『ラブひな(7)』現代お約束ラブコメの原点とも言える作品の感想(ネタバレ注意)
ついに再受験が始まる7巻です。(前巻のレビューはこちら)
楽しく受験勉強するとはいっても、直前になってくるとさすがに受験に向けての対策が本格化してきます。
そこまで真剣な受験勉強をしたことのない僕としては身につまされる話ですが、今巻では受験勉強のために浦島景太郎や成瀬川なるが徹夜してまで勉強する姿が頻繁にみられる印象がありました。
そんな感じで受験一色かと思いきや、乙姫むつみのアパートが火事で焼けてしまい、和風茶房「日向」で住み込みバイトを始めることになったことにより、いよいよ乙姫むつみもレギュラーキャラ化してきました。
前巻に引き続きやくそくの女の子説がささやかれる乙姫むつみのエピソードも満載の内容になっています。
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本作の概要
今巻は乙姫むつみが絡んだドタバタラブコメと、東大再受験に向けた勉強が本格化していよいよ試験が始まるところまでのエピソードの二本柱になります。
どうやら勉強の調子が良いらしい浦島景太郎の受験が、果たして嬉しい結果に結びつくのかが見所だとはおもうのですが、なかなかとんでもないシーンで終わることになります。
本作の見所
両手に花のクリスマス
どちらかを選べというのは古典的なラブコメのワンシーンのひとつという感じがしますが、そういうお約束を余すことなくやってくるのが『ラブひな』という作品なのだと思います。
「と・・とにかく!! 今日は!! この手だけは絶対死んでも話したくないんだーっ!!!」
まあ、こういうのって大抵は主人公が悩みに悩んでどちらかを選ぶシーンですが、最後の最後まで選びきれないのが浦島景太郎の浦島景太郎らしいところですよね。(笑)
「ひなた荘に着くまでに・・。左か右、好きな方の手を選んで、景太郎の気持ち教えてちょうだい・・」
乙姫むつみは分かりませんが、成瀬川なるが両手に花の片方になっているのは1巻時点のことを思えば、浦島景太郎との関係も随分と進歩している気がします。
漫画の単行本7冊は多いようで少ないですが、あまり進展の無いような2人に見えて、実はかなり変化しているというのが面白いと思います。
乙姫むつみのドタバタラブコメ
乙姫むつみの出現がキッカケなのか、成瀬川なるの変化が目に見えて分かりやすくなってきたような気もしますが、そんな成瀬川なるのお株(?)を奪う形での乙姫むつみのドタバタラブコメのシーンが多いような印象がありました。
ラブコメヒロインといえば主人公に厳しい印象がありますが、そういう意味で乙姫むつみは本当におっとりとしていてあまりラブコメヒロインっぽくはありません。
しかし、だからこそ乙姫むつみと浦島景太郎がドタバタラブコメしているシーンは何だか新鮮に感じられるような気がします。
「そろそろ追い込みですねえ、なるさん、浦島君♡」
成瀬川なるも、浦島景太郎も最後の追い込みで勉強に疲れて満身創痍の状態なのに、何だか元気な乙姫むつみ。このおっとりした様子は虚弱体質という前評判とは裏腹なものですが、何だか納得してしまうところがあって面白いです。(笑)
「浦島くん、こんな時にアレなんですけど・・。今日デートしません?」
おっとりしているだけではなく、その内心が読みづらい天然系でもある乙姫むつみ。
恐らく浦島景太郎と成瀬川なるの関係性と好意をある程度性格に読み取っている様子で、それを微笑ましく見守っている風でもあるのに、何故かそれに一石を投じるような言動も多い。
ともあれ、この乙姫むつみこそがこの時点での『ラブひな』における謎のカギを握ったキーパーソンであることは間違いありませんね。
ちなみに、この乙姫むつみが浦島景太郎を誘ったデートのエピソードでは、ちょっとストーカーじみた珍しい成瀬川なるが見られます。
勝手に落ち込む浦島景太郎
この辺は様式美でしょうか。
昨年度の受験でもセンター試験後に勝手に足切りされたと落ち込んでいた浦島景太郎は、実はなんとか二次試験に進めることができていました。
これは勝手に足切りラインを勘違いしていたことが原因ですね。
そして、今年度も持ち前の本番の弱さを発揮し試験中に頭が真っ白になってしまったようです。
2日目の試験を受けるかどうかを悩むほどの出来に悪さだったようですが・・
自己採点してみると何故か結構な高得点が取れているというのが浦島景太郎らしいところですよね。(笑)
マークシート形式のテストって、確かに回答さえしていたら赤点レベルの極端に悪い点数は取ろうとする方が難しいくらいですが、だからといって高得点が取りやすいわけではないはずです。
純粋な知識が問われがちなので、ちゃんと勉強しているのかどうかが如実に表れるはずで、逆に言えば頭が真っ白になっても今までの努力が表れやすかったのかもしれませんね。
バレンタインデー
浦島景太郎は女子寮の管理人。今では住人との関係もかなり良好で、それでなんでまたダミーチョコを作ろうとするのか。(笑)
成瀬川なるにもツッコミを入れられてしまっていますが、実際にみんな浦島景太郎にチョコレートをあげていましたね。
ですが、このエピソードの面白いところは昨年に続いてのお約束が続けられているということ・・それだけではありません。
「実は彼氏がいないって思われるのもアレなので毎年ダミーで本命チョコ作ってたらいつの間にかうまくなってしまって・・」
誰かと同じようなチョコ作りが上手くなった理由。それは浦島景太郎と似たところが多いということに定評のある乙姫むつみですね。(笑)
あまり恥ずかしげもない様子なのがらしいといえばらしいです。
やくそくの女の子・・ではない?
さて、前巻のラストで乙姫むつみが浦島景太郎のやくそくの女の子である可能性が示唆されて、今巻はその前提で読んでいた人も多いはずです。
乙姫むつみの反応もまさにそういう感じでしたし、今巻で成瀬川なる以上に乙姫むつみが目立っている印象があった背景には、そういう前提があったからだと思われます。
しかし・・
「ーそれ、私じゃないですよ♡ だって私が約束した相手って女の子なんですもの♡」
もっとも事実を把握している様子の乙姫むつみ自身がそれを否定します。
答えを持っていそうなのに、間が悪くてなかなか正解までは言わない乙姫むつみ。
ですが、乙姫むつみの発言により再び成瀬川なるがやくそくの女の子である可能性が浮上します。
なぜなら、乙姫むつみが約束した女の子とは、浦島景太郎の初恋の女の子と同一人物で、浦島景太郎との約束は小さすぎて覚えていなかったから乙姫むつみが改めて約束したという過去が語られたからです。
以前に成瀬川なるがやくそくの女の子ではないと否定された理由は、時期的に若干2歳だった成瀬川なるが約束できるわけがないというものでしたが、乙姫むつみが語った過去はそれでも成瀬川なるが約束していた可能性を示唆していますね。
というか、ほとんどこれ以外の答えはないだろうという感じですが、その答え合わせは受験と同じく先に持ち越されるようです。(笑)
総括
いかがでしたでしょうか?
いよいよ東大再受験・・ですが、テスト中に夢の世界に行ってしまって最後にかつてない絶望的な表情を浮かべることになった浦島景太郎。
その結果どうなるのかが次巻以降の見所ですね。(次巻のレビューはこちら)