8巻(石板編)
- 9巻(石板編~ファウード編)
- 10巻(ファウード編)
- 11巻(ファウード編)
- 12巻(ファウード編)
- 13巻(ファウード編)
- 14巻(ファウード編~クリア・ノート編)
- 15巻(クリア・ノート編)
- 16巻(クリア・ノート編)
1巻(邂逅編)
その天才性故に学校に馴染めずにいる高嶺清麿と、記憶喪失の少年ガッシュ・ベルの出会いが描かれます。
謎の赤い本の呪文を清麿が唱えたら口から電撃が出るガッシュ。
実はガッシュは魔物の王様を巡る戦いに参加する100人の魔物の内の1人であることが、非常に印象的な展開で明かされます。
また、最終巻までブレることの全くない清麿・ガッシュペアの目標もここで定まります。
(「金色のガッシュ!!」18話より)
望まない者の心をコントロールして強制的に戦わせる魔物の王様を巡る戦いに憤りを覚えたガッシュは、そんな強制的に戦わされていた上に自ら戦いからの退場、つまりは本の持ち主との別れを選んだコルルの望むやさしい王様を目指すことを決心します。
これは『金色のガッシュ!!』という作品において最も重要な出来事であり、清麿・ガッシュの行動原理、強くなる理由、そしてどんなにピンチでも心が折れない原動力になっています。
2巻(邂逅編)
メインヒロインであり、最初の清麿・ガッシュの仲間である魔物ティオと、その人間パートナーであるアイドルの大海恵が登場します。
本来、勝者が一人しかいない魔物の王様を巡る戦いにおいて仲間という概念は入り込む余地はありません。
実際、ティオははじめ自分を助けようとするガッシュのことすら敵と見做していたし、大海恵のコンサートを守るために共闘した後も、助けてくれはしたものの次は自分たちと戦う番なのだと覚悟を決めていました。
しかし、ガッシュの目標である「やさしい王様になること」は目的の根本ではなく、本当の目的である「やさしい王様のいる魔界を作ること」の手段でしかないのだと思います。
もちろん、ガッシュは自分がやさしい王様になれるように頑張っていくことになるのですが、あくまでも「やさしい王様のいる魔界を作ること」が目的であるガッシュにとって、勝ち残った暁にはやさしい王様になってくれそうなティオは倒すべき敵にはなり得なかったわけです。
(「金色のガッシュ!!」38話より)
表面的には仲間という概念を排した戦いにおいて、勝利ではなく勝利の先にあるものを目標とさせることで仲間という概念を入り込ませたのは素晴らしい発想ですよね。
3巻(邂逅編)
ガッシュに似た魔物と、第四の術バオウ・ザケルガというファウード編への布石が散りばめ始められます。
ファウード編というのは、石板編という大きなエピソードを挟んで次の大きなエピソードですが、かなりの大作でありながら作品序盤から終盤への布石が打たれるのは凄いと思います。
(「金色のガッシュ!!」47話より)
過去のエピソードから伏線になり得る箇所を見つけてきてあたかも最初から伏線であったかのように描く手法は『バクマン』でも語られていたところですが、恐らく『金色のガッシュ!!』の場合は違っていて、最初からストーリーの骨子が決まっていたのでは無いかと思われます。
一度通して読んだ後に、再読するとそういう部分に気付かされることが多い作品です。
4巻(邂逅編)
本来、仲間という概念が排されているはずの魔物の王様を巡る戦い。
しかし、中盤以降は仲間と共闘することが当たり前になっていきます。
「やさしい王様になること」ではなく「やさしい王様のいる魔界を作ること」を目指すことを清麿・ガッシュの目標としたことで、同じ志の仲間の存在を自然に許容しているわけですね。
(「金色のガッシュ!!」69話より)
大海恵・ティオペアとの共闘。
これが『金色のガッシュ!!』の作中で最初の共闘らしい共闘だと思います。
大海恵とティオはヒロイン枠のキャラクターですが、ヒロインらしい可愛らしさがあるのと同時に、格好良いところもあると思わされるエピソードとなります。
5巻(邂逅編~石板編)
いよいよ最初の大きなエピソードである石板編に足を踏み入れ始めます。
ちなみに、石板編についての布石もまた邂逅編の節々で打たれていたので、どこからが石板編なのかは難しいところですが、ナゾナゾ博士の登場からが石板編だと思っています。
(「金色のガッシュ!!」92話より)
石板編に先立ち、今までになかった強敵グスタフ・バリーペアとの戦いでは、やさしい王様に対するガッシュの思いを再認識させられます。
やさしい王様以外の王を目指すつもりはないという決意めいたガッシュのセリフが痺れます。
