『幽遊白書(3)』短めだけど濃密な名作の感想(ネタバレ注意)
3巻目には乱童編のクライマックスと四聖獣編が丸ごと収録されています。
そう考えると相当に濃密な感じがしますよね?
乱童編にしても、四聖獣編にしても、『幽遊白書』という作品においては節目となる重要なエピソードでそれぞれに思い出深さを感じる人も少なくないと思いますが、改めて読み返した時にその短さに驚かされると思います。
あれだけ濃密だった物語がページ数にしたらそれほど多くないなんて・・ってな具合ですが、それはそれだけ1ページ1ページが濃密だからこそなのでしょう。
それに乱童編での浦飯幽助は霊能力者としてはまだまだという感じで、かなりのラッキーが絡んだ勝利を掴んだような印象もありましたが、四聖獣編くらいからはバトル漫画の主人公らしさに追い付いたという感じがしますね。
蔵馬や飛影がいきなり仲間キャラとして登場する唐突感もありますが、そんな演出も含めて僕はこの漫画が好きです。
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本作の概要
誰が乱童なのか、それが明らかとなりついに乱童編はクライマックスを迎えます。
それで幻海の修行を受けることになった浦飯幽助は霊能力者として少し成長し、妖魔街の住む四聖獣たちが起こした事件の解決を指令として受けます。
人間に魔回虫を寄生させ殺人鬼にしてしまい、雪村螢子も殺人鬼にされた人間たちに襲われてしまうことになります。
雪村螢子がある種の人質のような立場に陥っている中、浦飯幽助は四聖獣たちのトップである朱雀との戦いに挑みます。
本作の見所
VS乱童
乱童編の面白いところは、ラスボスとなる妖怪が乱童であることが最初から分かっているにもかかわらず「いったい誰が乱童なんだろう?」というワクワク感があるところなのではないかと思います。
まあ、メタい推理ですが冷静に考えてみればトーナメントの主人公の浦飯幽助とは反対側にいる誰かであろうことはほぼ間違いないことでしょうし、そうであれば早々に桑原と少林の二人に絞られたわけですから、メインキャラである桑原を除外すれば乱童がイコール少林であろうことは早い段階で気付いて然るべきです。
しかし、僕は初めてこの乱童編に触れた時に少林が乱童であることには気付けませんでした。
良くも悪くも少林というキャラクターにはあんまりラスボスっぽさが無かったからです・・が、乱童という名前を考慮すると確かにしっくり来るところもありました。
前述した通り早い段階で少林が乱童の可能性に気付かせつつも、ラスボスっぽく無いキャラクターで最後まで乱童の正体を謎にした上で、結果的に少林が乱童であることが判明してもある程度の納得感がある。これは中々に興味深いストーリー展開だったのではないかと思います。
桑原と乱童の戦闘では、無邪気な少年っぽい笑顔のままで桑原を残虐に痛めつける乱童に不気味な怖さを感じたのを覚えています。
これは後に登場する他のラスボス級のキャラクターとは違った怖さですよね。
そして、そんな乱童と浦飯幽助との戦闘シーンも改めて読むと少々興味深いところがあります。
何が興味深いのかといえば、浦飯幽助の勝利がかなり偶然に頼ったものになっているところで、というかほとんど技におぼれた乱童の自滅のような形になっているのです。
バトル漫画の主人公のラスボスとの戦いにおいてこれは少々珍しいような気もしますが、霊能力者としての浦飯幽助の成長の必要性を示しつつ勝利を演出したということなのかもしれませんね。
蔵馬の初戦闘シーン
初登場時は敵キャラとして登場したにもかかわらず一切の戦闘シーンが無かった蔵馬ですが、当時のバトル系少年漫画の味方キャラとしては比較的珍しいキャラクター性だったのではないかと思います。
いや、インテリ優男風のキャラクターは一つの属性として確立されている気もしますが、今でも週刊少年ジャンプの作品だと比較的珍しいかもしれませんね。
ともかく、強敵として登場しつつもあまり強そうな風体ではなく、しかも戦闘シーンが無かった蔵馬の初戦闘シーンがここで出てきます。
四聖獣の一人である玄武との戦闘ですが、薔薇の鞭なんてシャレオツな武器で浦飯幽助を始めとする他のキャラクターとは一線を画する戦闘スタイルでのバトルシーンに注目ですね。
子供ウケという意味では、主人公の浦飯幽助のレイガンなんかは真似しやすいでしょうし、後に登場する戸愚呂兄弟のような見た目から強そうなキャラクターの方が良さそうな気もしますが、個人的にはちょっと気取ったところのある蔵馬の戦闘スタイルが好きでした。
桑原の活躍
乱童編でヌルっとバトル路線でも主要メンバーに加わってきた桑原ですが、浦飯幽助に蔵馬と飛影といった他のキャラクターに比べると常にお荷物感が拭えないところがあります。
しかし、一方でムードメーカー的な役割を果たしているようにも感じられ、欠けているとしっくりこなくなるんだろうなぁとも思わされるようなところがありますよね。
四聖獣の白虎との戦いでは、白虎の毛が変化した獣を霊気の剣の端を結んでドーナツにしてしまうシーンが印象的で記憶に焼き付いています。
こういうシリアスなシーンにおいて少々ギャグっぽい戦い方をすることが『幽遊白書』の中には稀にあったりするのですが、そのほとんどが桑原の戦闘シーンだという所が面白いですよね。
VS朱雀
浦飯幽助が本当の意味でバトル漫画の主人公っぽい戦いを見せたのって実はこの朱雀とのバトルシーンなのではないかと思っています。
死んでいる時のバトルシーンは不良の喧嘩の延長って感じで少し違う気がしますし、剛鬼や飛影、それに乱童との戦闘では勝利こそ納めているものの運や偶然によるところが大きかったような気がします。
朱雀は強敵であり浦飯幽助にとっても簡単に勝てる相手では決してありませんでしたが、しかし幻海の修行を受けて霊能力者としての力が増したからこそ運や偶然ではない良い勝負という感じのバトルシーンになっていたのではないかと思います。
また、人間界では雪村螢子やぼたんが魔回虫に寄生された人間に追われて大ピンチという時間的な制約がある状況での緊張感も面白くなる要因になっていたのではないかと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
繰り返すようですがスピーディーだけど濃密な展開に目が離せませんね。
考えてみれば、2巻目の序盤では浦飯幽助はまだ死んでいて蔵馬や飛影すら登場していなかったのに、四聖獣編ではその蔵馬や飛影の再登場に熱くなっているわけですからね。
とはいえ、恐らく多くの人が『幽遊白書』という作品を聞いて思い浮かべるのは暗黒武術会編なのではないでしょうか?
いよいよお次はその暗黒武術会辺の導入部となります。