『幽遊白書(11)』短めだけど濃密な名作の感想(ネタバレ注意)
魔界の扉編がエンディングを迎え、いよいよ『幽遊白書』という作品そのもののクライマックスである魔界編が始まります。
あれだけ苦労して魔界の扉が開くのを阻止しようとしていたのに、意外と簡単に魔界を行き来する展開になるわけなのですが、何事にも裏があるというところを付くのが上手な作家さんなので、その辺も面白く読むことができます。
浦飯幽助がまさかの魔族の子孫だったというところから仙水を圧倒して魔界の扉編は集結するわけですが、そこから実は魔族の子孫だった浦飯幽助が魔界のいざこざに巻き込まれていく流れは興味深いですね。
ネタバレすると、この魔界の扉編は若干消化不良な感じでサラッと終わってしまうのですけれども、個人的にはもっと深掘りしてみて欲しかったエピソードだった気がします。
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本作の概要
浦飯幽助の仇を取るために桑原、蔵馬、飛影の3人は仙水を追って魔界に突入しますが、圧倒的な強さを誇る仙水には敵いません。しかし、実は魔族の子孫で仙水に殺されたことでその血が覚醒した浦飯幽助も魔界に突入し、仙水との最終決戦が始まります。
仙水とも伯仲した戦いを見せる浦飯幽助でしたが、しかし何者かの介入で仙水をも大きく上回る力を発揮した浦飯幽助は仙水にトドメを刺します。
本作の見所
魔族の血
色々な妖怪と戦ってきた浦飯幽助ですが、なんと自分自身が妖怪の子孫であることが発覚し、その上一度仙水に殺されたことで妖怪として復活を果たします。
それも大幅にパワーアップして。
今思うと浦飯幽助が魔族の子孫だったなんて伏線は直前にしか現れていないので咄嗟に登場した設定何だろうなぁとも思うのですけど、最初読んだ時はただただ大幅なパワーアップを見せた激熱な展開を喜んでいました。
ストーリーの整合性が綺麗だとは言えませんが、面白ければオールOKです。
あれだけ圧倒的だった戸愚呂弟に勝った浦飯幽助をアッサリと倒し、パワーアップした桑原、蔵馬、飛影も圧倒している仙水の強さはS級クラスと言われてなるほどと納得できるようなものです。
そんな仙水と互角に対峙できるまでにパワーアップし、更には何者かの介入があったとはいえそんなパワーアップした状態を遥かに上回る潜在能力を発揮して仙水を圧倒するという展開は、浦飯幽助自身が不満に感じているように仙水との決着に水を差された部分があるのは否めませんが、その一方で魔界の深さを示唆しているようで凄く興味深く感じられました。
それだけにその後の魔界編がアッサリしすぎていたのがもったいないと感じられるものの、消化不良を次への期待に繋げる感じは好きでした。
魔界の使者
魔界に残るか人間界に帰るか。仙水との対決の決着が消化不良に終わったことで浦飯幽助は当初自分の身体を乗っ取った妖怪を探しに行こうとしますが、魔界の扉が閉じられることを知ったらアッサリと人間界に帰ります。
まあ、これは冷静な判断ではあったと思うのですが、しかし消化不良な思いは残したままですし、人間界で浦飯幽助の相手になる者がいなくなってしまったので、戸愚呂弟ではありませんがどこか物足りない思いもあったことと考えられます。
幻海はそんな浦飯幽助に対して、浦飯幽助は何もかもが嫌になった時に壊せるものの大きさが他人とは異なるだけだと諭すのですが、個人的にはこの諭しがメッチャ印象的で好きでした。
ともあれ、幻海は浦飯幽助に相談相手として初代霊界探偵である佐藤黒呼を紹介します。霊界探偵探偵って3代しかいなかったのかよというツッコミは置いておいて。(笑)
そして、そこにやって来たのが魔界の使者。
魔族としての浦飯幽助の父親である雷禅。その使者である北神たち4人の妖怪です。
魔界の扉編ではあれだけ警戒していたA級、S級妖怪が自ら人間界と出入りする手段があることには驚きましたが、恐らくあえてなのだと思いますがそこまで強そうに見えないキャラクターだというのも興味深いですよね。何というか、上には上がいることを示唆しているように感じられました。
総括
いかがでしたでしょうか?
魔界編は、その壮大さや、散りばめられた伏線や数々の魅力的なキャラクターが登場することもあって、その興味深さだけでいえば作中でも一番だと思うのでもっと深掘りして欲しかったところですが、そこはサラッと終わって次巻で最終巻となります。
『幽遊白書』は本当に面白い名作ですが、そこだけが残念なところ。
ちなみに、魔界編は原作よりアニメ版の方がより深く描かれているので、興味がある人はアニメ版を見てみると良いかもしれません。