一方で、このグスタフ・バリーペアとの戦いは『金色のガッシュ!!』の中でも初めて清麿・ガッシュペアが敗北らしい敗北をした戦いでもあり、ガッシュにもっと強くなりたいと思わさせるキッカケにもなっています。
石板編を前にして、目標の再認識、初めての敗北と成長への意欲の発露。そして、ナゾナゾ博士・キッドとの戦いを経ての成長。
なんというか、石板編に突入していく流れが素晴らしいと思います。
6巻(石板編)
清麿・ガッシュの行動原理の根幹のほとんどはコルルとの戦いにあります。
コルルは望まぬ戦いを強いられていた魔物で、そんな戦いを強いることのないやさしい王様のいる魔界を作りたい。
そして、石板編のラスボスであるゾフィスは、他の魔物に戦いを強いるために心を操るという、清麿・ガッシュの理念と完全に相反する考え方を持った魔物となります。
(「金色のガッシュ!!」106話より)
考えてみれば、清麿・ガッシュは、巻き込まれこそしているものの積極的にゾフィスと敵対する理由はそこまで大きくなかったような気がします。
実際、ゾフィスはどちらかといえば、シェリー・ブラゴの敵として描かれている魔物となります。
しかし、やさしい王様を目指す清麿・ガッシュにとっても無視できる相手ではなかったという構図が面白いです。
7巻(石板編)
石板編も佳境になってきていますが、清麿・ガッシュの仲間となる人間・魔物ペアと当たり前のように共闘できているのが印象的です。
(「金色のガッシュ!!」125話より)
なにより、清麿がティオにガッシュの赤い本を託したという事実が仲間という存在を強調しています。
魔物の本は、魔物の王様を巡る戦いにおいての命のようなもので、それを託すということは絶対の信頼の証となります。
そして、何が何でもそれに応えようと奮闘するティオ。
仲間という概念が排されているはずの戦いにおいての本当の仲間の存在が示されるのと同時に、守る力に特化したティオの格好良さが前面に押し出されています。
8巻(石板編)
石板編も佳境に差し掛かっていますが、ガッシュに片思いしているのにちょっとしたすれ違いから清麿・ガッシュたちに敵対していたパティと和解するシーンが非常に感動的なものになっています。
石板編で清麿・ガッシュたちに敵対していたということ、即ち清麿・ガッシュたちが最も許せない人や魔物の心を弄ぶゾフィスの片棒を担いでいたということになります。
つまり、清麿とガッシュはパティに対して何度か大きな怒りをぶつけていたりするのですが、その内徐々にパティに罪悪感のようなものが芽生えていき、最後にはゾフィスから寝返り清麿・ガッシュに味方をすることになります。
(「金色のガッシュ!!」153話より)
反省からくる自己犠牲を前提とした戦いぶりにパティの本は燃えてしまうのですが、消える直前にも相棒だったビョンコが魔界で仲間外れにされないようにと心配しています。
何だかんだ根は良い魔物だったのでしょうね。
実のところ、パティのような自己中心的な性質のキャラクターはあまり好きではないのですが、それなのに『金色のガッシュ!!』の中でも有数の名シーンだと思わされるくらいにパティの最後は感動的でした。
9巻(石板編~ファウード編)
石板編の決着は、考えてみれば少年漫画のエピソードのラストとしてはかなり独特なものだったかもしれません。
主人公である清麿・ガッシュではなく、シェリー・ブラゴというライバルキャラがラスボスであるゾフィスを倒しているというのは、かなり珍しい展開です。
しかし、ガッシュとは違った方向性で良き王の風格を備えつつあるブラゴというライバルキャラの成長がここで描かれているのは、『金色のガッシュ!!』という作品全体で見た時に凄く良かったような気がします。
(「金色のガッシュ!!」162話より)
仇敵であったゾフィスをブラゴのおかげで倒し、友人ココを助けることができたシェリーは改めてブラゴを王とすることを決意し、一方で清麿・ガッシュたちも同じような決意を示しているのが印象的です。
10巻(ファウード編)
巨大な魔界の建造物の登場。そして、その正体が巨大な魔物であることが明らかとなり、最初から絶体絶命感の強いファウード編。
清麿・ガッシュの仲間であったリィエン・ウォンレイもリオウの呪いの影響で敵対することになり、清麿・ガッシュが救いたいものを全て救うのは非常に困難な状況になっています。
いわゆる究極の二択のような選択を強いられることになるガッシュですが・・
(「金色のガッシュ!!」198話より)
結果的にガッシュはその両方を選択します。
しかも、それは気迫だけの根拠のない選択ではなく、どうすれば両方を選べるかを考え抜いた上で、仲間たちの助力を乞いつつ行った選択です。
もともとガッシュは、特にやさしい王様を彷彿とさせるシーンでは王らしい風格を示していることがありましたが、この選択以降はその辺がより顕著になっていくような気がします。
