『ザ・ショーマン(2)』内村航平が監修する体操漫画の感想です。
体操を知らない人でも、日本人なら誰でも知っている体操選手。
内村航平選手が監修を務める体操漫画『ザ・ショーマン』の最新巻の感想です。
スポーツ漫画は数あれど、真面目に体操をテーマにした漫画というのは珍しいのではないでしょうか?
僕が知っている限りだと、昔アニメ化もされた『ガンバ!Fly high』くらいになります。かなりの名作で、実は僕も数年に一度くらい読み返しています。
そして、『ザ・ショーマン』は『ガンバ!Fly high』の菊田洋之先生の描く新しい体操漫画となります。
『ガンバ!Fly high』のような雰囲気を懐かしみつつも、新しい現代の体操が描かれていて時代の流れを感じることもできます。
ちなみに、『ガンバ!Fly high』は往年の名体操選手・森末慎二選手とタッグを組んで描かれた漫画で、内村航平選手も本作品のファンであるとのこと。インタビューで尊敬する体操選手として『ガンバ!Fly high』の主人公である藤巻駿を上げたこともあるほどの筋金入りらしいですね。
そんな内村航平選手が20年の時を経て『ガンバ!Fly high』の菊田先生とタッグを組み描かれた作品。『ザ・ショーマン』には、内村航平選手がモデルになっていると思われる選手も登場し、とても面白いですよ!
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本作の概要
東京五輪を目指す若き体操選手たちが集められた『体操次世代プロジェクト』。
選考が進み、ついに最終選考が始まります。
ルール無用の自由演技で一人一種目「魅せる体操」で、集まった人たちを感動させる体操を演じること。
面白いようでいて、選考される側にとっては非常に難しそうな審査。
思うような演技ができない選手も続出する中、翔馬やタケルがどのような演技を魅せるのかに注目です!
本作の見所
女子金メダリストの演技
前巻のラストで女子金メダリストの演技を完コピした鬼塚マイケル。
体操って種目にもよりますが男子と女子で随分と演技内容が違います。特に床の演技は大きく違う印象がありますね。
女子の床の演技には音楽も付いていて、体操の技を決めるだけではなく、華やかなダンスのような要素もあり、元より男子の演技よりも魅せることに向いている気がします。
しかも、それを男子の選手が演じてみせることのインパクトは考えただけでも大きいですよね?
それに女子とはいえ金メダリストの演技の完コピ。実力の高さまでアピールしてみせています。
後に続く選手の技も相当凄いものなのだと思いますが、魅せ方で負けてしまっていることは明らかですね。
「すごいけど、普通?」
鬼塚マイケルの後に続く演技に対する評価ですね。
もしかしたら、得点を付けたら後に続く選手の方が高かったりすることもあるのかもしれません。
テレビで体操を見ていたら、ダイナミックな演技をする選手の得点が低かったり、地味に見える演技の得点が高かったりもするので、素人目に見える凄さと玄人目に見える凄さは別物なのだと思いますが、今回は魅せる演技が求められている。
つまり、そういう意味で素人目に見えて面白い鬼塚マイケルの演技の方が趣旨に合っていたことは間違いないでしょう。
あん馬の魅力
スポーツ中継を観戦する時、体操はかなり好きな部類に入りますが、あん馬は地味に見えてあまり好きではありません。チャンネルを回す好機と捉えているまであります。(笑)
というのも、正直誰の演技も同じように見えて、技の名前を言われても「えっ、いつ技を決めたの?」とわからないことが多い。
しかし一方で、ずば抜けた演技をする選手がいたら相当目立つ種目であることも間違いないような気がします。
あん馬以外の種目に比べて素人目には凄さがわかりづらいあん馬。トップクラスの体操選手の演技でも、みんな同じように見えてしまいますが、あん馬を得意とする一部のスペシャリストの演技には目を見張るものがありますよね。
「あん馬は最高のエンターテイメント」
潮田凪はそんなあん馬で魅せます。
大きな旋回。そしてプロペラが上に行ったり下に行ったりする派手な技に観客は惹き込まれることになりました。
それにしても、このあん馬のシーンで思いましたが、菊田先生の体操の演技を描く上手さって全く衰えていませんよね。それこそ地味な部分ですが、菊田先生以上に体操の演技を上手く描く漫画化はいないのではないでしょうか?
