あるいは 迷った 困った

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『ラブひな(5)』現代お約束ラブコメの原点とも言える作品の感想(ネタバレ注意)

 

芝居がかったコメディが魅力の5巻です。(前巻のレビューはこちら

ラブひな』の連載当時、僕は中学生だったこともあってかなり刺激の強いラブコメだというイメージを持っていました。

だけど改めて読み返すと、確かに男子的に刺激の強いシーンも多いものの、それだけではない魅力に気付かされる作品でもあると思います。

それに、最近のラブコメは・・というかラブコメでなくともかなり過激な一般作品も多いですから、『ラブひな』くらいは健全なものですよね。(笑)

傷心旅行から帰ってきて、再出発する流れとなったかと思いきや、あまり勉強している様子はありませんが、そういう受験生っぽいエピソードはもうちょっと先。浪人生にとっても箸休め的な期間で、箸休め的なエピソードが満載となっています。

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本作の概要

どうやら東京大学の受験に向けて再出発したようですが、それが本格化してくるのはもう少し先で、今はもっとラブコメらしいエピソードが多めで受験生らしいエピソードは控えめになっています。

ブコメ的なドジから発生する結果、そして仲直り。

年少組でありながらキスに興味があるしのぶや、実は意外と出番の多い素子。

今まであまり目立った出番の無かったカオラ・スゥも、ミステリアスな姿を見せてくれます。

本作の見所

海の家

浜茶屋ひなた。浦島景太郎の祖母は、温泉旅館(今のひなた荘)だけではなく、海の家まで手広く経営していたようです。

そんな浜茶屋ひなたに、浦島景太郎はひなた荘の管理人として手伝いにやってきました。

そして、ひなた荘の面々も遊びに来ていて・・

海でのラブコメ的テンプレート展開を繰り広げています。

こういうお約束全開のところが『ラブひな』らしさのひとつですよね。

そして、ちょっと面白いのはしのぶが海で溺れたフリをするエピソード。

これは緊急事態だからと浦島景太郎がラブコメ主人公的に人工呼吸に迫られる状況にドギマギするところまではお約束ですが、ちゃんと軌道の確保をしたりと真面目な手順を踏んでキスっぽくならないところが面白かったです。

よく見かけるラブコメだと、「それのどこが人工呼吸なんだよ」とツッコミたくなるようなシーンになりがちなところをギャグにしてしまうところに『ラブひな』の個性を感じます。

お芝居

地元の子供達への祭りの出し物として、西遊記を演じるひなた荘の面々。

意外とラブコメ作品における演劇のエピソードって定番のひとつだと思いますが、学校の文化祭とか、そういう状況ではないのが少し珍しい感じでしょうか?

考えてみれば『ラブひな』の場合は、中学生、高校生、浪人生、フリーターと登場人物の年齢がバラバラですから、こういう形が妥当だったのかもしれません。

このエピソードの見所は、例えば成瀬川なるの演じる孫悟空のキレのある動きの描写とか、青山素子の演じる沙悟浄と瀬田記康の演じる牛魔王の戦闘シーンなど、ラブコメ漫画とは思えないくらいに西遊記のファンタジーの世界にマッチしている点です。

考えてみれば作者の赤松健先生は後に、ラブコメ要素はありつつもかなり王道的少年漫画に近い『魔法先生ネギま!』や『UQ HOLDER!』を描かれているわけで、この頃からそういう作品も描けるところが現れていたのかもしれません。

ファンタジー漫画かと思えるほどにハイクオリティの演劇を繰り広げているのに、時たま現実が見えるような構成が面白かったです。

喧嘩と仲直り

短期なのに意外とすぐに許してしまうのが成瀬川なるというヒロインですが、サラがキッカケで海の離れ小島から帰れなくなっていつの間にか仲直りしている流れは結構好きです。

