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『魔女の旅々(1)』多様な出会いと別れのコミカライズ版の感想(ネタバレ注意)

 

魔女の旅々の原作小説は以前から気になっていたのですが、既にかなり巻数が進んでいることもあってなかなか手を出せていませんでした。

そういうわけで今回のコミカライズ版の発売で初めて魔女の旅々という物語に触れてみたわけなのですが、結論から言えば多様な出会いと別れが描かれていている良作だと思いました。

ファンタジー系の作品で主人公が魔法使いとくれば、モンスターやダンジョンが出てくる冒険もののイメージが強いですが、魔女の旅々はそういうのとは少々雰囲気が違っています。

冒険的な要素もあるのですが、どちらかといえば人との出会いと別れを重視した、例えばキノの旅を思いださせるような作品だったと思います。

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本作の概要

魔導士、魔女見習いの上位である魔女であり、『灰の魔女』と呼ばれる主人公イレイナは、これといった目的もなく各国を旅します。

そんなイレイナの出会いと別れの物語。

魔法使いの国では弟子ができたり、、物価の高い国では若き王に相談を持ち掛けられたり・・

そして、イレイナのルーツとなる魔女見習い時代も描かれています。

本作の見所

イレイナの夢

「私、大きくなったらニケみたいに冒険するっ!」

作者の実体験を元に世界中が描かれた冒険譚に、自分もそんな冒険をしてみたいと思ったのがイレイナの旅の動機です。

原作ではどのようになっているのかわかりませんが、どうやらコミカライズ版1巻では最初に旅の動機を描き、ラストで旅の始まりまでのルーツを描くような構成になっているようです。

この手の旅系ファンタジーでいきなり主人公の旅の始まりが描かれるのは意外と珍しい気がしますが、主人公の行動動機を謎っぽく描かないスタイルも、それはそれでゆるい感じがして好きかもしれません。

魔法使いの国

タイトルに『魔女』という単語が含まれる作品に相応しく、最初のエピソードは主人公イレイナが魔法使いの国を訪れるというエピソードになります。

同時に、本作品の世界観において『魔女』が魔法使いの中でも最上位の存在であることが明らかにされ、『灰の魔女』と呼ばれるイレイナもどうやら凄いヤツだということが分かるようになっています。

とはいえ、最近のファンタジー作品にありがちなチート能力者というわけではなく、あくまでも才能のある人間の範疇のキャラクターっぽいですね。

しかし、魔法使いの国において『魔女』であれば歓迎されるはずだと思いきや、どうやら様子がおかしい。

「ううーん? なんでしょう。私、魔女様なのにさっきから何かと小娘だと侮られているような・・」

侮ってきた相手を小悪党だと結論付けて何とか納得してみたようですが・・

「魔女様のブローチが無いですよ?」

魔女の証であるブローチを紛失してしまっていたようです。

だから誰もイレイナを『魔女』様だとは思わなかったわけですね。

「なぜ今まで気づかなかったのでしょうか。私は馬鹿なのでしょうか?」

大事にしていたものの紛失にショックを隠し切れないイレイナですが、ブローチが見つかるまでという期限付きで宿屋の少女サヤに魔法を教えることになりました。

ブローチの行方

「返してもらえますか? 私のブローチ」

ブローチはイレイナが魔法を教えることになったサヤが持っていました。

妹に先を越された寂しさを紛らすために誰かと一緒にいたかったというのがその動機で、ブローチを手にしたのも事故だったのでサヤが悪人というわけではないのですが、つい魔が差したというやつでしょうか?

