あるいは 迷った 困った

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『龍と苺(1)』将棋を「打つ」と言ってしまうほどの初心者の活躍の感想(ネタバレ注意)

 

最年少でタイトルを獲得し、立て続けに二冠になった藤井聡太先生の効果で盛り上がる将棋の世界ですが、フィクションの世界でも定期的に将棋をテーマにした作品は生まれ続けています。

とりわけ、近年では女性の将棋指しをテーマにした作品が増えてきたようにも感じます。

やっぱり、女性初のプロ棋士というのも将棋界の関心ごとの一つだからでしょうか?

そのもの女性初のプロ棋士を目指しているキャラクターや、フィクションの世界ということで既にプロ棋士になっている女性が活躍する作品というものもありますね。

それでは、今回紹介する龍と苺の場合はどうでしょうか?

1巻はまだ導入部で、将棋初心者である主人公の目的は定まっていないように感じられますが、話の流れから恐らく女性プロ棋士を目指していく物語になるのではないかと推測されます。

初心者のまま強豪も出場する大会で勝ち進む展開には現実感がないものの、そういうファンタジーも面白いと思わされる魅力がある作品だと感じました。

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龍と苺の世界観は現実に則していて、女性でプロ棋士になった者は誰もいないという状況となります。それ故、女性は男性よりも将棋が弱いというのが周知の事実となっているのも現実と同じですが、その辺に関しては現実よりもかなり強調して描かれている印象があります。

実際には強い将棋指しに男性が多いのは頭の良さの優劣ではなく向き不向きでしかないはずですが、龍と苺の場合は女性の方が頭が悪いから・・と、かなり極端なことになっています。

恐らくですが、これは主人公である藍田苺という女子中学生の天才性をより強調するための演出なのだと思います。

誰もが女性の将棋指しを軽視している世界観の中で、ルールを覚えたばかりの女子中学生が何年もの将棋経験がある男性をなぎ倒していく姿はとても爽快に感じられますね。

この爽快さには覚えがあると思って考えてみたら、例えば近年多い異世界ファンタジーにおいて多々ある、その作品の世界観の中においては最弱だったり何かしらのハンデを持った者に無双させる展開の爽快さに似ているような気がします。

将棋の世界における女性の不利を、この爽快さのために上手く利用した作品と言えるかもしれません。

もちろん、将棋経験者から見たら有段者や元奨励会員すらなぎ倒す初心者なんて、主人公が女性であろうがそうでなかろうが現実感が無いと感じるのかもしれませんが、そこはそれフィクション作品故の魅力と捉えてしまっても良いと思います。

超有名将棋ライトノベルりゅうおうのおしごとでは、作者の白鳥先生がフィクションの世界観が現実に追い付かれそうなことを度々ネタにされていますが、龍と苺のように現実を突き放してしまうような作品もそれはそれで面白いものですし、こういう作品する10年20年後はひょっとしたら現実に追い付かれたりするかもしれないという興味も残りますよね。

しかし、1巻の最後では主人公の藍田苺は八段のプロ棋士を相手に敗れています。いくら天才性を発揮していると言ってもルールを覚えたばかりの初心者なのだから当然と言えば当然ですが、同じくプロ棋士を目指す女性を相手に投了まで追い込んだ局面から逆転されたとあればさすがに驚きの展開です。

というわけで1巻の最後にはプロ棋士によって折られてしまったわけなのですが、それこそが藍田苺がプロ棋士を目指し始めるキッカケになるのではないかと推測します。

まあ、藍田苺の性格的に、挑発された形なのでアッサリ乗るか、あまりにも分かりやすい挑発だったのであえて最初は乗らないのか、その辺の紆余曲折は予想ができませんが、今後どのような展開になっていくのか楽しみですね。