あるいは 迷った 困った

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『その時の彼女が今の妻です』様々な出会いが微笑ましい漫画の感想(ネタバレ注意)

 

様々な出会いの瞬間を描いた短編漫画作品集。

それがその時の彼女が今の妻ですという一冊です。

興味本位で読んでみただけの漫画だったのですが、少々変わった構成の漫画で想像以上に興味深かったのでこうしてレビューしてみようと思い至りました。

さて、突然ですが漫画に限らず普通のフィクション作品の中で描かれる出会いをスタートラインとした恋愛はどのようなものでしょうか?

恐らく、どのようなキャラクターのどのような出会いであっても、その後に描かれるのはいわゆる二人の「馴れ初め」なのではないかと思います。そして、結婚だったり交際だったり、あるいは家族が出来るまでだったり老人になった姿が描かれていたり、結末にはわりとバリエーションがあるとは思いますが、いずれにしてもその作品特有の結末があるものです。

あっ、ちなみに「馴れ初め」とはその人の知り合ったキッカケの意味があるので実のところ「出会い」とはイコールの言葉ですが、本記事では知り合って仲良くなっていく過程の意味で使っていきます。語彙力が無くてスミマセン・・

  1. 出会い
  2. 馴れ初め
  3. 結末

簡単に言うと、大抵のフィクション作品における恋愛はこの三本柱で描かれているのではないかということですね。

そして、この三本柱には多少の例外があるかもしれませんけど、それでも大抵の場合は「馴れ初め」の部分が作品の主軸になってくるものなのではないでしょうか?

しかし、その時の彼女が今の妻ですの場合はそうではありません。

タイトルからもある程度は推測できるかもしれませんが、本作品では「馴れ初め」ではなく「出会い」に主軸が置かれています。

それどころか、普通の恋愛作品では主軸となる「馴れ初め」の一切が割愛されてしまっています。

様々なバリエーションの「出会い」を提示してきてくれているものの、その後の「馴れ初め」はご想像にお任せしますというスタンスがかなり特殊ですよね?

しかし、このあえて「馴れ初め」は描かないスタンスがその時の彼女が今の妻ですという作品の面白いところです。

出会いを描いた後に「その時の彼女が今の妻です」というモノローグで締めるのがテンプレになっている短編集ですが、何だか変わった出会いでも「その時の彼女が今の妻です」という言葉に一定の説得力があるのが興味深いところ。

そして、説得力があるということはその後の「馴れ初め」を読者に想像させるに足り得る内容になっていることになります。

中には変化球気味の「出会い」も描かれていたり、エピソードごとに好き嫌いもあったりしそうな作品ですが、だからこそ良いと思えるエピソードに遭遇できる可能性はとても高い短編漫画集なのではないかと感じました。

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本作の概要

結婚に至る男女の最初の出会いが数多く描かれた作品となります。

オーソドックスに感じられる出会いから変化球気味の出会い。全く同じエピソードを別視点で描いたものもあったり、中には「いや、あんた達じゃなくてお前らかよ!」とツッコミたくなるミスリードのあるものまで、最後まで飽きずに読むことができます。

短編というより掌編に近い作品集なので、個人的に気に入った作品を見所として紹介させていただきたいと思います。

本作の見所

4組目

見開きを含めた僅か4ページの掌編ですが、電車内でのありそうなトラブルがキッカケの出会いですね。

男性が傘を倒して、それを足に引っ掛けた女性が上手いこと足で返そうと失敗して男性の眼鏡に引っ掛けてしまう。

凄く些細な出会いで大きなインパクトもありませんが、偶然な出会い方としては素敵に感じられる部類のものなのではないかと思いました。

5組目

いつもイヤホンをしているちょっと一匹狼風で笑顔の少ない女性との、大学生同士の出会いが描かれています。

ちょっとしたトラブルから女性の照れた表情と笑顔が見られることになるのですが、こういう意外な表情がキッカケになるというのも素敵ですよね。

8組目

恐らく本作品で描かれている出会いの中では、最もオーソドックスなものであると感じる人が多そうな出会いですね。

いわゆる一緒に残業するところから始まる社内恋愛のようなものですが、仕事終わりに飲みに誘って断られるところで終わっているのがリアルだと思います。(笑)

11組目

合コンのエピソードなので合コン相手の女性との出会いが描かれるのかと思いきや、隣の席のカップルの女性との出会いでした。(笑)

トラブルでカップルの内男性だけが帰ってしまった後の取り残された女性との出会いというのが変わっているけど面白いですね。

16組目

これは単純にヒロインが可愛いエピソードです。個人的には5組目、21組目のヒロインと並んで本書に登場するヒロインの中では好みのタイプなのですけど、些細なことに喜んでいる女性の姿って可愛らしいですよね。

21組目

サバサバとした仕事のできる女性がヒロインのエピソードです。

漫画家のアシスタントで男性が漫画家なわけですが、全く漫画家先生のことを男性として意識していないかのようなサバサバとした言動が可愛らしい・・というのとは何か違いますが、とにかく良いと感じさせられます。

フィクション作品だと可愛らしかったら格好良い女性キャラクターが魅力的に感じられますが、現実だとサバサバした女性ってモテますよね?

少なくとも僕は結構好きなんですけど・・

何が言いたいのかというと、本書には恋愛を描く漫画作品のわりには「可愛い」よりを「リアルさ」に重点を置いているような気がするので、ある意味ではちょっと珍しいキャラクターに出会える作品でもあると言えるということです。

総括

いかがでしたでしょうか?

1巻完結の漫画なのがもったいないくらいの良作だったと思います。

作者の音井れこ丸先生の作品はお見掛けする機会はあっても、まだ読んだことは無かったのですが、他の作品も読んでみたいと思わされる破壊力のある作品でした。