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『シャバの「普通」は難しい(1)』監獄育ちのメイドさんが普通に頑張る物語の感想(ネタバレ注意)

 

実は随分前に原作小説は買ったけど、他を優先して積読してしまっていた作品なのですが、そういうケースでもコミカライズ版は気軽に読めるからありがたいですよね。

シャバの「普通」は難しいもまた最近本当に多い小説家になろう出身の作品ですが、定番の異世界転生・転移ものではありません。

しかし、ある意味では別の世界でのチート無双ものという要素もあります。

監獄育ちの主人公エルマが、監獄とは別世界と言えるシャバで普通に振舞おうとしますが、普通のつもりでエルマがやることの何もかも有能すぎてしまうという物語。

つまり、監獄からシャバというのが形が違うだけで異世界転移ものっぽい形式に当てはまっているのですね。

常識外のメイドさんの活躍が痛快な漫画でした。

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本作の概要

終身刑を言い渡された大罪人ばかりが収容されるヴァルツァー監獄。

殺人鬼すら涙を浮かべて死罪を請うようなこの世の地獄が、囚人ハイデマリーを始めとする6人の囚人に掌握されてしまいます。

そして、その時ハイデマリーがお腹に宿していた7人目。

その7人目は、服役中の娼婦から生まれたというだけで15年間ヴァルツァー監獄で暮らしていたのですが、それが無辜の娘を解放せよという勅命により解放されることになります。

そして、その7人目こそが本作品の主人公エルマとなります。

生まれてからずっと監獄の中で育ったエルマが、シャバで普通に振舞おうとすることの全てが普通ではない、そんなコメディチックな要素もある作品となります。

本作の見所

ヴァルツァー監獄の囚人

一癖も二癖もありそうな囚人6人が、ヴァルツァー監獄を掌握します。

この掌握というのが具体的にどういうことなのかが今のところよくわかりませんが、要するに囚人でありながらこのヴァルツァー監獄を、まるで自分たちの城のように好きにするという意味なのだと思われます。

「あなたにはそのための傀儡を演じてもらいたいの」

囚人の一人である娼婦・ハイデマリーが看守である導師に放ったこのセリフがそう考える根拠です。

そしてそのハイデマリーのお腹の中にいる主人公エルマが、この監獄でどのように育ったのかの描写は今のところありませんが、ハイデマリーの仲間である他の囚人たちの元どのように育ったのかが少しずつ明らかになっていくのではないかと推測されますね。

科学が得意そうな青年に、力自慢っぽい大男。それに洗脳や交渉術に長けていそうな連中もいます。

コミカライズ1巻では彼らについては掘り下げられていませんが、本作品のキーパーソンであることは間違いないでしょうね。

有能すぎるエルマ

王宮付侍女として働くことになったエルマ。

先輩のイリーネからはユリアーナ前妃殿下のお茶の準備を始め、四人がかりで一日かかる仕事を押し付けられます。

しかし、それら全てを完璧に、しかも午前中の内に終わらせてしまいます。

ユリアーナのお茶と茶菓子も、豪胆な手腕で準備してユリアーナを喜ばせます。

「なににわたくしが一番感動したかって、その洞察力の鋭さだわ」

その手際の良さはともかくとして、侍女長ゲルダはエルマの洞察力を褒めたたえます。

そして、洞察力を誉められたことでエルマはあることを思い出します。

「こちら庭師のハンス少年に代ってお返しいたします」

人の良い侍女長ゲルダが庭師のハンス少年に詐欺行為にあっていたのに、普通なら人の表情なんてわからない距離から、ハンス少年の微表情の変化で詐欺行為に気付いたエルマ。

あまりの有能さにゲルダも、一緒にいたルーカス王子もイリーネも言葉が出てきませんでした。

料理対決

美食の国モンテーニュから引き抜かれてきた宮廷料理長のジョルジュは、侍女のエルマが作った飯の方が美味いと言われて怒り心頭です。

そして、料理長の領分を浸しているとして、ジョルジュはエルマに物申しにやってきました。

「料理人の資格を持たず、女の身でありながら神聖な厨房に入り、料理長である俺の領分を侵した。謝罪を要求する!」

それに対してエルマは謝罪しつつも・・

「料理は資格や性別ではなく、おいしいものを作れる人が作ればよいという考え方は「普通」ではないのですね」

悪気の無さそうな感じについ思ったことを言ってしまいます。

それを挑発と受け取ったジョルジュとエルマの料理対決が始まるのですが、結果は何となくわかりますよね?

勝負自体の結果は引き分けになったのですが、誰が見てもエルマの勝利だったことは間違いないと思います。

ジョルジュに出身の美食の国モンテーニュとルーデンでは生活習慣の違いから、求められている味が違っていることに気付かせ、その上で自分の料理をジョルジュの出す料理の引き立て役にしてしまったエルマ。

いやはや、ただ相手を打ちのめしてしまうよりも個人的にはこういう展開の方が良いと思います。

エルマのスキルの源

ユリアーナやハンス少年の内面を読み取った洞察力。

料理対決で見せた巨大マグロを釣ってきたり、捌いたりした技術。

普通に振舞おうとしているのに、全く普通ではない技術や経験を持つエルマ。

そのスキルの源は、ヴァルツァー監獄の父親たちにあるようです。

その洞察力は稀代の詐欺師モーガンから、狩りの腕は暴食のイザーク

一癖も二癖もありそうな監獄の親たちから授けられた普通ではないスキル。

そんなスキルを振りかざして、相手がそれをできないと知るや否や・・

「シャバの方というのは、そのくらいのこともできないのですか?」

 純粋な疑問としてエルマは問いかけます。

このエルマと「普通」のギャップが埋まるまでには、まだまだ先が長そうですね。(笑)

総括

いかがでしたでしょうか?

漫画の単行本としてはかなりページ数短めのシャバの「普通」は難しいでしたが、十二分に面白いと思わされる内容でした。

積読している原作小説の方も時間を見つけて早いとこ読んでみたいと思います。

今後の行く末が想像できない物語ではありますが・・

「シャバの方というのは、そのくらいのこともできないのですか?」

エルマのこのセリフが様式美的に繰り返されるような作品なのではないかと推測します。

どうやら監獄にいる囚人たちに常識外のことを色々教え込まれているらしいエルマが、他にどんな能力を秘めているのかが楽しみですね!

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