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ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】21巻

 

対局というより囲碁の世界が描かれている感じの21巻です!(前巻の書評はこちら

いよいよ北斗杯のメンバーが決まり、『ヒカルの碁』もクライマックスが近付いてきましたね。

北斗杯編は全体的に、囲碁界が世界的に大きく動こうとしている、新しい時代が始まろうとしているという予感を感じさせるような内容になっていますが、特に21巻以降は『ヒカルの碁』における囲碁の世界が上手く表現されている巻だと思います。

近年では、現実の囲碁の世界が『ヒカルの碁』という漫画を超えて大きく変化しているような世の中ですが、それでも今読んでも色褪せない面白さを感じさせてくれる『ヒカルの碁』という漫画はマジで名作ですね!

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本作の概要

ヒカルvs社の空中戦的な対局は決着し、ヒカルが処理をもぎ取りました。

ルールに従えば、アキラ、ヒカル、そして越智が北斗杯のメンバーになる所ですが、越智自身の申し出により、越智と社が対局して勝った方が北斗杯のメンバーになることになりました。

越智のプライドは格好良かったですが、結果としては社が勝利し、北斗杯のメンバーが確定しました。

そして、社の提案で北斗杯に向けてメンバー3人が集まって合宿を行うことになりました。

本作の見所

越智のプライド

当初よりプライドが高く、プロ試験編でも序盤は他の受験者を見下すような言動も多かった越智ですが、年齢も年齢なので実力はあるけどちょっと小生意気な子供というような印象を持っていました。

しかし、どうやら越智のプライドはそんなガキっぽいものでは無かったようです。

「このままボクが選手になっても皆、不満が残るでしょ。どっちが強いか。どっちが弱いか。はっきりさせてボクは上へ行く!」

冷静に自分の実力と相手の実力を客観的に見て、周囲が納得していないのを感じ取って文字通り白黒はっきりさせることを願い出た越智。

和谷のように、ルールを盾に勝負の世界なんだから運も実力の内と割り切ってしまうような考え方も別に責められるようなものではありません。

しかし、和谷と越智の勝負師としての実力差は、対局の結果以上にはっきりしてしまったかもしれませんね。

それを感じ取った和谷は、今までに無く悔しがっていますね。

囲碁の世界の子供

これは囲碁ファンであれば特に不思議に思うような話ではありませんが、普段囲碁に触れない人にとっては、プロ棋士であっても10代の若手なんかは年配のプロ棋士よりはずっと格下に見えるのかもしれませんね。

しかし、実際には全くそんなことはありません。

囲碁界の子供は子供ではない」という言葉は、別に漫画的な誇張でもなんでもなく、純然とした事実なのです。

歴代の世界のトップも、トップになる年齢はだいたい15~30歳の間くらいと意外に若いのです。

2019年1月5日には、仲邑菫さんという最年少のプロ棋士の誕生がニュースになりましたが、まさに「囲碁界の子供は子供ではない」のわかりやすい例の1人ですね。

高永夏の取材

ヒカルの碁』という作品のラスボスである高永夏。

記者の古瀬村がアポ取りにしくじった結果、怪しい通訳を間に挟み高永夏にインタビューした結果・・

高永夏の発言がかなり誤解を招く内容に変換されてしまいました。

本因坊秀策が「弱い」「学ぶことが無い」「日本が弱い」。

実は、高永夏は別に煽るようなことは言っていないのですが、断片的に通訳された結果だけを見ると日本囲碁界への挑発にしか聞こえませんね。(笑)

それをヒカルも知ることとなり、棋士としての本因坊秀策、つまりは佐為を馬鹿にされたと思ったヒカルの敵愾心を刺激することになります。

北斗杯メンバーの合宿

三人とも職業として囲碁を打っているので、実際は見た目ほど楽しい感じではないのかもしれませんが、こうやって合宿みたいな形でヒカルが囲碁の勉強をしているシーンって他には無いので、そういう意味ではとても貴重なシーンだと思います。

父親がプロ棋士(引退済)で、なるべくしてプロ棋士になったアキラ。

いつの間にかプロ棋士になっていたにも関わらず母親からは理解しようとしてもらっているヒカル。

プロ棋士になることを親に反対されていた社。

それぞれ違った環境に育ったプロ棋士が一緒に集まって勉強する。

それが何だって感じなのですが、個人的にはこういうシチュエーションが何かいいなって思ってしまうのですよ。

ちなみに、ここでは作中で唯一アキラが同年代の棋士に負けるところを見られます。

1巻でヒカルに負けてますが、これは佐為なのでノーカンですね。

何度も繰り返し10秒の早碁を打っている中で、社に負けたところが描写されているのですが、負けた相手がヒカルじゃないところが意味深ですね。

恐らく、このレベルの棋士同士だと流石にアキラも全戦全勝とはいかないはずで、ヒカルだって何度もアキラに勝ったことがあるはずだと推測します。

しかし、ここで描かれたのが社に負けるシーンだったことで、連載当時僕は「ああ、作者は恐らくヒカルをアキラに勝たせるとしたらラストのみにする感じなのかなぁ」と思った記憶があります。

