『通りがかりにワンポイントアドバイスしていくタイプのヤンキー(1)』タイトル通りの漫画の感想(ネタバレ注意)
『通りがかりにワンポイントアドバイスしていくタイプのヤンキー』は、いわゆる不良がちょっと良いことをしたら、ギャップでもの凄く良いことをしたように見えるという状況をとことんまで突き詰めたような漫画です。
まあ、もしかしたら過去に何かあったとかあるのかもしれませんけど、今のところ主人公の桜井さんは見た目が怖いだけのただの良い人。
しかし、誤解されがちな外見とは裏腹に誰よりも人に対して親切なのです。
あと、高校生くらいかと思いきや成人しているらしいです。
また、桜井さんが出会う登場人物たちに意外と相関関係があるのも面白いです。
1巻時点では伏線的に仄めかされているだけの部分もあったりしますが、こうして登場人物の間に実は関連性があった方がマンネリ化しなさそうで面白くなっていきそうな気がしますね。
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本作の概要
桜井さんは見た目は完全にヤンキーで、目つきも悪くどうしたって周囲から怖がられてしまいます。
そんな桜井さんを前に、相手が本当にヤンキーなら絡まれてしまいそうなシチュエーションに遭遇した人たちが、絡まれるどころか前後の脈絡からその人が欲しいであろうワンポイントアドバイスをして去っていきます。
そのワンポイントアドバイスがまた意外とハイクオリティーで、怖い見た目と親切心のギャップだけではなく、その知識にもギャップが感じられるのが面白い漫画だと思います。
本作の見所
桜井さんのワンポイントアドバイス
フィクション作品の様式美の一つに、不良が良いことをしたら普通よりも良いことをしているように見えるというものがありますよね?
不良が猫を始めとする小動物を可愛がったり、老人や子供に手を差し伸べたり、普段の行いからは想像もつかない人情味を見せるギャップに魅力を感じるという仕組みで、有名どころだと大長編『ドラえもん』のジャイアンなんかがまさにそうだと思います。
この辺はかなり昔からの様式美ですが、近年では外見から誤解されがちだけど実はそもそも良いヤツみたいなケースも多いと思います。
目つきが悪くて周囲から怖がられているけど、実は生まれつき目つきが悪いだけ、みたいな。
『通りがかりにワンポイントアドバイスしていくタイプのヤンキー』の桜井さんの場合は、過去に何かありそうな気配もあるものの、今のところどちらかといえば後者のタイプだと思われます。
ちょっと面白いのは、ただ良いヤツなだけではなく少々お節介な一面がある点。
桜井さんの周囲のキャラクターが陰から桜井さんの実は良いヤツな一面を垣間見るというよりも、直接対面して何か怖いことを言われるかと思いきや、困っていることに対してワンポイントアドバイスをして去っていくんです。
何でこれが面白いのかって聞かれると意外とうまく説明できないのですけど、なんかツボるんですよね。(笑)
また、桜井さんの喋り口調も外見と似合わずに独特。
「ちゃんと謝れるの偉いね・・大丈夫、犬の柄が入ってかっこ良くなった」
アイスを片手に走る子供が怖い人の足にぶつかってズボンを汚してしまうシチュエーションは定番ですが、優しく大丈夫だと言い・・
「でも猫ちゃんにも個体差あるから焦らず気長に・・なつくといいね」
飼い猫に引っかかれた女子高生にはこのアドバイス。
ヤンキーっぽい外見には似つかわしくないと思いつつ、じゃあどんなキャラクターだったらしっくりくるかなぁ~と考えてみたら、何となく優しいお姉さん風のキャラクターのセリフだと考えるとしっくりくるような気がします。
あまりにもギャップがあって、それが面白いと思います。
桜井さんの弟と見て見ぬふり
桜井さんの弟は、桜井さんと違って外見的にも人好きのする感じの好青年ですが、若干ブラコンの気がありそうです。
「俺ああいうの気に食わないんだよね。ヤンキーって元々周りに迷惑かけまくってきたろうに、ちょっといいことしただけでその過去帳消しみたいな」
そう言って桜井さんを揶揄する若者に迫っている姿は、桜井さんよりずっと怖いのが面白いですね。(笑)
しかし、作品の性質上この若者はかなりイヤミったらしい嫌な奴として描かれていますが、気持ちはわからなくもないですね。
桜井さんの内面も知らずに言っている点はいただけませんけど、本当に普段悪さをしている人間がちょっといいことしただけで・・ってのは納得できないものがあります。
個人的には、良いことをした事実と悪いことをした事実は別々に評価するべきもので、上書きされるようなものではないって思うんですよね。
どんなに大長編『ドラえもん』のジャイアンが良いヤツでも、のび太をいじめるのはダメなんですよ。
繋がっていく登場人物たち
『通りがかりにワンポイントアドバイスしていくタイプのヤンキー』はショートエピソードの寄せ集めなのかと思っていましたが、読み進めると桜井さんの周囲にいる登場人物同士の関係が明らかになってきます。
実は桜井さんが良い人だと知っている人の、そのまた知人へと輪が広がっていく感じが面白いですよね。
まだ桜井さんのことを知らない立場からすると、妹が、友達が、怖い人とつるんでいるように見えてしまうけど、どこかで桜井さんの人格に気付いていくって流れが良いと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
表紙の桜井さんは怖いですけど、何だかほっこりと優しい気持ちになれる良い漫画だったと思います。
僕はtwitterでは漫画を基本的に読まないけど、つい今巻に載っていない話を少し覗き見してしまいました。
とはいえ、個人的には単行本で読みたい派なので是非とも続きを楽しみにしたいと思います。