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『死神坊ちゃんと黒メイド(1)』触れたものの命を奪ってしまう少年との触れ合いとは?(ネタバレ含む感想)

 

表紙の女の子も可愛いし、前々から目に付いてはいたものの、ちょっとした誤解で食わず嫌いしていた死神坊ちゃんと黒メイドという作品。

いや、最近はキャラクター属性を前面に打ち出しているだけで中身の薄い作品も少なくないので、死神坊ちゃんと黒メイドからもそういう雰囲気を感じ取ってしまっていたんです。

しかし、それにしては人気もあるようで「ひょっとして面白いのか?」と思って今更ながらに読んでみたわけです。

そして・・

何コレ、メッチャ良いやん!

恋愛ごとにおいて異性との触れ合いが全くないというのは本来あり得ないことだと思います。

それなのに、触れたものの命を奪ってしまうため誰とも触れ合えない主人公にラブコメさせるという発想がとても面白い作品だと思います。

また、ラブコメ作品にはちょっとエッチな要素があるものと、そうでもないものの二つのタイプに分かれると思いますが、本作品はどちらかといえば前者になります。

触れ合いが無いのに距離が近いという新しいラブコメ、思った以上に面白かったです。

?

本作の概要

五歳の頃に、魔女に触れたものの命を奪う呪いをかけられた主人公の坊ちゃんは、周囲から隔離するために取り壊し予定だった旧邸に住むようになりました。

家族とは疎遠になり、一緒に住んでいるのは黒メイドのアリスと執事のロブのみ。

触れ合うことのできない坊ちゃん相手に、ちょっとドキドキしてしまうような逆セクハラをするアリスが作品にちょっとエッチな雰囲気を与えていますが、一方で触れ合うことのできない二人の純粋な恋物語にもなっているのではないかと思います。

本作の見所

触れたものの命を奪う呪い

触れたものの命を奪う呪いという設定自体は、実のところそんなに凄いと思わされるような発想ではないと思います。

なんというか、能力者ものの作品が好きな子供が妄想するような中二病的な能力の中でも一層安易な能力という印象です。

触れただけで相手を殺せる・・みたいな?

しかし、死神坊ちゃんと黒メイドという作品においてはこの設定を『能力』ではなく『呪い』としているところ、そして能力者ものの作品に登場しそうな設定をラブコメ作品のスパイスにしてしまっているところが面白いと思うのです。

だから一見安易な触れたものの命を奪うという設定がとても新鮮に感じられるわけですね。

また、ラブコメの作品って作品にもよりますけど、主人公とヒロインの距離がまだまだ離れているところから始まるのが常だと思います。まあ、主人公とヒロインがくっつくのがゴールの作品が多いので、当然といえば当然のことなのかもしれません。

しかし、これも死神坊ちゃんと黒メイドという作品においては、少なくとも主人公とヒロインの心の距離がラブコメ作品にしては近いところから始まっています。それも明らかに相思相愛に近いように思えるレベルで。

それなのに触れたものの命を奪う呪いのせいで身体の距離は遠く触れ合うことはできない。

心の距離は遠いけど読者サービス的な意味もあって身体の触れ合いは多めなのが普通のラブコメなら、死神坊ちゃんと黒メイドはそれを全くの逆にしている作品だと言えるのかもしれません。

「枯れた白い薔薇の花言葉は、『生涯を誓う』ですよ。その体質・・早く治してくださいね」

「いつか・・僕の手で君の薬指に指輪を」

これは第3話ラストのヒロイン・アリスのセリフと、主人公・坊ちゃんのモノローグですが、恐らくこのやり取りが死神坊ちゃんと黒メイドという作品の終着点を示唆しているのだと思われます。

呪いを直して「僕の手で」。

つまり、心の距離ではなく身体の距離をゴールに定めているわけですね。身体の距離をゴールになんて言うとちょっと誤解を招きそうな気もしますけど、違いますから。(笑)

ヒロインに逆セクハラなんてことをさせているのも、これは通常のラブコメでいうところのラッキースケベ的なイベントに該当するのだと思います。

身体的なエロではなく、精神的なエロという感じでしょうか?

考えてみれば考えてみるほど通常のラブコメと逆にしているのだということが分かりますが、それを触れたものの命を奪う呪いというたった一つの設定だけで実現し、通常のラブコメとは全く違った新鮮な作品になっているのが、本当に秀逸だと感じました。

逆セクハラする黒メイド

主人公の坊ちゃんに触れるか触れないかのギリギリまで身を寄せたり、その上で男なら思わず肩を抱いたりキスしたりしてしまいそうな雰囲気を醸し出したり、そんな感じで逆セクハラする黒メイド・アリスが本作品のヒロインとなります。

絶対に触れることが許されないからこそ、セクハラとして成立するのが面白いですよね。

触れることが許されていたらなぜセクハラとして成立しないのかというと、前述した通りアリスの言動はどんなに鈍い男でも思わず自分から触れてしまうようなものだから、呪いさえなければ坊ちゃんの方が野獣と化してしまっていると思うからです。(笑)

それを人は、少なくともアリスの側がセクハラしているとは見ませんよね?

それにしても、アリスの逆セクハラは非常にエロい。(笑)

しかし、いわゆるラブコメ作品にありがちな種類のエロさではない。

なんというか、下着が見えたり胸やお尻を押し付けるような事故が起きたり、そういうのがラブコメ作品には多い気がしますが、個人的にはそういうシーンはあまり好きではありません。面白いと思って読んでいる好きな作品でも、そういうシーンが素直に良いと思えないことが多いんです。

それがアリスの場合、そういう分かりやすいシーンは少なくて(あるにはある)、ただいるだけで、表情だけで、言葉だけで、妖艶さを醸し出しているようなところがあるのです。それが普通のラブコメを読んでいて感じるのとは違った新鮮さを感じる一員なのではないかと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

触れたものの命を奪う呪いをかけられた主人公の坊ちゃんに、そのお世話をしつつ逆セクハラしまくる黒メイドのアリス。それに執事のロブと、登場人物の誰もが個性的で魅力的な作品だと感じられました。

キャラクターデザインや、少し独特なタッチの絵も個人的にはとても好きなので、どんどんと続きを読んでいきたいと感じています。