『ラブひな(1)』現代お約束ラブコメの原点とも言える作品の感想(ネタバレ注意)
ラブコメときいて皆さんはどの作品を真っ先に思い浮かべますか?
僕は本記事で紹介する『ラブひな』を真っ先に思い浮かべます。
本記事のタイトルに「現代お約束ラブコメの原点とも言える作品」と題するくらいには、ラブコメというジャンルがイコール『ラブひな』だとすぐに結びつきます。
しかし、一方で『ラブひな』のような作品はもっと昔からもあったのも事実。
それが分かっていながら、何故ここで「原点」とまで言っているのか?
それは、『ラブひな』が古今東西のラブコメのお約束をこれでもかというほど詰め込んだ作品になっており、しかもそれが『ラブひな』以降のラブコメ作品に間違いなく大きな影響を与えているような気がするからです。
近年でいえば『ゆらぎ荘の幽奈さん』なんてモロに『ラブひな』の影響を受けていますよね。
いわゆる記号的なお約束の存在を分かりやすく示したラブコメの教科書的な作品。それが『ラブひな』だと思うのです。
どうしてここまで教科書的なのか?
それは、恐らく作者の赤松健先生が何をどう描けば面白いのかを計算しながら書いているタイプの漫画家だからなのだと思います。
同作者の別の代表作『魔法先生ネギま』なんて、その辺が更に顕著ですよね。
実は、男主人公1人に対して何人ものヒロインの登場するラブコメ作品はジャンル的にそこまで好きな方ではないのですが、『ラブひな』は非常に完成度の高い作品になっていて、何度も読み返すほど好きだったりします。
さて、前書きが長くなりましたが今回は、この『ラブひな』という作品を全巻レビューしていきたいと思います。
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本作の概要
浦島景太郎は幼馴染の女の子と幼い頃にした「一緒に東大に行く」という約束を胸に東大のみを受験し続け二浪している受験生。
そして、家を追い出されて祖母が経営する温泉旅館ひなた荘にやってきたのですが、そこは旅館から女子寮へと変わっていました。
女子寮に若い男なんて認められるわけもなく、住人達から浦島景太郎が住むことを猛反対されることになるのですが、祖母から浦島景太郎にひなた荘が譲られることになり、浦島景太郎はひなた荘に管理人として住むことになりました。
本作の見所
やくそくの女の子
「大きくなったらふたりで、いっしょにトーダイ行こーね♡」
言わずと知れた東京大学。
学年で一番賢いレベルの人でも合格が難しい日本の最高学府。
もの凄く賢い秀才ならまだしも、普通であれば幼い子供の口約束程度で目指すような大学ではありません。
まったくもって冗談ではありません。(笑)
しかし、『ラブひな』はそんな理由で東京大学を目指す受験生の物語となります。
温泉付きの女子寮で主人公がちょっとエッチなハプニングに遭うようなハーレムものとしての色が非常に強い作品ですが、作品の根本は東京大学に行くという約束にこそあります。
ハッキリ言って主人公の浦島景太郎は、お世辞にも優秀な学生ではありませんし、だからといって勤勉でもありません。
しかし、それが東京大学に行くという約束を胸に受験戦争を乗り越えていき、徐々に精神的にも男としても成長していく。
そんなところに面白さがある作品なのだと思います。
女子寮と誤解
『ラブひな』は非常に分かりやすいお約束をこれでもかというほど詰め込んだハーレム系ラブコメとなります。
メインヒロインである成瀬河なるとの出会いも、温泉での一糸まとわぬ出会いでした。
そこから立て続けにひなた荘の住人たちと遭遇し、次々とラブコメ的お約束展開を繰り返す浦島景太郎は、最初のぞきなのか痴漢なのか、とにかくそういう扱いをされてしまいます。
注意していれば回避できたはずの事故で、それを回避できない所がTheラブコメの主人公といった感じです。(笑)
とはいえ、それは事故とはいえ誤解とは言えないでしょう。
浦島景太郎への誤解は、そんなラブコメ的お約束の部分ではありません。
「あんた確か今ー東大生だもんね」
浦島景太郎の叔母である浦島はるかの勘違い。
浦島景太郎は実際には東大生ではなく、東大を目指して二浪している受験生。
しかし、浦島景太郎が東大生だと聞いたひなた荘の住人の態度は豹変します。
東大生だと勘違いされチヤホヤされ、徐々に引くに引けない状況になっていく。
付くつもりの無かった嘘。しかし誤解は広がっていく。
これもまたラブコメのお約束展開ですよね。
ひなた荘の住人達
成瀬川なる
『ラブひな』のメインヒロインの成瀬河なるは、ひなた荘にいる時は非常に可愛らしい美少女ですが、実は浦島景太郎と同じ予備校に通っていて、そこではいかにもガリ勉少女といった出で立ちだったりします。
まるで勉三さんのような眼鏡をかけていますしね。(笑)
そして、実際に模試で全国1位というとんでもない秀才でもあります。
「い、いるのかよ、そんな人間? そりゃどこかにいるだろーけど」
それを知った浦島景太郎は非常に驚くことになりますが、僕も同じ意見です。
そりゃどこかにいるだろーけどです。(笑)
しかし、こういう秀才の設定のキャラクターはどのような作品でも珍しくはありませんが、メインヒロインの設定としては珍しいような気がします。
その辺はやはり東京大学を目指す物語らしい部分ということになるのでしょうか?
