『MoMo -the blood taker-(1)』作風はガラリと変わったけど魅力的な漫画の感想(ネタバレ注意)
杉戸アキラ先生といえば『ボクガール』を描かれている漫画家さんですね。
僕は序盤しか読んだことが無いのですが、女性的な男子が体まで本当に女性になってしまうというSF要素のあるちょっと変わったラブコメという印象でした。
対して最新作の『MoMo -the blood taker-』は、吸血鬼による怪事件を描いたミステリーというか伝奇的な作品になっていて、前作とは作風・・というかジャンル自体がガラリと変わった印象の漫画になっています。
というか最初『ボクガール』の作者が描いている最新作だと気付きませんでした。(笑)
特定のジャンルを得意とされている漫画家さんも多いですが、こうして違った雰囲気の作品を描くことで新たなファンを獲得していく漫画家さんも最近は結構多いですよね?
実際、『ボクガール』があまり肌に合わずに1巻くらいしか読んでいない僕が、『MoMo -the blood taker-』のファンにはなってしまいましたからね。
こういうケースでもっとも極端な例だと思われる『猫神やおよろず』や『ダーウィンズゲーム』のFLIPFLOPs先生の作風の変化が思い出されます。
猟奇的な怪事件と吸血鬼モモの可愛らしさはアンマッチに感じられるのに、それでいて違和感を感じさせないバランス感覚が良いですね。
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本作の概要
バラバラに切断され、全身の血液が抜かれた猟奇的な死体が見つかる猟奇的な怪事件。
その犯行手口になぞらえて犯人は「V」と呼ばれています。
吸血鬼(Vampire)というわけですね。
そして、本作品の主人公である御子神京吾はそんな事件を担当する刑事となります。
いるはずのない吸血鬼ですが、実際に奥さんを二つの顔を持つ吸血鬼に殺害された御子神京吾はその存在を知っていて、長い期間を掛けて対策してきていました。
しかし、そうやって御子神京吾が対策しようとすることすら二つの顔を持つ吸血鬼の掌の上で、御子神京吾はピンチに陥ってしまいます。
そんな御子神京吾を助けたのは見た目幼い少女でした。
本作の見所
怪事件の捜査
同作者の前作『ボクガール』の雰囲気をイメージして読むとかなりビックリしそうな導入から『MoMo -the blood taker-』は始まります。
バラバラに切断され、全身の血液が抜き取られ、絡み合うように食卓に並べられた猟奇的な死体。
新人刑事の中宮が吐いてしまうのも頷けますね。
そして、ワイングラスのワインからはルミノール反応があって・・
まるで吸血鬼を彷彿とさせるような犯行手口。
そういうわけで犯人は吸血鬼(Vampire)のイニシャルを取って「V」と呼ばれています。
前作『ボクガール』とは違う猟奇的で伝奇的なミステリーサスペンスですね。
一応『MoMo -the blood taker-』という作品の世界観的には吸血鬼なんて伝奇的な怪物は存在しないという現実と同じ世界観なわけですが・・
「バカげた話かと思われるでしょうけど、今のままの捜査方針では、俺は・・犯人にたどり着かないと思ってます」
しかし、新人刑事の中宮は、吸血鬼を彷彿とさせる数々の根拠だけではなく、あまりにも猟奇的な現場を見て人間が犯人であるわけが無いという想いもあり、吸血鬼の存在を示唆します。
「つらいよ。いるはずのないモノを探すのは」
それに対するのは上司の御子神京吾。
元捜査一課の刑事でありながら、駄目なオッサン扱いされてしまうところもある警部補ですが、中宮を諭す言葉には妙に実感がこもっていますね。
「君は、僕のようにはなっちゃいけないんだよ」
明らかに何かを知っている御子神京吾が気になるところですね。
一見すると駄目なオッサンだけど、どこか陰のある部分もある。
こういうの結構格好良いって思ってしまいます。
御子神京吾の過去
