『とんずらごはん(1)』指名手配犯によるグルメ漫画という全く新しい漫画の感想(ネタバレ注意)
近年、グルメ漫画の多様化が留まることを知りませんが、そんな中でも「そうきたか!」と思わされたのが、この『とんずらごはん』です。
お嬢様によるグルメ漫画は比較的増えてきている印象がありますが、そんな中でも『とんずらごはん』は明らかに異質です。
何と『とんずらごはん』の主人公のお嬢様・小波沙羅は殺人の罪(冤罪)で逃亡中なのです。
逃亡中に出会ったグルメを紹介するという全く新しいグルメ漫画。
興味を惹かれつつも色物感がちょっと強いなぁと最初は思いましたが、意外にも普通に面白いグルメ漫画だと思いました。
逃亡中というそのシチュエーションが良いスパイスになっているし、沙羅が追われる原因となった殺人事件の謎というミステリー要素もあって、今後が楽しみな作品だと思います。
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本作の概要
箱入りの名家の令嬢である小波沙羅が、婚約者を殺害した殺人容疑で指名手配され、逃亡するという物語になります。
無実の罪で疑われていることを非通知で連絡してきた正体不明の人物に知らされたことで、沙羅の逃亡生活が始まります。
箱入りのお嬢様が逃亡生活の中で様々なグルメを堪能する。
たいへんな逃亡生活の中でもお腹が空くとはいえ、堂々と美味しい食べ物を堪能する沙羅に注目ですね。
本作の見所
ニュータンタン
いきなり殺人容疑で逃亡している小波沙羅。
非通知で謎の人物から逃亡を促された結果ですが、一度逃げてしまっただけに釈明の機会も失われてしまいました。
この謎の人物が沙羅にとって味方なのか敵なのかは分かりませんが、この段階ではどちらも可能性がありそうですね。
厳重な捜査網の中、知らずに並んだニュータンタンのお店。
警察もまさか逃亡中の容疑者が並んでいるとは思わないのか、目の前を通り過ぎても全く気付いていないのが面白いですね。(笑)
ちなみに、ニュータンタンというのは川崎市を中心に展開しているチェーン店だそうで、僕は食べたことがありません。
「あぁ・・次は何を食べましょう」
今まで箱入りだったお嬢様が触れたニュー体験。
殺人容疑で追われる逃亡者とは思えないような言動が目立って面白いです。
かつ丼
箱入りのお嬢様ですが、取り調べイコールかつ丼というベタなイメージは持っている沙羅。現実には警察官が容疑者にかつ丼を提供するようなことは便宜供与という犯罪であるということは有名な話ですが、どうしたってそのイメージは拭えません。
「心に沁みます。追い詰められた私の心にはあまりにも酷な味」
取り調べのイメージがある上に追われる立場だからか、涙を流して周囲の他の客に取り調べっぽいと思わせてしまうくらいの沙羅。(笑)
「私がやりました」
暴力的に見えて、実は優しくて繊細な味のかつ丼に沙羅は思わず自供してしまいます。いや、自供するような罪はないので途中でハッとして周囲に「やってません」と言い訳する沙羅が面白いですね。
「優しさの拷問!! ぬくもりの自白強要なんですね」
だからこそ便宜供与という罪になるのだというオチ。沙羅が捕まって取り調べられ、かつ丼をだされたら無実の罪を自供してしまっていたということになりますからね。(笑)
沙羅を追う刑事たち
沙羅を追いかける刑事たち。ベテランのオネエっぽい刑事と、若く頭の良さそうな刑事のバディですね。
「しおらしく自殺したり自首したりするような可愛げのあるタマじゃねえよ」
1話を読んで沙羅の人物像が分かっている状態でこの2人の会話を見るのは結構面白いですね。
沙羅のキャラクター性は、一見しおらしい感じなんだけど地味に言動に余裕があるというか、状況にあっていないような感じがするので、このベテラン刑事の認識は当たらずとも遠からずなのかもしれません。
「警察に追われている最中、呑気に飯食ってる女がマトモな人間なワケないじゃない!!」
どうやら、沙羅がタンタンメンを啜っていたり、かつ丼を食べている姿はしっかりと目撃されていたようですが、確かに逃亡犯がゆっくりお店で食事とは普通ではないのかもしれません。
そんな会話をしている刑事たちのすぐ傍でも、実は沙羅が美味しくハンバーグとハムカツを頂いているのが面白いですね。(笑)
食事を前にした沙羅の楽しそうな表情と、逃亡中というシチュエーションとのギャップが良いと思います。
牛タン
いつまでも同じ東京・横浜近辺をさまよっているのは危険だと、別の地を目指すことにした沙羅ですが、どこにいくのかと考える基準が完全に食べ物基準になってしまっています。
「1日くらい食べなくても死なないけど、捕まったら死ぬんですよ!?」
そうやって食べ物基準でものを考えてしまう自分を諫める沙羅ですが、恐らく捕まってもそう簡単には死なないはずです。