まあ、その考えは間違っていたんですけどね。(笑)

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今巻は対局が少なかったので目ぼしい対局があまり無かったのですが、北斗杯メンバーの合宿でのヒカルvsアキラの対局の棋譜を紹介したいと思います。

元ネタは藤沢朋斎九段(黒)と島村俊廣九段(白)の、50年以上前の棋譜となります。

そういえば、ライバル同士であるはずのヒカルとアキラですが、本当の意味で一局の終局まで描かれたのってこの対局が唯一ですよね?

そういう意味では、地味なシーンだったわりに実は貴重な対局シーンだったと言えます。

(図1)

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序盤の三々を見るや否やAIの影響だとか思ってしまう世の中になりましたが、三々入りはともかく隅に石が無い状態での三々はAIはあまり打ちません。

むしろ、星に打つと三々に入られるから最初に三々を打っておくという発想だと思うのですが、最近では人間のプロ棋士が良く打っている印象があります。

そういうわけで、何となくパッと見た感じ最近の棋譜っぽく感じるのですが、それが実は50年以上前の棋譜というのが興味深いですね。

ちなみに、個人的には序盤の三々入りは肌に合っているような気がしてよく打っているのですが、本局のようないきなり三々に打つ手は、打つ方も打たれる方も少々苦手です。

どうしても19路盤の広さに対して端っこの方に寄りすぎているような気がしてしまうのが打ちづらい理由で、だからといってどう絡んでいけば良いのかが星や小目に比べて難しく感じるのが打たれるのも苦手な理由です。

しかし、13路盤であればそこまで端に寄りすぎているほどの印象はないので、時々三々も打っています。

ど素人の適当な感覚ですが、同じような感覚を持っている人は多いのではないでしょうか?

あと、この後の実戦では右上のシマリを黒が打ちますが、LeelaZero先生の候補手は左下のカカリです。この打ち方は僕の感覚と一致していて、ちょっと嬉しくなりました。(笑)

(図2)

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この局面、どちらが優勢だと思いますか?

僕は断然黒持ちなのですが、LeelaZero先生によると白優勢だそうです。

確かに白も左下が両翼に広げられそうで良い感じですが、右辺黒の模様も相当立派だと思うのですが・・

ちなみに、右下黒の三々からケイマした手は、LeelaZero先生的には大ゲイマまでいった方が良いとのことです。

黒模様を少しでも大きくするとともに、左下白の下辺へのヒラキを制限しようという意図だと思いますが、もちろんその分隙も大きくなります。

負けても悔しいだけでそこまで痛くもないアマチュア的には、LeelaZero先生の候補手の方が壮大で魅力的に感じますね。

(図3)

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左下白の小目の下にツケ1本。そしてカタツキから、白模様の中に黒地が築かれつつあります。

やっぱり、図2の時点ではこの左下の白模様を大きく評価しての白優勢だったのでしょう。その証拠に大きく黒に荒らされた後に勝率が一度五分まで変化しています。

左上の黒は弱く、右上黒もまだ付け入る隙はあるので油断はできませんが、黒に打ちやすい形勢なのでは無いかと思います。

LeelaZero先生の勝率は五分なので、白も悪くはないはずですが、個人的には中央から右下にかけての白石の形が地味に不安定な気がするので、やっぱり黒を持ちたいと思います。

(図4)

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作中でヒカルが「もっと前のオシが悪いんだ!」と叫んでいた手は、恐らくこれなのではないでしょうか?

実際にこの手で、LeelaZero先生の勝率がかなり下がっています。

右下とのつながりを重視して、赤丸の位置にコスミを打つのが良かったようですね。

確かにこの後の展開を見ると、右下と下辺黒がサカレ形になってしまっています。

(図5)

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作中でヒカルが「じゃあその前のツケコシがマズイんだ!」、恐らくこれなのではないでしょうか?

この手でもLeelaZero先生の勝率が落ちているのですが、だとするとヒカルの主張する悪い手はLeelaZero先生とも一致しているのですね。

その辺り、さすがと言うべきでしょうか?

ちなみに、確かにこのツケコシにはやりすぎ感がありますね。

右下白も不安定ですが、このツケコシで石の形が複雑になったことで、白も捌きやすくなったのではないかと思われます。

総括

いかがでしたでしょうか?

いよいよ次巻から北斗杯が始まります。

ヒカルの碁』もあとたった2冊ですが、何とも胸の熱い展開が待ち構えています!(次巻の書評はこちら