つり輪って一番体操選手が人外に見えます
つり輪もあん馬と並んで素人目には地味に見えてしまう競技。
あん馬よりは動きが派手だけど、つり輪の静止技はあん馬以上に地味に見える。もちろん、その凄さは伝わるものの同時に必死さも同時に伝わってくるのがつり輪の静止技なのだと思います。
「難しい事をいとも簡単にやってみせるのが体操・・」
作中でキングがそう言っていますが、つり輪の静止技でそれを実現できている選手はきっと少ないのだと思います。体操のTV中継を見ていても体の震えが伝わってきて何だかハラハラしますよね?
しかし、堂林幹宏のつり輪の演技は、静止技中に笑顔を見せることで「簡単にやってみせる」ことを実現しているのだと思います。
演技のバリエーション
平行棒では2人の選手が違った演技を魅せます。
檜山一麿は高難度の技のオンパレードのど派手な演技。
伊達司はある意味地味で丁寧な演技。
魅せる体操としてはやはり檜山のようなど派手な演技の方が目を引くような気もするのですが、伊達のような丁寧な演技も恐らく実際に見たら、その美しさに魅せられることになるのだと思われます。
そういう美しい体操と言えば、本作の監修を務める内村航平選手の代名詞でもありますよね。
伸身コバチ
体操の花形といえばやっぱり鉄棒ですよね!
そしていよいよ主人公・翔馬の演技です。
何となく、この翔馬というキャラクターには『ガンバ!Fly high』の藤巻駿を彷彿とさせる所がありますが、この鉄棒の演技でもそういう所を魅せてくれます。
非常の高い一度のコバチ、そして演技中に「もしかして、できるかも」とやったことのない技である伸身コバチを決めようとします。
しかし、さすがに1回目は失敗。その後何度も挑戦し、キングのアドバイスもあり5回目で成功させます。
とはいえ、演技は失敗しており得点を付けるとかなり悲惨なことになっていることが予想されます。一方で、翔馬の挑戦する姿に観客は魅せられている。
選考会の趣旨的には成功にも見えますが、結果にどう響くかは微妙な演技でした。
まあ、メタい考えをすると翔馬の前に鉄棒の演技をした氷室があからさまに当て馬のようなキャラクターだったので、氷室が落ちて翔馬が合格する未来は見えていたような気もしますけどね。(笑)
五回連続放し技
そして一時は氷室の挑発に乗って熱くなっていたタケルの演技。
翔馬の演技の後で冷静さは取り戻したようですが、魅せた演技は超熱いものでした。
五回連続放し技。鉄棒にも意外と放し技を含まない演技で高得点を取る選手も見かけますが、やっぱり鉄棒の放し技こそ体操の花形ですよね。
ちなみに、僕が知っている体操の技の大半は『ガンバ!Fly high』で知った鉄棒の技だったりします。『ガンバ!Fly high』でも藤巻駿が連続放し技を度々決めていましたね。
しかし、五回連続というのは無かったはずです。
というか、普通の大会とかでやるような演技ではないのでしょうね。
コバチ。
伸身トカチェフ。
開脚トカチェフ。
屈伸トカチェフ。
リンチ。(トカチェフの捻り)
うん、凄く迫力がありそうですね。
日本や中国の体操選手の鉄棒の演技は完成度が高いものの割と皆似通って見えますが、世界選手権の種目別鉄棒とかを見ていると、得点で劣る選手の演技が意外とダイナミックで魅力的に見えたりします。
放し技の連続で、ちょっと乱れたりしている部分があるのは素人目にもわかるのですが、それでもそういう演技は迫力があって魅力的に見えますよね?
今回タケルが魅せた演技は、そういう演技だったのかなぁと思っています。
合格者は?
そして、いよいよ合格者の発表です。
まあメタい推測は当たっていて、氷室は落ちましたが翔馬は合格しました。
さて、1巻から序章的な話も無く早々と始まった選考会でしたが、それはついに終わりました。
面白くはあるものの、どのような方向に進んでいくのかが未知数の作品だったところが、次巻以降でちょっとわかってくるかもしれませんね。
続きも楽しみにしています!
総括
いかがでしたでしょうか?
良い意味で20年も前の漫画である『ガンバ!Fly high』を彷彿とさせる漫画『ザ・ショーマン』。
是非とも、『ガンバ!Fly high』のように長く続けて欲しいと思います。
ちなみに、表紙裏の作者コメントを見ると、相当内村航平選手がこの漫画に入れ込んでいることが伺えますね。(笑)
内村航平選手のコメントが熱いです!