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『昭和オトメ御伽話(2)』仁太郎の変化の理由が明らかになる2巻の感想(ネタバレ注意)

 

前作大正処女御伽話に比べてどこかダークな雰囲気の昭和オトメ御伽話ですが、主人公である志磨仁太郎の3年間の変化がその雰囲気を作り出す一因になっていることは間違いなさそうです。

”からたち姫”と呼び、あれだけ慕っていた黒咲常世に対する態度の変化。

それが前巻で示された大きな謎で、「いったい何があったんだ?」って気になっていたところですが、その理由は今巻で仁太郎によって語られます。

また、前巻では前作大正処女御伽話からの登場人物である曲直部珠子が登場して大いにテンションが上がったところですが、今巻でもその珠子がストーリーの主軸に近いところにずっといる感じです。

もしかしたら、作者の桐丘さな先生は珠子のことを前作と今作の関連性を繋ぐ立ち位置のキャラクターとして考えているのかもしれませんね。

前作でも2巻で表紙を飾っていた珠子が、今作でも2巻で表紙を飾っているということをその根拠として考えてしまうのは穿ち過ぎでしょうか?

そして、2巻では前作のキャラクターが珠子以外にも登場し始めます。

前作は前作。今作は今作だとも思うのですが、やっぱり前作のファンとしては嬉しいものがありますね。

ちなみに、誤解しないで欲しいのは「そんなに前作のキャラクターが出てくるってことは、前作を読んでいない人には敷居が高い漫画なのでは?」と思う人がいたら、それは間違いだということです。

確かに昭和オトメ御伽話は前作大正処女御伽話を読んでいる人にとっては特別感のある作品ですが、読んでいない人にとっても新鮮に楽しめる良い漫画だと思います。

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本作の概要

3年間で大きく変化した仁太郎の常世に対する態度は突き放すようなものでしたが、珠子にはそんな常世のことを「好きに決まっている」と断言します。

前巻から冷たい態度を取りつつもどこか突き放しきれないでいる様子は伝わってきていましたが、それではなぜ冷たい態度を取り続けるのか?

その理由は、家出して志磨キネマで一緒に暮らすことになった常世に、仁太郎自身の口から語られるようになります。

本作の見所

曲直部珠子って格好良い女性だと思います

前巻登場してテンションが上がってしまった曲直部珠子ですが、非常に格好良い女性だと思います。

芯の強そうなところが良いですね。

大正処女御伽話での初登場時には義姉である夕月に初対面であるにも関わらず悪態を吐く悪女という役どころでしたが、実際の所は子供だっただけでツンデレっぽさが垣間見えてくるようなキャラクターでした。

そして昭和オトメ御伽話で描かれる曲直部珠子は、確かに大正処女御伽話で描かれていた志磨珠子の延長線上にいるキャラクターとして納得感があって、そうかもともとあんな悪女っぽかったのにこんなに格好良くなるものなのかと驚いたものです。

珠子が昭和オトメ御伽話大正処女御伽話の両作品の2巻で表紙を飾っていることは前述しましたが、比べてみるとちょっと雰囲気が変わっていることが分かりますね。

大正処女御伽話の時に比べて、昭和オトメ御伽話の珠子は物腰が柔らかそうな雰囲気が出てきているような気がします。

「そう云われて得心がいくと思う? 病気を治したいとうちに来た人を私がみすみす死なせるとでも?」

それでいて医者の卵として頑張る姿は芯が強そうで、ただ大人になって雰囲気が丸くなっただけでもないことが分かりますね。

「ドレスを買うくらいなら病院の備品を買うわね」

「この先医者になってたくさんの命が救えるのならどうでもいいの」

大正処女御伽話の初登場時は悪女っぽさが全開だった珠子ですが、実際にはメチャクチャ良い奴で、本当に格好良いと思います。

昭和オトメ御伽話では基本的に割烹着姿ですが、着飾った女性よりずっと魅力的ですよね。

今巻終盤に出てくる着飾った珠子も可愛いですけどね。

可愛いといえば、カミナリを怖がる珠子も、強い女性のイメージとのギャップが可愛らしかったと思います。

常世ってちょっとエロ可愛い?

「うちに何云うてもエエけどなぁ。仁太ちゃんを叩いたり侮辱するのは許さへんで」

継母からのイジメには決して反抗せずにからたちの木の側で泣いてばかりいた常世ですが、恐らく常世は「自分さえ我慢すれば」と思ってしまうタイプの女の子なのだと思われます。

その証拠に、常世ではなく仁太郎が継母に侮辱された時にはぶちギレしていました。

基本的には可愛らしい薄幸少女というイメージの常世ですが、自分以外のためには怒れるところはヒロインというよりも、主人公気質っぽい感じがしますね。

「ほんなら不良娘は出ていきますよって。行こ仁太ちゃん。ふしだらなことしてまおかなー」

ふしだらな不良娘と継母に言われて、売り言葉に買い言葉で家を飛び出し、仁太郎の暮らす志磨キネマに転がり込んでいきました。

「ふしだらなことしてまおかなー」というセリフ自体は継母への当てつけで本気では無さそうですが・・

「仁太ちゃん大きくなったねぇ」

もちろん背丈のことですよ?

