あるいは 迷った 困った

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『オレが私になるまで(2)』元少年の少女の成長に考えられさせる漫画(ネタバレ含む感想)

 

いわゆるトランスセクシャルはフィクション作品との親和性が高いのか、それをテーマにした作品は枚挙に暇がありません。

自分がもし女だったら、あるいは男だったら?

いわゆる本物のトランスセクシャルでなくとも、そういう形での異性への興味は多かれ少なかれ感じたことがある人も多いと思うのですが、だからこそ時折こういった作品が生まれるのかもしれませんね。

そして、1巻のレビュー(こちら)でも前述したとおりオレが私になるまでは、そんな性別をテーマとした作品の中でも相当な秀逸さを誇る作品で、僕も2巻の発売をかなり楽しみにしていました。

1巻では、唐突な性別の変化とそれに伴う環境や意識の変化が主に描かれていたところですが、2巻では性別が変化した後の成長に主点が置かれています。

小学校高学年から中学生という思春期最序盤をアキラがどのように過ごすのかが興味深い内容になっています。

また、1巻のレビュー(こちら)で僕は「瑠海に秘密(もともと男だったこと)を隠していることが何かしらの悩みに繋がる」という予想をしていたのですが、どうやら当たらずとも遠からずだったようです。

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本作の概要

男女の違いが如実に表れる年頃へと成長したアキラ。

アキラ自身だけではなく、周囲の環境も変化していってますが、その変化は本当に少しずつ。しかし、目まぐるしく変化していくように感じられるような描写が非常にリアルな内容になっていると思います。

変化していない部分もあるからこそ、そう感じられるのかもしれません。

アキラが感じている変化に対する戸惑いは、実のところ性別が変わったからというだけではないところもあり、意外と多くの人の共感を呼ぶものになっているのではないかと思います。

本作の見所

変わっていない自覚

小学校高学年といえば異性に興味を持ち始める年頃で、早ければ彼氏や彼女のいる子供もいますよね。僕が小学生の頃も、少ないですけどそういうヤツいました。

ただ、早熟なヤツもいればまだまだ子供な悪ガキがいるのもこの年頃。

同じ集団の中に精神年齢が大人に近いヤツと子供のままのヤツが混じってくると、何故か子供に近い側のヤツにとって自分より成長の早いヤツがからかいの対象になりがちですよね。

これがもう少し成長すると立場が逆転するものなので、ある意味人生においてもかなり特殊なタイミングと言えるかもしれません。

そしてアキラの同級生にも、恋人同士になって、でもそれを隠したくて、しかしバレてからかわれている子がいました。

そして、そんなからかっている悪ガキが昔の自分に重なって見えたアキラは、つい暴力に訴えかけてしまいます。

「俺、一発しか殴ってないのに。藤宮なんて・・俺のこと何回も何回も・・! なんで俺だけ!!」

そして、小学生くらいの男子だとまだまだ相手が女子だからとかいう意識は希薄。アキラに殴られた菊池という男子は、かなりガチでやり返そうとしてしまいました。

最初の喧嘩の原因は菊池の悪ふざけだったとはいえ、最初に暴力を振るったアキラに全く非が無いわけではありません。

しかし、菊池はアキラにはお咎めが無かったことが不満そうです。

「なにが「男らしさはなくなった」だ・・。気にくわないことがあればすぐ暴力をふるって、人に迷惑をかけて・・。オレはなにも変わってない」 

しかし、アキラの意識としては自分が女だから周りが優しくなったということを自覚しているようですね。

自分は変わってなくて、周りが変わったということです。

確かにアキラの性別が男だったとしたら、たとえ最初の非が菊池にあったところでアキラも全くお咎めなしとはいかなかったような気がします。

とはいえ、このような気付き自体がアキラにとっては大事なものになるのではないかとも思いました。

大人になるということ

子供の頃の年齢差は、小さくても大きく感じられるものです。

小学六年生になったアキラは、小学一年生の後藤美羽からはとても大人に見えるようで、そんな姿が微笑ましいですね。

「あたしあこがれてるの! おねえちゃんみたいにきれいで。おおきくて! ステキな大人の女の人に」

綺麗と言われても実はワキ毛が生え始めてきていて、大きいと言われてもクラスで背は低い方で、素敵な大人の女と言われても元男で、褒められれば褒められるほど複雑そうなアキラがちょっと面白かったです。

とはいえ、確かに子供の年齢差はたった一歳でもとても大きい。

小学一年生から見た小学六年生なんて最早別存在に感じられるものです。

小学生から見た中学生、中学生から見た高校生、高校生から見た大学生。

年齢差は僅かでも、随分と大人に見えたことを覚えています。

そして、年上側から見た時に実のところ思ったほど大人になっていない自分が微妙に気まずいというね。(笑)

