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『ムーンランド(1)』思い通りに自分の体を動かす体操漫画の感想(ネタバレ注意)

 

体操漫画と言えば、菊田洋之先生のガンバ!Fly highが圧倒的に有名で、その知名度に見合った名作だと思います。

その菊田洋之先生は最近、内村航平選手の監修の元でTHE SHOWMANという新しい体操漫画を描かれていますね。

そして、体操漫画と言えばほとんど菊田洋之先生のイメージしかなかったところに新しい体操漫画が登場しました。

それがムーンランドとなります。

あとがきを読むと作者の山岸菜先生のずっと体操漫画を描きたかったという並々ならぬ思いが伝わってきます。

アテネ五輪の団体金メダルを見て以来の体操ファンだそうですが、ムーンランドはそのアテネ五輪団体メンバーの一人である水鳥寿思さんの監修の元で描かれています。

体操漫画に限らずスポーツ漫画はある程度続いてこそ面白さが見えてくる所があると思うので、その真価はまだ分かりませんが、1巻を読む限りは今後に期待できる漫画だと思いました。

体操という体の繊細な動きが重要なスポーツを描くには精密な画力が必要なのだと思われますが、体操の演技のシーンの表現も丁寧かつ迫力がありましたし、主人公の体操に対するスタンスが個性的で魅力を感じました。

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本作の概要

天原満月(ミツ)は、自分の意思通り体を動かせるようになることを目指して体操を学ぶようになります。

試合に出たりその勝敗には興味はなく、とにかく自分の意思通り体を動かすようになることに一途なミツでしたが、ジュニアのクラブを卒業する最後に初めて試合に出場することになります。

そこで強豪クラブの堂ヶ瀬朔良の演技を目にしたミツは、自分の頭の中にしか無かった世界に既にいる朔良を追いかけて同じ高校に入学することになります。

本作の見所

ミツの体操

スポーツをする人が最初に始める時の動機は多種多様なものです。

単純に好きだからだったり、苦手克服のためだったり、友達や兄弟がやっているから始めるって人もいると思います。

そして、どんな動機で始めたとしても多かれ少なかれ試合に出て勝つことを目標にするようなものですよね?

その点、本作品の主人公であるミツは少し特殊です。

「この体を動かせるようになりたい。全部、100%思い通りに。そういう自由が僕は欲しいんだ」

自分の意思通り体を動かせるようになることへの純粋な興味と渇望がミツの体操をやっている理由の全てなので、ひたすら基礎の練習を積み重ねるばかりで試合へ出ることへの興味は全くありません。

なので6年間も体操を続けていて試合には一度も出たことがありませんでした。

ミツを指導している側からしたら生徒の晴れ舞台を見たいところでしょうが、そういうわけで最後の最後には勝手に試合へエントリーされてしまい、ミツも試合に出ることになってしまいました。

初めての試合と全力の演技

ミツが体操クラブに入るキッカケとなった柴田周一郎。

周一郎とともに初めての試合に臨むことになったミツでしたが、そもそも試合を目標に体操をやっているわけではないからか全く緊張した様子がありません。

一方の周一郎はミツよりは場慣れしているのでしょうけど、かなり緊張している様子です。

途中までは順調だったものの、途中でリズムを崩してしまい大きな失敗が続いてしまいました。

「忘れるな。失敗したらこれまでの努力は全部ムダになるんだ」

そんな周一郎の演技を見た強豪クラブの朔良は、周一郎の失敗を見て油断しているチームメイトをそう諭すのですが・・

ミツはそれを否定します。

人は結果しか見ないと言う朔良に、「人が」ではなく「君が」なのではないかとミツは言います。

確かに、何を求めるかは人それぞれですよね。僕もミツの考え方には全面的に賛成だと感じました。

しかし、試合に選手としている以上は朔良の言っていることも間違いではないのだと思います。丁寧な演技をするだけで試合を闘っていない、選手ではないミツには分からないことだと言い返されてしまっていますが、それにはミツも反論できません。

「わかった。勝てばいいんだね」

そういうわけでミツは最終種目の鉄棒で、初めて全力で勝つための演技をすることになりました。

自分の意思通り体を動かせる世界

「・・やっぱりわからないよ堂ヶ瀬くん。体操をやっていて結果より大事なもの、ぼくは見つけたから。君はこれまで勝ちっていう結果しか手に入らなかったの?」

全力の演技で朔良のチームメイトに勝利したミツは、それでも朔良の考え方には理解を示せませんでした。

しかし、朔良の演技を見て朔良が手に入れた勝利以外のものを知ることになります。

朔良の演技は、ミツが求める自分の意思通りに体を動かせる世界に限りなく近いものだったのです。

そして、第一印象では朔良に対して怒っていたミツですが、自分の求めるものに対しては素直な所もあるようで、朔良を追いかけて彼と同じ高校に進学することになりました。

いや、最初ミツが言っていた知り合いは周一郎のことかと思いましたが、それが朔良でちょっと驚きました。(笑)

ヒロイン登場

スポーツ漫画におけるヒロインの立ち位置って難しいですよね。

本筋に必要不可欠な存在かと言われるとそうでもないので、油断していると空気になっているヒロインも少なくありません。

そして、ムーンランドのヒロインっぽい陽田あかりはどうでしょうか?

朔良の幼馴染であかり自身も体操選手なのですが、1巻ではヒロイン兼アドバイザー的な役割を担うキャラクターになっていました。

アドバイザー的な役割なので初登場以降の出番はかなり多く、主人公のミツとの距離も近いので空気になることはなさそうですね。

また、普通に言動が可愛らしい良ヒロインだと思います。

「あかりの脚はきれいだよ。いつだってつま先までまっすぐにのびた、きれいな体操選手の脚」

特に、朔良がカッとなってあかりに対して暴言を発してしまった後のミツのフォローの一言に照れる姿はめっちゃ可愛かったですね。

DスコアとEスコア

体操は、DスコアとEスコアという二種類の得点の合計を競う競技です。

技の難易度を示すDスコアと、技の出来栄えを示すEスコア。

朔良が優れているのは同年代の他の選手よりもずっと高い難易度の技をこなすことで、Dスコアで高得点を取れる部分となります。

部内で行われる試技会でも、高いDスコアを持つ朔良が有利と目されていましたが、監督の瓜生春馬はギリギリの勝負をしたがっている朔良を見て、それを面白がってC難度の技までで試技会を行うことを決定しました。

さて、どうやら基礎を積み上げてきた感じのミツが明らかに活躍できそうな場になってきました。

次巻は試技会が始まるのだと思われますが、あえて難易度を押さえた試技会がどのようになるのか楽しみですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

スポーツ漫画の中ではかなり珍しい部類の体操漫画ですが、それって恐らく描きたくても描けない漫画家が多いからなのではないかと思います。

体操の精密な動きを絵で表現することの難しさは、ちょっと考えてみればあまり絵が描けない僕にも容易に想像できます。

その点ムーンランドは上手く体操の演技も描けていますよね。

菊田洋之先生にも引けを取っていないと思います。

じっくり長く続けてほしい作品ですね。