11巻(ファウード編)
『金色のガッシュ!!』の主人公である高嶺清麿は、実はかなりの長期間戦線離脱しています。
ファウード編では、今まで以上に天才少年らしさを発揮する活躍を見せていましたが、リオウとの戦いでは自己犠牲を前提としたような戦い方で、命の危機に陥ることになります。
(「金色のガッシュ!!」214話より)
実は命を落としかねないほどの危機に陥ったことのあるキャラクターは、恐らく清麿だけなのではないかと思います。
そして、清麿の危機にキレたガッシュは今までにない大きな変化を見せるのですが・・
これが清麿復活後の躍進の重要な伏線になっています。
12巻(ファウード編)
清麿不在の中、人間パートナーがいないので自分は戦えずにもどかしい状況のガッシュですが、それ故他の魔物の活躍が目立ちます。
ガッシュの友人のテッドや、ガッシュに大きな敗北を与えたバリー。
ガッシュに味方をする魔物が次々とファウードに乗り込んできますが、何より印象的なのはテッドの探していた女の魔物チェリッシュ。
チェリッシュはもともと人間パートナーがリオウの呪いに当てられていたことから清麿・ガッシュとは敵対する立場で、ゼオンがファウードを支配し始めてからもゼオンに怯えてガッシュたちに敵対していました。
(「金色のガッシュ!!」235話より)
しかし、テッドに触発されてゼオンの雷を克服するチェリッシュは・・
いや、実は完全に克服できているわけではないからこそ気丈な姿が格好良かったと思います。
13巻(ファウード編)
何より印象に残っているのは清麿の復活。そして大きく力を増しているガッシュの活躍なのは間違いありません。
しかし、清麿不在でガッシュが戦えない中、他の仲間たちの奮闘もかなりの見所だと思います。
(「金色のガッシュ!!」247話より)
個人的には、特にティオの頑張りに胸が熱くなりました。
ティオの能力は守ること。
防御に特化した力は、『金色のガッシュ!!』の主人公サイドの思想ととてもマッチしているような気がしますが、だからこそ最も守る力に特化したティオが格好良く見えますね。
14巻(ファウード編~クリア・ノート編)
その戦いと決着こそが『金色のガッシュ!!』の中で最高のカードだったと思っている人は多いのではないでしょうか?
少なくとも僕はそう思っていて、特にゼオンが消えて魔界に帰る直前のやり取りは、もしかしたらコルルの本が燃えたシーンに匹敵するほど感動的に思えました。
(「金色のガッシュ!!」273話より)
この決着に至るまでのゼオンの少しずつの変化を気にしながら読んでみて欲しいところです。
消える直前に、途中から敗北すら望み始めていたことをゼオンは語っていますが、その結末が分かっている上で改めて読んだらその変化が非常に興味深く思えるはずです。
15巻(クリア・ノート編)
全ての魔物を消し去ろうと考えているクリア・ノート。
ゾフィスのような人間や魔物の心を弄ぶ魔物や、ゼオンのような野心家が可愛く思えるほど闇の深い思想を持った魔物です。
魔物の王様を巡る戦いの敗北は、基本的には魔界への期間を意味するだけで死ぬわけではありませんでした。
しかし、クリア・ノートの野望が達成されることは他の魔物の死を意味します。
だからなのか、ティオやアースのような精神的に強いと思われた魔物ですら今回は非常に怯えている様子があります。
そんな中、誰よりも気丈に使命感に燃える・・いや、むしろ冷静ですらあるガッシュが印象的ですね。
ファウード編でも重要な選択はガッシュに迫られていましたし、他の仲間たちも既にガッシュこそが魔界の王様に相応しいと感じているのではないかと思われます。
だからこそティオはガッシュに不安をぶつけたのかもしれませんね。
16巻(クリア・ノート編)
最初から清麿・ガッシュのライバル的なキャラクターとして描かれていたシェリー・ブラゴですが、恐らく最後はこの2組の戦いになるのであろうことは多くの人が予想していたことではあると思います。
しかし、だからこそまさかその前にこの2組の共闘が描かれるとは思いもよりませんでしたね。
(「金色のガッシュ!!」319話より)
清麿・ガッシュとシェリー・ブラゴという最強のタッグをもってしても敵わなかったクリア・ノートですが、最後に現れた金色の本の能力が素晴らしいですね。
ある意味ではご都合主義の展開とも言えるのかもしれませんが、今までガッシュが貫き通してきたものの証のように思えます。
実は、連載時には「えっ、こんな展開になっちゃうの?」とモヤっとした覚えがあるのですが、最初から最後まで一気に通して読んだ時にこそ非常に感動的に思える展開なのではないかと思います。