まず本当は無罪なのであればそう簡単に有罪にはならないでしょうし、そもそも初犯であれば余程のことが無ければ死刑にはならないと思うのですが、そこの所はどうなんでしょうね。
しかし、そんな風に自分を諫めたものの、結局はたまたま食べた牛タンが美味しくて本場の仙台を目指すことになってしまいました。(笑)
あと、めっちゃ良い表情をしていますが自転車をパクるのは犯罪です。
バームクーヘン
バームクーヘンはかなりピンキリで美味しいものは本当に美味しいイメージがありますが、もしかしたら沙羅が罪を着せられている殺人事件解決の糸口となる可能性がありそうです。
若手の刑事の推理によると、被害者の御厨誠にバームクーヘンを差し入れすることを知っていた者であれば、沙羅が犯人だと見せかけて犯行を行うことが可能なのではないかということです。
そして、沙羅に被害者へのバームクーヘンの差し入れを勧めたのは被害者の妹である御厨真菜。
「なんで、あの刑事がここにいる・・!? 何を嗅ぎまわってる・・」
そして、御厨真菜の少なくとも何かしら事件に関与してそうな反応。
あまりにも露骨なので、彼女が犯人だという考えは短絡的すぎるかもしれませんが、御厨真菜が何を知っているのかは今後の見所の一つとなることは間違いなさそうですね。
メガ盛り(お寿司)
沙羅がお腹を空かして泣いているかもしれないと心配している母親をよそに、メガ盛りのちらし寿司を堪能している沙羅。
ひったくりから全力で荷物を取り返したり、疲れているからとメガ盛り丼を堪能したりと、やっていることが逃亡中のお嬢様とは思えないくらい豪胆です。
しかし、いくらお腹が空いているとはいえ、ご飯4号の重量2キロの丼ぶりとは、僕も相当食べられる方ですがこれは流石に無理です。
逃亡中で追い詰められた人間の本気ということでしょうか?
円盤餃子
仙台を目指し、自転車で随分と遠くまで逃げてきた沙羅。
道中の福島で立ち寄ったのは円盤餃子の店。そして、店のテレビではFBIの超能力捜査官が沙羅の居所を透視する番組が放送されています。
そんな番組を見ながらも黙々と餃子を食べ続ける沙羅が豪胆すぎます。
しかし、この捜査官の透視はあまりにも的を得たもの。
「南にも美味しいものはたくさんありますよね!!」
流石に見透かされたことを怖がった沙羅は南へと進路を変更します。
美味しいものが南にもあると自分に言い聞かせているのは、もはやご愛敬ですね。(笑)
温泉饅頭
沙羅が昔テレビ番組で見たという死刑の様子。最後に出される饅頭なんて味なんてしないだろうと死刑を怖がっている沙羅ですが・・
「人生最期とわかっている食事ならば・・これはむしろ・・むしろなおさら・・」
おいおい何を考えているんだとツッコみたくなりますが、ページをめくれば温泉街で温泉饅頭を嗜む沙羅の姿が!
いや、死刑前に最後に食べる饅頭を思い出して、饅頭食べたくなってるんじゃないか!
もはやこのオドオドしながらも豪胆な沙羅のキャラクター性は定まってきましたね。
「絶対に死ねません」
家族のことを思ってとか、無実の罪を被せられた無念とか、そんな理由じゃなく美味しいものが食べられなくなるからという理由での決意。
これまた豪胆ですが、この考え自体は分からなくもありませんね。
食べ物でなくても、死が怖いと思う理由が、好きなものに触れられなくなるということであるのは、案外普通のことなのかもしれませんね。
スープ入り焼そば
温泉街に来て温泉に入らないのは嘘でしょう。
僕も温泉好きというわけではありませんが、さすがに温泉街に来て温泉に入らない選択肢はないと思います。
沙羅も同様ですが、そこは逃亡中の殺人容疑者。
無断で入浴時間外の温泉に侵入しますが、旅館の息子・八屋寅彦に見つかってしまいます。
裸を見られた羞恥心よりも大きな声を出させないように口を封じることを優先してしまうあたり、豪胆に見えても追い詰められていることがわかりますね。
いや、思春期の少年に裸のまま覆いかぶさり口をふさぐ方が豪胆か?
ともあれ、年齢を1歳サバ読みつつ上手い嘘で誤魔化しました。
そして、寅彦に案内されたのはスープ入り焼そばの店。
何なんでしょう。味が想像できません。ググって写真を見てみても、シャバシャバしてそうであまり美味しそうではありませんが、どうなんでしょうか?
しかし、沙羅はとても美味しそうに食べています。
個人的にはあまり惹かれませんけど。
そして、お金にも困っている沙羅は、何と寅彦の温泉旅館で働くことになりました。
逃亡生活の中、初めての潜伏。どんな展開になっていくのか今から楽しみですね!
総括
いかがでしたでしょうか?
沙羅の逃亡生活の今後。なぜ沙羅は殺人の罪(冤罪)で追われることになってしまったのか等、気になることがたくさんありますね。
1巻ではあちこちへ逃亡していましたが、次巻は温泉旅館での潜伏生活が始まるようです。
どんなグルメが登場するのか、沙羅を追う刑事はどうするのか、御厨真菜は何を知っているのか、次巻以降も楽しみな要素が盛りだくさんです。