御子神京吾の奥さんは10年前に首を切断されて殺害されました。
血が全部吸われてしまっているのは、怪事件の被害者と同じですね。
そして、その現場にいたのは二つの顔がある吸血鬼で、御子神京吾もその吸血鬼と対面しています。
「あいつだけは、俺の手で」
つまり、御子神京吾だけは吸血鬼の存在を信じるも何も最初から「知っていた」わけですね。
「あんなものを追いかけるのは俺ひとりで十分なんだよ」
吸血鬼を追いかけている時の御子神京吾は、駄目なオッサンっぽい雰囲気ではなく一人で重荷を背負い込んだ男って感じで格好良いですね。
吸血鬼を察知する道具のようなものも手に入れていたりして、一人で吸血鬼を退治しようと動いています。
そして、人間でありながら吸血鬼を実際に退治したりできていたのですが・・
その現場で因縁の二つの顔を持つ吸血鬼と再会します。
二つの顔を持つ吸血鬼
「ちょうど彼女が死んで10年目になる。待ったかいがあったよ。君を見てると今日は素晴らしい日になりそうだ」
御子神京吾からしてみれば念願の再会という感じですが、二つの顔を持つ吸血鬼の様子を見ると、どうやら御子神京吾の行動のすべてが掌の上だったという感じっぽいですね。
御子神京吾が退治していた吸血鬼はモロイという吸血鬼のなりそこないで、そんな雑魚を退治させることで御子神京吾に自分でも吸血鬼を退治できると勘違いさせる。
その行動の目的は不明ですが、二つの顔を持つ吸血鬼は今まで泳がせていた御子神京吾をここで殺そうとしてしまいます。
しかし、そこで死にかけの御子神京吾は突然現れた少女に助けられました。
モモ・ペルセフォーネ・ドラクリヤと使い魔ダンテ
モモ・ペルセフォーネ・ドラクリヤと名乗る少女は御子神京吾を眷属化することで助けました。
二つの顔を持つ吸血鬼とは見かけ上のイメージがずっと人間に近いですが、モモもまた本物の吸血鬼みたいですね。
そして、二つの顔を持つ吸血鬼の目的と同じくモモの目的も現時点では不明です。
長い時間を生きている吸血鬼でそれっぽく振舞おうとしているのに時折見かけ上の年齢相応っぽい反応を見せる所が可愛らしいキャラクターだと思います。
あと使い魔ダンテは、ビッグフェイスだけどビビりというなかなか愛嬌のある感じで良いですね。
「あれだけもてあそばれて殺されて・・与えられた命をまた無駄にするつもりですか?」
しかし、たとえ吸血鬼の眷属になっても御子神京吾の目的は変わりません。
モモの元から逃げ出して今まで通り刑事を続けますが・・
どうやら体は吸血鬼になっているので血へ渇望からは逃れられないようです。
なかなか強い精神力で耐えようとするものの、なかなか大変そうな状況です。
犯人と今後の展開
御子神京吾がモモの元にいる頃、あらたな怪事件が発生していました。
しかし、これは「V」とは別の犯人がいると想定されていました。
「君なんだろ。やったのは」
そして、その模倣犯については御子神京吾が簡単に突き止めてしまいます。
御子神京吾の同僚の冬樹。
彼もまた吸血鬼になりかけている人間だったようです。
しかし、このエピソードで重要なのは御子神京吾の同僚が吸血鬼だったということではないのだと思います。
恐らく、この冬樹のエピソードでは御子神京吾が将来陥るかもしれな未来を描いていたのだと思われます。
吸血鬼を追いかけつつも、自らが吸血鬼になる恐怖とも戦っていく。
『MoMo -the blood taker-』はそんな漫画になっていくのではないかと推測します。
総括
いかがでしたでしょうか?
名作になるのか、どこかで見たことのあるような作品に落ち着くのか、それは今後次第というような気がしますが、キャラクターも絵も魅力的なので今後も読んでいきたい作品だと思いました。
吸血鬼がテーマになっているというだけで既にありきたり感があるので、「吸血鬼はもういいや」って遠ざけている人もいるかもしれませんが、そういう人もなかなか面白そうなミステリーになっているので一度読んでみてはいかがでしょうか?