「来年一緒に、合格できるといいよな」

そしてこの約束。

あまり意識していませんでしたが、実はこれ結構重要なシーンなのかもしれませんね。

なぜなら、東大に合格するという約束が『ラブひな』という作品においてひとつのテーマになっているからです。

成瀬川なるは約束の女の子ではない。

そんな事実(ネタバレすると実は事実ではない)が、前回の受験時には浦島景太郎に大きな精神的ダメージを与えていました。

しかし、今度の約束は記憶違いでも何でもなく事実です。

この約束が、やたらとメンタルが弱いけど、その分状況次第では精神的に無敵になりそうな浦島景太郎の力になっていくのかもしれません。

キスに興味があるしのぶ

ブコメっぽいけどラブコメっぽくないしのぶの人工呼吸のシーンがありましたが、その思い出が若干美化されてしのぶはキスに興味津々です。(笑)

中学生女子ってこんな感じなんでしょうか?

いや、そんなことは無いような気がします。

サクランボの枝を結べるとキスが上手いとかいう都市伝説を、年少組の女子たちで実践しているシーンは、色っぽいというよりは微笑ましいですね。

カオラ・スゥの発明品のせいで青山素子のファーストキスがギャグになってしまったところも面白いと思います。

鍛えなおす素子

高校一年生とは思えないくらいに凛々しい女の子。青山素子ですが、基本凛としているのに時折年相応に見える所が可愛らしいと思います。

「そのかわり剣の腕は俺と会った頃より少し落ちたかもね!!」

しかし、ナヨッとしているわりには年下の女の子にズバッとものを言う浦島景太郎に痛いところを突かれてしまいます。

僕も割と自分より年下に対しては、男女問わずからかい気味に接してしまうところがあるので浦島景太郎の気持ちも分からなくはありませんけど、強くあろうとするタイプの女子にこれは禁句ですよね。

ともあれ、これをキッカケにひなた荘を出て鍛えなおそうとする青山素子ですが、連れ戻そうとやって来たひなた荘の面々にいつの間にか流されてしまっています。

そのことに危機感を覚える青山素子ですが、個人的にはこういう自分の言動に影響を与える人間が側にたくさんいるということは幸せなことだと思うんですけど、どうなんでしょうか?

「だから二人で決めたんだよ。今年の受験は受験勉強も楽しくやろうって」

そして、浦島景太郎の受験に対するある意味では不真面目な、しかし真っ直ぐな考えを聞いて青山素子も何だか吹っ切れた様子になります。

なるのですが・・

晴れやかな表情で失敗したらかなり危なそうな技を浦島景太郎で試しているあたり、らしいといえばらしいところが戻ってきた感じがしますね。

ミステリアスなカオラ・スゥ

個人的に『ラブひな』で好きなキャラクターが誰かと聞かれたら、青山素子かカオラ・スゥでちょっと迷います。

しかし、意外と出番が少ないのに好きだということは、カオラ・スゥの方が好みに合っているのかなぁとも思っています。

そう、好きなんですけど如何せん出番が少ないんですよね。

月が赤く見えることは、現実にも稀に見かける現象ですが、そんな赤い月の夜にはちょっと大人っぽく・・というか完全に体も精神年齢も上がるミステリアスなところが良いですよね。

普段の年相応より幼く見える姿とのギャップが魅力です。

総括

いかがでしたでしょうか?

浦島景太郎のナヨッとした主人公っぷりも板についてきましたが、そんな浦島景太郎に最初は拒絶していたヒロインたちも相当馴染んできましたね。

ちなみに、僕はちょっとミステリアスなところのあるキャラクターが好きなので、『ラブひな』ではカオラ・スゥがかなり好きなんですけど、今巻のカオラ・スゥはかなり良かったですよね。

今はカオラ・スゥがストーリーの中心になることはあまりありませんが、終盤にそういうエピソードもあるので楽しみにしておきたいと思います。(次巻のレビューはまだ)