『それでも歩は寄せてくる(1)』からかい下手な日常系将棋漫画の感想(ネタバレ注意)
『それでも歩は寄せてくる』は、『からかい上手の高木さん』で有名な山本崇一朗先生の新作漫画ですね。
山本崇一朗先生の作品は『からかい上手の高木さん』以外にもあるのに何故『からかい上手の高木さん』を引き合いに出したかといえば、この『それでも歩は寄せてくる』が方向性は違うものの『からかい上手の高木さん』によく似ている所があると思ったからです。
そんな風に言うとまた似たような漫画なのかと思う人もいるかもしれませんが、からかい上手で小悪魔的な高木さんと違って、本作品の八乙女うるしはからかわれる側の可愛らしさがあって、似ているものの受ける印象はかなり違うのが興味深いと思います。
まあ、からかわれているのではなく、結果的にそうなってしまっているだけなのですが。(笑)
なぜか将棋が題材になっているところも面白いですよね。
僕は囲碁や将棋といった盤上遊戯をテーマにした漫画が好きなので興味を持ったのですが、ガッツリ将棋漫画というよりは、将棋における攻防を田中歩と八乙女うるしの関係になぞらえている日常系漫画といった作品になっているようです。
なので将棋漫画らしい将棋漫画を期待している人には物足りないところがあるかもしれません。
実際、僕も多少は将棋漫画らしさを期待していたので、ちょっと肩透かしな部分はありました。
しかし、それを差し引いても田中歩の攻めにたじろぐ八乙女うるしが可愛らしくて、二人のやり取りが面白い漫画だと思います。
『からかい上手の高木さん』が好きな人なら楽しめるのではないでしょうか?
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本作の概要
八乙女うるしは将棋好きな将棋部の部長。将棋部といっても部員が2人しかいないため部とは認められておらず、いつか将棋部にしたいと考えています。
もう1人の部員で将棋の初心者の田中歩は、そんな八乙女うるしが好きな元剣道部員。
八乙女うるしのことが好きなのですが、それを一向に認めない。しかし、好意だけはぶつけまくるという良くも悪くも面倒くさい性格をしています。
明らかな好意で攻めてくるのに、事実を口にしているだけで好きなわけではないと認めない田中歩に、八乙女うるしがたじたじと困惑するだけの、だけどそれが楽しい漫画です。
本作の見所
田中歩と八乙女うるし
なんとなく『からかい上手の高木さん』とは男女の立場が逆転している印象があります。
「すごいですねセンパイは・・。こんなに将棋が強くて、そのうえ、そんなにかわいいだなんて」
こんな感じでナチュラルに八乙女うるしを女性的な意味で褒めるのが田中歩というキャラクターとなります。
将棋の初心者で、いつか勝てたら告白すると思っているようなので好意は持っているようなのですが、それがあふれ出してしまっていますね。(笑)
しかも表情は無表情で、自分の好意を悟られまいとしているのに、それが功を奏していないところが面白いです。
「お前、私のこと好きだよな」
どちらかといえば、照れ屋な印象のある八乙女うるしがそう聞いてしまうくらいにはあふれ出しています。認めないだけで。
基本的には、こんな2人のやり取りが淡々と繰り返される漫画なのですが、褒め殺しタイプで無意識にSっ気のある田中歩に、照れながらも若干Mっ気のありそうな八乙女うるしの関係が本当に面白いです。
『からかい上手の高木さん』でもそうでしたが、この作者は2人合わせてキャラクターの魅力を相乗効果的に引き上げるのが上手ですよね。
田中歩の攻めを将棋の攻めに例えているところも面白いと思います。
八乙女うるしのここが可愛い
なんといっても田中歩から好意的なセリフで攻められた後の反応が可愛らしいのはもちろんですが、それを差し引いても魅力的なキャラクターだと思います。
まずは、ひとりで歩いている時に時たまご機嫌に歌を歌っているシーン。高校生ということを考えたら少々子供っぽい行動ですが、それを恥ずかしげもなくやっている所が純粋な感じがして可愛らしい。
そして、田中歩が剣道部に連れ戻されそうになっていると知った時には、それを阻止しようとご機嫌を取ろうとして、田中歩に剣道部に戻る気が無いと知った時の嬉しそうな反応も良かったと思います。
おまけ漫画でヘアゴムを片方無くしてポニテになっている八乙女うるしも可愛かったですね。
ポニテが・・ではなく、いやそれはそれで可愛いのですが、そういうことではなく、あくまでも不可抗力で髪型が変わっているのだと早く言い訳したいのに、その変化に田中歩が気付いてくれなくてソワソワしているのが可愛らしいですね。
総括
いかがでしたでしょうか?
実は、色々な作品のレビュー記事を書いている僕ですが、こういう日常系作品のレビュー記事を書くのは珍しかったりします。
こういう日常系作品は、ある意味当たり障りのないエピソードの繰り返しで「こんなエピソードがあったよ」とレビューしても面白さが伝わりづらいところがあると思っているからですね。
『それでも歩は寄せてくる』も例外ではありませんが、将棋を主軸に据えた日常系漫画という発想が珍しかったのと、そもそも将棋漫画が好きなこともあって今回書いてみました。
攻められヒロインの八乙女うるしが本当に可愛らしくて、今後も読んでいきたいと思います。