25歳くらいまではかなり子供っぽく見えるくらいになってしまった僕からすれば懐かしい話です。

いずれにしても、1巻ではまだまだ子供だったアキラが徐々に大人になっていくわけですが、その過程がどうなっていくのかが楽しみです。

スカートを選ぶアキラ

アキラの事情を知っている先生が、合唱コンクールの衣装をスカートにするか、アキラに配慮してクラス全員男子用に揃えるかを提案するシーンがあるのですが、こういう配慮って素敵ですよね。

しかし・・

「中学行ったら・・セーラー服だし! えっと・・だ・・大丈夫です」

そこでスカートを選ぶアキラ。いずれ着ることになるセーラー服のスカートに慣れるためという建前ですが、少しばかり言い訳じみて聞こえます。

それを何も言わず見守る先生が優しい!

しかし、もし本当に突発性性転換症候群という病気があったとしたら、徐々にアキラのような選択をするようになるのは分かるような気がします。

人は無意識の内に身に合った服装を選ぶものだと思うからです。

分かりやすい例だと、年齢による服装の変化でしょうか?

10代、20代、30代・・そして老人に至るまで、男女問わずその年齢に合った服装というものがあり、しかしそれはそういうものだから選ぶというより、無意識の内に自分の年齢に合った服装を選ぶようになるような気がします。

それに例えば、海外とかで自分の服装が浮いていたら、それが例え日常的には普通の服装だったとしても落ち着かない気持ちになることでしょう。

そんな感じで、服装の好みは実のところ年齢や性別、環境によるところが大きく、大きく外れないものを好みがちなので、女性になったアキラがスカートを履いてみたいと思うのは自然な感情なのではないかと思ったわけですね。

とはいえ、このような変化をどのようにアキラが受け入れていくのかは興味深いところです。

瑠海との喧嘩と仲直り

突発性性転換症候群で男から女に変わったアキラは、そういう変化があったからこそ必要以上に自分の性別に対して敏感になっていた可能性があります。

つまり、女になったのだから女らしくならないとという意識が過剰気味だったというわけですね。

「女だからって女らしくする必要なんてない!」

中学校に入学して新たにできた友達である藤木葵に、アキラはそのことに気付かされます。

元男のアキラにとって自然体で仲良くしやすい藤木葵でしたが、しかしそれに瑠海が意外な嫉妬を見せ、小学校ではアキラの最も強い味方であった瑠海と喧嘩する原因になってしまいました。

とはいえ、実のところこれはエピソード的にそこまで重要ではありません。

仲の良い友達。喧嘩のひとつもするのは普通のことでしょうからね。

そうではなく、このエピソードの面白いところはアキラが喧嘩をキッカケに、腹を割って元男であるという秘密を瑠海に打ち明けるべきかを本格的に悩み始めているところにあります。

そして・・

「瑠海! 言いたいことがあるんだけど! 大好きだよ! また・・はじめから友だちになろう!」

・・って、秘密を打ち明けるんちゃうんかい!

思わずツッコミそうになってしまいましたが、これはこれでアキラの好きがどういう意味の好きなのかが気になるところですし、保留された秘密の告白は一体どうなるのかも気になります。

一体全体、どういう展開になっていくんでしょうね?

総括

いかがでしたでしょうか?

オレが私になるまではかなり展開がスピーディーなので、面白いと感じている僕としてはもう少しゆっくり描いて欲しいと思わなくもありません。

しかし、一方で恐らくは重要だと感じられるようなエピソードのみを描いているからこそ、濃密で面白い作品に仕上がっているのだとも思います。

これはジレンマですが、個人的には今まで通り濃密な作品を描いていって欲しいような気がします。

今後は恋愛や大人になってからのアキラの生き方に対する悩み、それに瑠海など仲の良い友人に対して秘密をどう打ち明け、どう反応されるのか。その辺が描かれていくことになると思うのですが、結果が予想できそうで予想できないところが楽しみですね。

タイトル通り「私になるまで」を描く物語なのだとしたら、既にその傾向があるもののアキラは女性として生きていくことを選ぶのだと思います。

そうなった時に気になるのが恋愛面でアキラが男女どちらを好きになるのか、あるいは両方好きになり得るのかなどが気になる所ですね。

果たして2巻ラストでアキラが瑠海に対して言った「大好きだよ!」はどういう意味だったのか?

その答えが3巻に向けて最も気になるところですが、たぶん本人は分かっていないのではないかと予想します。(笑)

そう遠くない未来に女性として過ごした時期の方が長くなるアキラがどうなっていくのかに注目ですね。