『走れ!川田くん(1)』運動音痴な少年が長距離ランナーとして才能を発揮する漫画の感想(ネタバレ注意)
『走れ!川田くん』は、運動音痴な上に成績も悪く、人間関係において要領が良いわけでもないという、良いとこ無しな主人公が校内マラソン大会で長距離走の才能に開花するところから始まるマラソン漫画です。
マラソン競技は絵的に地味になりそうなものなのでスポーツ漫画としても珍しいのかと思いきや、意外とマラソンをテーマにしたスポーツ漫画は少なくないですよね。
僕が長距離経験者だから目に入りやすいというのもあるかもしれませんけど。(笑)
他がダメな主人公がある分野では才能を発揮するというテンプレートな展開ではありますが、それだけにストーリーに隙が無く面白いですし、長距離の練習法やその効果に触れられている点も興味深いです。
正直なところ、読む前の第一印象は「地味そうな漫画」だったのですが、読んでみたら続きのweb掲載分を全部読んでしまおうと思うくらいに面白い漫画でした。
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本作の概要
100メートルを18秒で走る高校生男子・川田ゲン。多くの男子高校生が12~14秒で走ることを考えればあまりにも鈍足ですが、校内マラソン大会でまさかの長距離走の才能が開花します。
その才能が認められ陸上部の駅伝メンバーに選ばれた川田ゲンは、その身体を長距離選手のものに作り替えるように練習を開始します。
本作の見所
校内マラソン大会
僕は小中高のいずれでも経験したことが無いので正直なところ都市伝説のように感じているのですが、校内マラソン大会は学園ものの定番エピソードでもありますよね。
しかし、普通は物語ある程度進展した時に描かれるエピソードという気もしますが、陸上漫画なだけあって『走れ!川田くん』の場合は校内マラソンのエピソードから開幕します。そういうわけで、考えてみれば珍しい導入という気もします。(笑)
そして、主人公の川田ゲンは高校生にして100メートルを走るのに18秒もかかる鈍足。小学校中学年並の速度ですが、どうやらこの川田ゲン。運動ができないだけではなく、勉強も苦手で要領も悪いタイプの人間で、かんたんに一言で表すとのび太君のようなキャラクターとも言えますね。
そして、のび太君といえばダメなところも多いけれど、その分特技は突き抜けていたりしますよね。あやとりだったり、射撃だったり、昼寝だったり。(笑)
そして、川田ゲンの場合はそれが長距離走だったようです。
誰からも期待されずに、しかし弟には格好良いところを見せたくて、何とか小学校の前は格好良く駆け抜けて完走することだけを目標に気楽に走っていたら、気付かない内に校内記録を塗り替えるほどのハイペースで走り抜けてしまったことでその才能が衆目のものとなります。
10キロを31分39秒。100メートルを18秒で走る人間が、一体全速力の何割の速度で走り切ったのか考えるだけでも恐ろしいですね。
そうやって唐突に才能が開花するところから始まる漫画はスポーツものに限らず少なくありませんが、飽きない展開というか、読んでいて非常に爽快な気持ちになれますね。
長距離走の効果
東大を目指す学年トップの高見健吾は正直なところあまり協調的な性格ではなく、校内マラソン大会に対しても労力の無駄だと否定的でした。
しかし、そんなキャラクターだからこそ合理的な説明が無ければ走りたがらないので、彼への説明を通して長距離走の効果を機械的にではなく教えてくれるのですが、それもまた『走れ!川田くん』という漫画の魅力なのではないかと思います。
有酸素運動をすると脳の毛細血管まで広がって血流が良くなり、結果的に頭も良くなる。そんな説明を受けて校内マラソン大会に参加した高見健吾は、川田ゲンには及ばないまでも優秀な成績を収めたため、川田ゲンと一緒に初心者として駅伝チームに加わることになりました。
そして、初心者二人が最初に行うことになった練習がLSDです。
LSDとは、怪しいお薬と同じ名前ですが、当然そんなものではなく長距離走の練習の一つです。歩くより少し早いくらいの速さでゆっくりと走ることで毛細血管を活性化させ、より強度の高い練習に耐えられる体を作るための練習ですね。
『走れ!川田くん』ではキロ12分というとんでもなく遅いペースでLSDとしてもかなり遅い部類かと思いますが、この遅いペースで走り続けるというのが意外とキツイくて、疲れてくるとペースが上がってくるという、疲れるイコール遅くなると思っている人にとっては不思議な経験ができます。
そして、そんな専門的な練習を機械的ではなく面白く説明してくれるのに高見健吾というキャラクターが一役買っているように感じられました。
ちなみに、このLSDという練習法をタイトルにした『LSD〜ろんぐすろーでぃすたんす〜』という四コマ漫画もあったりします。女子たちが姦しい萌え四コマ漫画としては珍しいテーマで面白いですよ。
総括
いかがでしたでしょうか?
少なくないと言ってもそれなりに珍しい陸上競技の漫画ですが、個人的にはやっぱり中長距離がテーマになっている作品が面白いと思えます。
それはやっぱり、競技時間が長いからそこにドラマがあるような気がするからなのではないかと思います。
僕が初めて読んだ陸上漫画は『なぎさMe公認』というラブコメよりの作品でしたが、競技初心者の天才が登場する点では『走れ!川田くん』と共通しています。
他の一定の技術が必要な競技と違って、走るという誰にでもできる競技だからこそある意味では才能の有無が分かりやすく、最初から活躍させるという展開に持っていきやすいのかもしれませんね。
実は、あまりにも面白くて『走れ!川田くん』のweb掲載分まで全て読んでしまったのですが、長距離の練習法やその効果についてまで分かりやすく描かれている点も含めて面白く、今後が楽しみな漫画のひとつとなりました。