『タイムスリップオタガール(4)』順調に1996年を満喫する漫画の感想(ネタバレ注意)
いわゆるタイムリープものの作品には、どちらかといえば取り返しのつかない物事のやり直しを描いたようなものが多いと思います。
自分自身を含む人の死なんかは定番ですよね。
いかにしてそれを回避していくのか思考錯誤しながらもなかなか上手くいかないというのがそういった作品群のお約束ですが、そういう意味で『タイムスリップオタガール』はちょっと変わったタイムリープが描かれています。
何というか、普通に過去に戻って青春のやり直しをただただ純粋に楽しむ主人公が描かれているだけという、事件性も何もない作品なのですが・・
しかし、それがこの『タイムスリップオタガール』の良いところ。
誰だって一度は「もし過去のどこかのタイミングに戻ってやり直すことができたら」って思うことはありますよね?
まさにそういった願望が実現したかのような漫画が『タイムスリップオタガール』なのですが、意外とこうやって過去に戻って楽しんでいるだけの作品って、一番憧れのシチュエーションって感じがするワリにはあまり見かけないと思います。
いわゆる「強くてニューゲーム」ってシチュエーションですが、僕も大人である今の知識や知恵を持ち越して小中学生とかに戻れたらって思うことがあります。(笑)
そういえば、ドラえもんでものび太が小学校低学年くらいに戻って無双するエピソードがありましたよね。あれは小五でさっそく追いつかれてしまっていて、やり直しを生かせていませんでしたけどね。(笑)
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本作の概要
大人になると子供より開き直りが平気になってくるものですが、先生に自分の性癖を聞かれてしまったり、開き直り切れないこともあるようです。
1996年を満喫することにも慣れてきた風のはとこのテンションがどんどん上がっていっているような気もしますが、はしゃいでる大人のテンションの中学生って魅力的だなって思えるような内容になっています。
本作の見所
漫画家志望の中学生
「男の子のハダカ描くの好き」という性癖を発言しているところを男性教師に目撃されてしまったはとこ。
中学生女子にしてはなかなかのメンタルの強さを兼ね備えている中身はアラサーのはとこですが、さすがに少々取り乱してしまいます。
いや、一定数BL趣味の女性がいるらしいことは知っていますが、自分がそうだと言っている人は見たことが無いので、普通は隠しているものなんでしょうね。
男がちょっと百合っぽい作品を読んだりすることもあるのと同じかなぁと思っているので、知ったとしても別に引いたりはしませんけど、ああも堂々と宣言しているところを見ると流石に引くかもしれません。
そういう意味では、この男性教師なかなか良い教師ですよね。
はとこが真剣に漫画家になろうとしているのを学年主任が否定しているのを応援しようとしてくれていたりするのが良いと思います。
そういえば、僕には将来の夢が無かったので(笑)、ちょっと普通から外れた将来の夢には教師は否定的になったりするものなのでしょうか?
僕が中学生の頃、まさに真剣に漫画家が夢だと公言していた女子がいましたが、はとこのように否定されてしまっていたりしたのかもしれませんね。
その辺、1996年と現代でも事情が違っていそうで興味深そうです。
中学生の金銭感覚
画材やら何やらを買いに来たはとこ。
大人の金銭感覚なら安いと感じる物も、中学生のお小遣いの範疇だと手軽には手が出ないというエピソードですね。
少ない軍資金を元手に何を買うのか悩んだり、消耗品であるトーンを友達とシェアしたり。
こういうやり繰りを見ていると子供の頃を思い出して何だか懐かしい気持ちになってきますよね。
僕も子供の頃は少ないお小遣いを上手くやり繰りして、今では買いたいだけ買ってる漫画やラノベも厳選して、「何巻が面白そうかな?」と同一タイトルの作品でもバラバラの巻数を買っていたりしていました。
こういうの、子供の頃は好きなものを好きなように買える大人が羨ましく感じられたものですが、今となっては忘れてしまった良い思い出ってノスタルジックな気持ちになりますよね。
納涼祭への誘い
はとこを納涼祭に誘おうと緊張しているリュータ。
中学生くらいって特殊で、異性を異性として見ることに変な緊張を覚える世代ですよね。
僕の場合、その頃は既に漫画やラノベの世界にばかり浸っていて本当に仲の良かった友人以外の人間関係は希薄だったのであまり意識した覚えはありませんが、例えば小学生と違って突然体育の授業の着替えが男女別々になるようなこととかは男女を意識させる違いとしては分かりやすいです。
その上で高校生ほど大人ではない。
そんな普通の中学生っぽいリュータに対してはとこの気軽なこと。(笑)
何とか納涼祭への誘いを切り出そうとしたリュータに食い気味で「行こう!!」と反応していましたが、これは中身が大人ってよりは子供を満喫しようとして小学生くらいまで戻ってるんじゃないかって感じました。
時に大人は子供より子供らしくなれるってね。(笑)
夏休みの宿題とはとこのミライ
学校の勉強って、大人になってから思い返すと素晴らしいにもほどがあって、そこまで真面目にやってなかったことを後悔するのってあるあるだと思います。
無限にも思える時間、半ば義務的に授業を受け続けるのを苦痛に感じたものですが、大人になってから思い返せばあんなんレクリエーション的なサービスタイムじゃんってなりますよね?
夏休みの宿題も昔は嫌いだったけど、1か月以上も自由時間があったらあんなん楽勝にもほどがある。
というか、大人になってから経験すれば楽しいとすら思えそうですね。
はとこも例外ではなく、最初は夏休みの宿題にも辟易しかけていましたが、いざやり始めると楽しそうでした。
「本当に・・私、違う未来に行くのか?」
そんな風に1996年を満喫しながらも、タイムリープ前に辿った道からは外れていきそうになっていることに若干ナーバスにもなっているはとこ。
この辺、どういう展開になっていくのか楽しみな部分ですよね。
中学生の喧嘩
友人同士で集まって何かに真面目に取り組もうとする時、その温度差にイライラする事ってありますよね。
熱い方の立場も冷めた方の立場も、ちょっとしたことなら誰でも経験があるのではないでしょうか?
大人なら適度な距離感でなんやかんや上手いことやっていくのでしょうけど、小中学生くらいってその辺の温度差の違いで感情的になりすぎてしまい、理屈抜きに喧嘩してしまうようなことってありますよね。
「何で相手が怒ってるのかわからない」ってことは時たま大人でもありますが、やっぱり子供の時に多かったような記憶があります。
そういうわけで、いわゆる「強くてニューゲーム」状態のはとこをもってしても、そんな理屈抜きの友達同士の喧嘩を仲裁することは難しいようですね。
はとこがどうしようと困っている所で今巻は終わりですが、これをどう落としどころを見つけるのかが楽しみですね。
総括
いかがでしたでしょうか?
よっぽど子供の頃にコミュ障だった人間でも、それなりに社会経験を積めば子供の世界の人間関係なんてぬるいものだと思いますが、実際はとこは実際の中学時代とは打って変わったコミュニケーション能力を発揮していました。
しかし、一方で子供に多い理屈ではない人間関係に悩まされたりもしています。
世代的に本作品の主人公であるはとこに近く、1996年と言えば僕は小学校中学年から高学年くらいでしたが、1996年の雰囲気も面白い『タイムスリップオタガール』は今後も楽しみにしていきたいと思います!