『さよならミニスカート(2)』もう先の展開が予想できない漫画の感想(ネタバレ注意)
僕は漫画の1巻というものが好きです。
掴みがやっぱり重要だからか、どんな漫画でもある程度は面白いからです。
2巻以降は、まあ当然のことですが、より面白さが加速していくか失速していくかが作品によりけりですね。
『さよならミニスカート』はどうでしょうか?
1巻の衝撃的な内容には驚かされたものですが、その続きはメッチャ楽しみだったものの、その面白さがどこまで続くのかは未知数でもあったような気がします。
面白くはあっても、さすがに1巻で感じた衝撃をどこまでも感じさせることはできないであろうとか、そんな風に正直思っていました。
しかし、その予想は結果的に裏切られたことになります。
この漫画は、本当に予想通りには展開しない。
無理やり個性的な展開にしようとしているような不自然さは全くないのに、エピソードが切り替わるたびに「あっ、そういう展開になるんだ」と驚かされます。
僕は本当にたくさんの漫画やラノベを読み漁っている人間なので、自分で言うのもアレですけど初めて読む作品における先の展開の予想は得意な方だと思います。
ピッタリ正解することは少なくても、何通りか想定した展開のどれかになることは多いです。
だけど『さよならミニスカート』では驚かされてばかり。
例えば、「果たして堀内光は握手会の傷害事件の犯人なのか?」という1巻ラストで提示された謎についても、僕の予想は外れていました。
1巻のレビュー記事で3通りの可能性を示していて、一応その中に正解はあったのですけど、それはメタ的な推測を入れていただけで本当にそうなるとは思っていなかったので実質ハズレです。
だから、1巻のレビュー記事では普段漫画を読まない人にも楽しめる漫画と評しましたが、逆に古今東西の漫画を読んでいるような人にも新鮮な気持ちで読みやすい漫画でもあるのではないかと思いました。
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本作の概要
果たして堀内光は握手会の傷害事件の犯人なのか?
その答えは否。
神山仁那が唯一好意を示した男である堀内光は犯人ではない。
堀内光が犯人ではないと信じて、疑うことすら拒んだ神山仁那は、徐々に女の子らしさを取り戻しているようにも感じます。
1巻では『さよならミニスカート』を「最も女の子らしかった女の子が女の子をやめる物語」であると紹介しましたが、「そして女の子らしさを取り戻していく物語」と続けるべきなのかもしれませんね。
本作の見所
握手会の傷害事件の犯人
神山仁那の現状の原因である握手会の傷害事件の犯人。
「・・俺が、犯人かもしれないんだろ?」
1巻ラストで本作品のヒーローである堀内光が、いきなり露骨に犯人っぽい感じの展開になりましたが・・
「堀内くんは犯人じゃないよ。ごめんね巻き込んで」
神山仁那がなぜそう思ったのかはわかりませんけど、人を信じるとか疑うっていうのはそういうことなのかもしれませんね。
根拠や証拠とは別問題ということなのでしょう。
「・・俺は、あんな男とは違う。そんなふうに信じられても嬉しくない。だからちゃんと疑ってくれよ。俺が怖くなくなるまで・・いくらでも、本当のこと言ってくれよ」
しかし、かつて妹の心からの相談事を受けとめることができなかった堀内光は、神山仁那に妹を重ねて言いたいことを言ってほしいのか、怖いならちゃんと怖いと言ってほしいようです。
一方で神山仁那は自分の本心はどうでも良いと思っている節があります。
どうやら自分を閉じ込めてしまうところはアイドルだった時も現在も同じようですね。
「・・なんで私が・・この人のこと疑わなきゃいけないんだよ。なんで怖がらなきゃいけないんだよ。なんで私がこの人に嫌な思いさせなきゃいけないんだよっ・・」
人を信じて疑わない綺麗ごとのような内面には危うさもありますが、そういう綺麗ごとは嫌いではありません。しかし、神山仁那の自分を閉じ込めてしまうような内面はより一層危ういような気がしますね。
ともかく、握手会の傷害事件の犯人の特徴であったわき腹の三つのホクロが堀内光に無かった頃から、堀内光は犯人ではないと証明されました。
長栖未玖のたくらみ
「俺が守ります」
堀内光が犯人ではなかったとはいえ、どうやら近くに神山仁那が雨宮花恋だということを知っている人間がいることは確かなようです。
その危険性は認識した上で、逃げないことを選択した神山仁那を、堀内光が守ると宣言します。
自宅マンションまでわざわざ迎えに来て一緒に登校する2人ですが・・
男嫌いな風だった神山仁那と、モテるけど特定の誰かと付き合ったりはしなかった堀内光が一緒に登校してくる風景は当然のように悪目立ちしてしまいます。
そんな中、長栖未玖にもストーカーが付いている疑惑が出てきます。
タイミング的に完全に狙った感じがしてしまっていますし、実際に狙いがあったのは間違いなさそうですけど、こういう腹黒系女子は苦手です。
それより問題は、どうやら握手会の傷害事件の犯人は長栖未玖の腹黒い部分に気付いているように見受けられる点。
「・・本当にかわいいな花恋は。花恋にはもっと幸せになってほしいよ。俺のことなんか忘れるくらいに。その方が壊し甲斐がある。・・だから、花恋の邪魔しちゃだめだよ? 長栖未玖ちゃん」
神山仁那が雨宮花恋だと知っていることはまだ分かるとして、この犯人にとってはその他大勢の一人でしかないはずの長栖未玖の内面に気付いている?
これは犯人が相当近く、それも学校関係者にいることを示しているのでしょうか?
堀内光の潔白が明らかになる前なら、堀内光が犯人説の材料の一つになっていたところです。
現時点で登場しているのか、まだ登場していないのかは分かりませんけど、恐らく犯人は意外と近しい人間に紛れているような展開が想像されますね。
良いお兄ちゃん
神山仁那は、堀内光のようなお兄ちゃんが欲しかったと言いますが、どうやら堀内光にとってはトラウマを刺激されるような発言だったようです。
意外と八方美人なところがある堀内光ですが、八方美人とは誰にでも当たり障りのない、逆に言えば関心が薄いところがある性質です。
そんな性質が災いして妹が引きこもる原因を作ってしまったのだから、それは気にしますよね。
先生にセクハラされていることを兄に訴え、しかし優しく先生のことをヘンなんて言ってはいけないと諭され、本当にセクハラされていたことが明らかになってから何故言わなかったのかと聞かれる。
「・・俺は、ただ六花に興味がなかっただけだろ。自分のことにしか・・。「良いお兄ちゃん」ぶる俺の横で、きっと六花は冷めた目で見てたんだ」
堀内光が握手会の傷害事件の犯人だと疑われていた時に、ちゃんと疑え、ちゃんと怖がれと神山仁那に言っていたのは、ちゃんと神山仁那の内心に気付けるようにしたかったからなのかもしれませんね。
総括
いかがでしたでしょうか?
僕には『さよならミニスカート』の着地点が予想できませんが、恐らくそこまで長々と続く作品ではないのではないかと思います。
というか、そうあってほしい。
恐らく『さよならミニスカート』という作品は、作者が描きたいことだけを描ききっただけの状態が最も面白い完成形になるのではないかと思うからです。
引き延ばしのためのエピソードが面白いような漫画もありますが、『さよならミニスカート』は今のままの勢いで読みたいと思ってしまいます。
続きが最も楽しみな少女漫画ですね。