分かっているのか分かっていないのか、超絶誤解を招くシチュエーションでしたけどね。(笑)

それに寝ている仁太郎に接吻しようとしたり・・

意図的なものも無意識なものも含めて、言動の節々が前巻に比べてエロ可愛い印象を受けました。

もしかしたら今巻に収録されていた特別編『幼キ道行』での常世がかなりエロい感じなので、それが本編の常世のイメージにまで影響してしまったのもあるかもしれませんけどね。

いや、だって特別編『幼キ道行』の常世が本編の常世に比べると相当大胆なものだったから・・

いずれにしても常世は、一言でいえばかなりのムッツリスケベだと思います。(笑)

仁太郎にいったい何があったのか?

思っていたよりもあっさりと仁太郎は自ら3年間の間に何があったのかを語り始めます。

「東京で何があったん? もし何かあったんならうちに話してくれへん?」

ですが、態度こそ変わっているものの恐らく仁太郎の常世に対する感情までは変わっていないであろうことは容易に想像ができたところです。

そう考えると、どんなに冷たくあしらっても自分から離れていこうとはしない常世を見て「それならば」と事情を話そうとする気持ちも分からないでもありません。

そして、そんな仁太郎の回想で仁太郎の義母が志磨珠代であることが明らかになります。

志磨珠代も前作大正処女御伽話から登場していたキャラクターで、珠子の実姉でもありますね。

かなり狂気的なキャラクターなので前作を読んだ人なら仁太郎に何があったのかまでは察せなくても、明らかに珠代の存在が仁太郎に影響を及ぼしているであろうことがうかがい知れると思います。

明確に原因は語られていないものの、常世に宛てた手紙を託した弟分の誠二は謎の死を遂げ、次に同じことをしたら手紙の受取人にいなくなってもらうと脅されたようですね。

「気に入らない者には容赦なく刃を向けられる。アナタも私と同じだからよ♡」

常世に危害を加えられると危惧した仁太郎はナイフを片手に珠代に抗議しますが、その際に弾みで珠代の腹を刺してしまいます。

しかし、刺された側の珠代からは何故か称賛の声。

仁太郎は確かに自分と同じ羅刹であると感じた珠代は喜んでいますが、その姿はなかなかに狂気的なものですね。

そして、仁太郎自身も自分に珠代と同じ羅刹であることを自覚してしまっていました。

自覚して、自殺することを考えていました。

最後に幸せになっている”からたち姫"を一目見て何も云わずに立ち去ろうとしていた仁太郎でしたが、実際に見たのは昔と同じでからたちの木の側で泣いている常世だったわけですね。

「ちゃんと突き放さんと。今度こそもっとうまくやらんと。そう俺は死なないとアカン。こいつが悲しむこともないくらい突き放さんと」

自殺するつもりの仁太郎にとって、泣きながら仁太郎を求める常世は不安だったに違いありませんね。

だから、常世が仁太郎を必要としないように突き放そうとしていたわけです。

しかし、それは仁太郎なりの優しさだったのかもしれませんが、たとえ仁太郎が羅刹だったのだとしても常世がそれを望むとは限りません。

「そんなん今度こそ耐えられへん。ほんなら・・いっそのこと心を鬼にしてうちを殺してから逝って」

仁太郎が自殺しようとしていることを知って、常世はかなり怒っている様子で、自分ひとりだけ逃げるように死ぬような選択肢は無いと仁太郎を諭します。

そこまで聡い考えがあったわけではないような気もしますが、仁太郎が死ぬことはイコール常世も死ぬことなのだと印象付けることで仁太郎を踏みとどめさせようとしていたのではないかと思います。

そして、仁太郎のために自分も変わるのだと髪をバッサリと切ってしまった常世の晴れやかな表情がまた良いですね。

物語の今後の方向性の考察

昭和オトメ御伽話は黒のイメージで描かれているらしいことに前巻のレビュー記事でも触れましたが、仁太郎の3年間はまさに黒のイメージでしたね。

そして、恐らく今後は仁太郎が自身の中にある羅刹と戦っていくような展開になっていくのではないかと予想されます。

仁太郎のサイコパスな義母である珠代。

常世のことを商品としか見ていない継母。

2人の置かれている状況は、いつ仁太郎の中の羅刹が顔を見せてもおかしくなさそうなものですよね?

そんな状況にどう立ち向かっていくのかが今後の見所なのかもしれませんね。

表紙裏のおまけ漫画はずっと野球路線で行くのか?

時速180キロで走る暴走車を捕球するキャッチャー・リゼ。

何を言っているんだという感じですが、表紙裏のおまけ漫画です。

どうやら昭和オトメ御伽話の裏表紙は野球少女路線で行くみたいですね。(笑)

本編とは全く関係ないんですけど、こういうの結構好きです。

総括

いかがでしたでしょうか?

最後に前作の主人公である珠彦とヒロインの夕月の息子・立花月彦が登場し、後ろ姿だけですが夕月まで登場しています。

とてつもなく「先が読みたい!」って気持ちでいっぱいになる引きですね。(笑)

僕は昭和オトメ御伽話を連載で読むものではなく単行本で一気に読む方が良い作品だと思っているので、そこは3巻の発売をおとなしく待つ所存ですが、これはなかなか待ち遠しいものです。

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ちなみに、今巻の発売日は元号が令和に変わった直後。

単行本の帯にも「令和に語り継ぐ昭和の恋浪漫」と銘打たれています。

元号をタイトルに据えた漫画の最新巻が、元号が変わった直後の発売するというのも面白いですが、このまま平成・令和とシリーズを続けていったりされたら面白そうですよね。