「来年ホントに合格しちゃえばー東大。そしたらウソもウソじゃなくなるんじゃない? がんばれば必ずできる。諦めないでやってみなよ」
しかし、基本的には主人公である浦島景太郎よりも立場的にマウントを取っているラブコメヒロインらしいヒロインなのですが、時たま浦島景太郎を励ますようなシーンもあったり、突き放しているようでいて意外と浦島景太郎への理解も深いのは、同じ受験生だからなのかもしれませんね。
前原しのぶ
ひなた荘の最年少。強烈な性格の女子が多い中での癒し担当といった感じです。
「きっと一生かかっても入れないんだろうな、東大なんて・・」
東大生(だと勘違いされている)である浦島景太郎に対して憧れのようなものを抱いている少女で、だからこそ勉強が苦手な自分に自嘲気味になってしまうところもあったりします。
普通といえば普通の性格の少女ですが、ひなた荘の住人たちの中ではちょっと珍しい立ち位置だと思います。
また、そんな前原しのぶを励ますために浦島景太郎は誤解を嘘に変えてしまうことになるのですが、確かにひなた荘の住人たちの中では最も庇護欲を刺激されるキャラクターであることは間違いないと思います。
青山素子
男に対して免疫が無く、それ故に容赦もない性格の剣道少女です。
ラブコメに一人はいるスグに暴力に訴えるタイプの女子ですね。
あまり好きなタイプのキャラクターではありませんが、赤松健先生の描くこのタイプのキャラクターは結構好きだったりします。
なんというか、普段は攻撃的なのに時たま女性的な可愛らしさが前面に押し出されていることがあって、そのギャップが非常に良いと思いからです。
最初にネタバレになりますが、『ラブひな』においては登場するヒロインはみんな異性として浦島景太郎のことを好きになっていきます。
そして、以外にも一番最初にそういう感じを出してくるのがこの青山素子だというのが興味深かったりします。
1巻ラストのエピソードは、本当にただ熱があっただけなのか、それとも・・
カオラ・スゥ
『ラブひな』に登場するヒロインの中では一番謎めいている少女ですね。
1巻の時点で既に謎めいていますが、そのベールが脱げるどころかますます謎めいてくるちょっと特殊なキャラクターですね。
『ラブひな』のキャラクターの中で、女の子として可愛らしいと思うのは前原しのぶや青山素子ですが、漫画のキャラクターとしてはカオラ・スゥが一番好きだったりします。
しかし、よく分からない感じのキャラクターなのでどう好きなのかの説明は難しかったり。(笑)
というか、そういうよく分からない感じが魅力的だったりするわけなのですね。
好きな人は本当に好きになるタイプのキャラクターだと思います。
紺野みつね
なんでなんだろう。関西弁のキャラクターは好きなのに何故かあまり好きになれないキャラクターなんですよね。
まあ、ヒロイン枠のキャラクターだと言っても、どちらかといえばアドバイザー的な立ち位置のキャラクターで、あまりラブコメ的なエピソードの中心にならないからかもしれません。
そういえばアニメ版の中の人は伝説的な恋愛シミュレーションゲームのメインヒロインですけど。
浦島はるか
浦島景太郎の叔母ということでヒロイン枠のキャラクターではないかもしれませんが、叔母といってもまだ20代の非常に格好良い女性です。
1巻では浦島景太郎のことを最初に東大生だと勘違いして、ラブコメ的展開を作り出した原因になっていますね。(笑)
今後のネタバレにもなりますが、浦島景太郎の上位互換というか、師匠的な立ち位置になるキャラクターと男女の関係にあって、ある意味では第二のヒロインとも言えるキャラクターだったりします。
総括
いかがでしたでしょうか?
実は、僕は『ラブひな』を連載当時は読んでいませんでした。
連載当時の僕はちょうど中学生。作中の登場人物で言うと前原しのぶと同世代・・というか誕生日まで非常に近いです。
つまり、カオラ・スゥよりも年下だったわけです。
ハッキリ言えば思春期の少年真っ只中なわけです。
正直な話、ちょっとエッチなシーンも多かった『ラブひな』のハードルは高く、『ラブひな』を読んでいる同級生はちょっとからかわれる対象だったりしました。
そういうわけで僕が初めて『ラブひな』を呼んだのは大学生になった頃だったのですが、その時に意外と奥深い面白さに驚いた記憶があります。
サービスシーンと可愛い女の子だけが売りの漫画だと誤解していたからです。
1巻では非常に残念な主人公である浦島景太郎ですが、これが徐々に成長と、成長したかと思ったらやっぱり変わっていないというか、そういうことを繰り返していきます。
最後にどうなっているのかに注目してほしいですね。(次巻のレビューはこちら)