「どこかでずっと疑っていた。そして待っていました。あなたが私にブローチを返してくれることを」

イレイナはサヤに魔法を教えることになりましたが、徐々にサヤの実力に違和感を覚えるようになります。

魔法使いの国にいるにしてはサヤの実力が低すぎたのが根拠で、サヤがわざと魔法を下手なふりをしていると思ったわけですね。

だけどイレイナ。目撃者のおばちゃんにお金を払って聞くまでは確信していなかったっぽいのにその言い方は格好良すぎやしないか?(笑)

「本気で何かを成し遂げる時、人はいつだって一人です。一人でなければダメなんですよ」

こういう地味に良いセリフが飛び出すのも良い感じですね。

嘘つきの顔

旅人にとって旅の資金は大事なものですが、国王によって大量に硬貨が偽造された国では物価が高騰していてイレイナは貧しい思いをすることになってしまいます。

「今回ばかりは私も三倍の値段で商売させて頂きましょう」

そういうわけで、ちょっと悪い顔をしたイレイナは妖しい占い業を始めてお金を稼ぐのですが、それが評判となって国王に呼び出されることになってしまいました。

「この国の未来を占ってほしい」

そして、どうやらその若さもあって騙されてしまっているようですが、愚王というわけではないようで、経済の活性化のために作った硬貨が国にもたらす影響を気にしているようです。

いやはや、利己的で馬鹿なおっちゃんの王様を思い浮かべちゃってたけど、違ったよスマン。(笑)

「ただ、今回ばかりは分からないんだ。彼を疑いたくはないけれど、これが未来の繁栄に繋がるようには思えない」

悪い奴や馬鹿な奴がでてきそうな流れで、実は違ったって展開も嫌いじゃないですよ~

「突然破れた天井から天使のように舞い降りた灰髪の美少女。その正体は・・そう私です」

そして、若き国王を騙そうとする親子の元に現れたイレイナですが、このモノローグ・・自分で天使のようだとか灰髪の美少女だとか言っている所が痛々しくも面白いですね。(笑)

なんだかコミカルな意味でキャラクターに合っているような気はします。

「しかし残念だな。まさか彼が僕に嘘をつき続けていたなんて」

信じていた親子に裏切られ、怒り心頭というよりは悲しそうな国王。

「おや国王様。嘘つきというものは、いつだって平然とした顔をしているものですよ」

それに対するイレイナのセリフがなるほどって感じですね。

確かに、ポーカーフェイスを保とうとする嘘つきは、時には正直者以上に正直者らしかったりするものですしね。

イレイナの我慢

最年少で魔女見習いになった過去のイレイナは、あまりにも簡単すぎて達成感を感じることがありませんでした。

失敗を知らない天才少女イレイナを心配した両親は、星屑の魔女に頼んでイレイナに思い通りにならないこともあることを教えようとします。

しかし、生意気なだけではない。既に『魔女』になる資質を持っている上に努力家でもあるイレイナを見て、イレイナの問題点は理不尽なことに対しても耐えようとしてしまうところにあると星屑の魔女は見抜きました。

それで星屑の魔女はイレイナが我慢の限界を迎えるような試練を課していくのですが・・

相手は14歳の女の子。まさかの泣かせてしまうという結果になってしまいました。

「イレイナ。我慢強いのは決して悪いことではありません。でも我慢ばかりしていては駄目ですよ。気に食わないことがあれば戦えるようになりなさい」

それが自分自身を守ることになると星屑の魔女はイレイナに教えます。

始めて師匠から教わったことが、魔法の技術やそういうことではなく、こういう精神的なことだってことなのが何だか良い感じですよね。

そして、ついに星屑の魔女から魔女として認められ、『灰の魔女』と名付けられたイレイナ。

実は他国の偉い魔女である師匠とも別れることになりましたが、その時に涙を我慢しなかったというのが、師匠の教えの通りになっているのが感慨深いシーンです。

総括

いかがでしたでしょうか?

もっとゆっくりとした作品を想像していたのですが、思っていた以上にエピソードごとの個性が強く、主人公のイレイナも魅力的な味を出したキャラクターだと感じました。

積読がとどまることを知らない僕にとっては原作を今から読んでいくのは少々ハードルが高いのですが、いつかは読んでみたいものです。

ひとまずはコミカライズ版。絵の方も描き込みが丁寧で良い感じなので、コミカライズ版で読んでいきたいと思います。