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『幽遊白書(10)』短めだけど濃密な名作の感想(ネタバレ注意)

 

魔界の扉編も佳境に差し掛かってきた『幽遊白書』の10巻です。

次作である『HUNTER×HUNTER』を彷彿とさせるようなトリッキーな能力も魅力ですが、ラスボスの仙水忍はやっぱり王道的な少年漫画のバトルを見せてくれます。とはいえ、多重人格という特殊なメンタルのキャラクターというのもまた『HUNTER×HUNTER』を彷彿とさせるような気もしますね。

そんな謎めいたキャラクターであった仙水忍のベールがはがされていく10巻ですが、ゲームマスターという最も『HUNTER×HUNTER』っぽい能力を使用する天沼月人との戦闘(?)シーンにも注目です。

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本作の概要

桑原を救出するために浦飯幽助たちは入魔洞窟に突入していきますが、そこにはゲームマスターの天沼月人が待ち受けています。海藤優のタブーと同じく力押しでは突破できない能力を相手に最後に活躍したのはやっぱり蔵馬でしたが、天沼月人自身が気付いていなかった仙水忍のとある罠に気付いていた蔵馬は、それでもなお非常に天沼月人に勝利します。

そうしてたどり着いた入魔洞窟の奥には仙水忍が待ち受けてい、ついに最終決戦が開幕していきます。

本作の見所

ゲームマスター

実は魔界の扉編で一番面白いのではないかと思っているのが、ゲームマスターこと天沼月人と蔵馬の戦いです。

少年バトル漫画でゲームというと『HUNTER×HUNTER』のグリードアイランドを思い出しますが、『幽遊白書』でもゲームを題材にしていたのですね。

実在のゲームを現実にするような能力で、天沼月人の能力のテリトリー内ではどんな人物もゲームのルールに則ったことしかできなくなります。飛影も炎が出せなくて自分は役に立たないと眠ってしまってしましました・・って、黒龍派を打たなくても寝るのかよってツッコミたくなりますね。(笑)

しかし、このエピソードの興味深いところは天沼月人自身が自分の能力の本当の怖さに気付いていないという点ではないでしょうか?

実在のゲームを現実にするということは、ゲームの登場人物が死ぬような事態までもを現実のものとしてしまいます。そして、今回の場合は浦飯幽助陣営は何度負けても諦めない限りは死ぬことはありませんが、天沼月人の敗北はイコール死を意味します。

天沼月人は明らかに仙水忍のしようとしていることを分かってはいても本当の意味で理解できていないような子供で、これはそんな子供を簡単に殺すことはできないという心理を逆手に取った仙水忍の時間稼ぎだったのです。

蔵馬がその事実を天沼月人に説明することで動揺を誘い、そこで初めて自らの能力の危険性を知ったが能力を中断することができない天沼月人にトドメを刺すのですが、この時の二人のやり取りがとても印象的でした。

恐らく蔵馬もできることなら天沼月人を殺したくはなかったはずです。

殺したいわけではなく殺さなければならないと考えているだけに、ある意味ではその決意は固いはずで、そんな決意を持った蔵馬に天沼月人は命乞いをするのですが、これもある意味ではただの殺人鬼への命乞い以上にどうにもならなさそうで、なんとも言えない哀しさと怖さが入り混じったエピソードでした。

多重人格の仙水忍

入魔洞窟の奥で相まみえた浦飯幽助と仙水忍。ついに最終決戦が始まるかと思いきや、実は最初このシーンを見た時には仙水忍がラスボスにしてはあまり強くないように感じていました。

経験で上回る仙水忍が浦飯幽助をあしらっているものの、慣れてくれば浦飯幽助の方も順当に闘えていけそうな雰囲気に感じられたからです。

いくら仙水忍が戸愚呂弟と違ってトリッキーそうなタイプ、浦飯幽助も戸愚呂弟が豪速球を投げるなら仙水忍は魔球を投げてきそうだと称していましたが、それにしたって圧倒的な強者を前にしているような感じは受けませんでした。

しかし、その代わりに仙水忍は想像以上にトリッキーな奴でした。

実はこれまでの仙水忍はミノルという名の別人格。なんと仙水忍は7人の人格を有する多重人格者だったのです。

なるほど、つまり仙水忍との最終決戦が始まっているのかと思いきや、実のところ本当の意味では仙水忍とはまだ会ってすらいないことが判明したわけですね。

そして、浦飯幽助がミノルにカズヤといった仙水忍の別人格を圧倒し始めた時に初めて主人格の仙水忍が登場します。

いよいよ追いつめてきたと思われた時に「はじめまして」と主人格が登場するシーンはとても印象的ですよね。

そして、あっという間に浦飯幽助を圧倒してこれまでの仙水忍の別人格とは文字通り別物であることをその実力で示します。

アッサリと浦飯幽助は敗れてしまい、それこそ戸愚呂弟と相対していた時以上の実力差を感じさせられる敗北で、この後どうなるのかが非常に気になる所です。

総括

いかがでしたでしょうか。最後に仙水忍も言っていましたが、「本当のフィナーレはこれから」です。

アッサリと仙水忍の主人格に殺されてしまった浦飯幽助と怒れる仲間たち。

僕が初めてこのシーンに触れたのはアニメ版でしたが、いずれにしてもこの先どのような展開になるのか予想が難しいところでした。

もちろん、ネタバレになりますが浦飯幽助はただ死んだだけではありません。

では死んだと思われた浦飯幽助に一体何が起こるのか?

それが次巻の最大の見所なのではないかと思います。