『幽遊白書(4)』短めだけど濃密な名作の感想(ネタバレ注意)
『幽遊白書』といえばまず最初に何が思い浮かびますか?
異能バトルものには珍しい剃りの入った主人公でしょうか?
それともレイガンという必殺技でしょうか?
蔵馬や飛影という魅力的な妖怪キャラクターでしょうか?
・・とまあ、人それぞれで思い浮かぶものは違うでしょうし、『幽遊白書』とはそれだけ様々な魅力がある作品なわけです。
それでもあえて何か『幽遊白書』の中で印象的な何かを挙げるとすると、僕は暗黒武術会を挙げたいと思います。
僕が『幽遊白書』という作品に初めて触れたのが、テレビアニメ版の暗黒武術会で浦飯幽助と戸愚呂弟が戦っているシーン。その序盤で浦飯幽助がレイガンを打つタイミングを図っているシーンだったことを何故か鮮明に覚えています。
そんな僕の思い出は横に置いておいたとしても、暗黒武術会編に熱くなったかつての少年は多いのではないでしょうか?
そして、この4巻目ではそんな暗黒武術会がいよいよ始まります。
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本作の概要
四聖獣の朱雀に勝利して霊界探偵として一つの山を越えた浦飯幽助は疲労困憊の様子でしたが、そこに間髪入れずに次の指令が発令されます。
人間のブローカーに捕らわれた氷女という妖怪の少女を救出する依頼で、そこでは戸愚呂兄弟との遭遇があり、今後の暗黒武術会編に繋がっていくエピソードとなります。
本作の見所
飛影の妹
浦飯幽助への新たな指令は人間のブローカーに捕らわれた氷女という妖怪の少女を救出すること。そして、その少女こそ飛影の双子の妹の雪菜となります。
といっても雪菜の方はそもそも自分の兄が飛影であることは知らず、それを探すために人間界にやって来た経緯があって、その詳細が語られるのは作品のもっと終盤となります。
飛影の妹と言われて違和感があるほど健気で優しい性格の薄幸の少女といった雰囲気と、飛影の妹に対するツンデレ全開に感じられる言動。
なかなか一言で表現できない兄妹の複雑な関係が読んでいて非常にもどかしく、それがずっと続いていく感じではあるのですが、個人的にはこの感じが嫌いではありません。
戸愚呂兄弟
少年漫画における武術会といえば『ドラゴンボール』の天下一武道会をはじめ、とにかく盛り上がるエピソードのド定番という感じですが、『幽遊白書』という作品においてはそれは暗黒武術会編が該当します。
そんな暗黒武術会編におけるラスボスとなるのが戸愚呂兄弟なのですが、雪菜の休出のエピソードが初登場となります。
救出対象の雪菜といい、妖怪の兄弟というのを作者の冨樫義博先生はこの時描きたかったのかもしれませんね。
ともあれ、まるで海外のアクションスターのようないでたちの戸愚呂弟には言いしれない強キャラ感があって、作品の後半になって実は戸愚呂弟よりもずっと格上の存在がいることが明らかになっていくものの、それでも『幽遊白書』の強敵といえば戸愚呂弟を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
徐々に真の実力を見せてくるようなタイプの敵キャラも定番ですが、それがパーセンテージで数値化されている点も分かりやすく、たった30%なのにこんなに強いのかと読者を驚かせる効果は抜群でしたね。
常に余裕のある立ち居振る舞い。
垂金のペットであるヘレンちゃんとの戦闘。
そして一応は四聖獣という強敵に勝利した浦飯幽助たちとの戦闘でも圧倒的な強さを見せつけられ、トリッキーな奇襲戦法で何とか勝利したように見えたものの、しかしそれもワザと負けたフリをしていただけという相当な実力差が無ければ難しそうなことをやってのけています。
その後、暗黒武術会への招待を伝えに来た際に浦飯幽助との戦闘時には20%程度の力で戦っていたことが明らかとなります。
強さの演出という意味では、恐らく『幽遊白書』の中では最も演出されたキャラクターだと思いますが、その立ち居振る舞いがとても魅力的なキャラクターだと思います。
暗黒武術会の開幕
『幽遊白書』における暗黒武術会編に限らず、こういったトーナメント戦のようなエピソードには他のエピソードとは違った魅力があると思います。
巨大な敵に立ち向かう。
そしてその敵は分かりやすい悪であり敗北は破滅を意味する。
そういったエピソードと違って、例え相手に悪の要素があったり死が関わることがあったとしても、どこまでもお祭りではあるからこその独特な雰囲気とでもいいましょうか。
ぼたんや雪村螢子が観客として観に来ていたり、試合中と試合の合間の両方が描かれることで緊張感のメリハリが生まれ、常に緊張感の高まりを感じることが出来るのも良いところです。
というか、最初に相手を殺したのが味方側のキャラクターである飛影というアウトローな開幕も興味深く、その際に使用した飛影の必殺技となる炎殺黒龍波の登場で一気に盛り上がりもしましたね。
総括
いかがでしたでしょうか?
開幕したばかりですけど暗黒武術会編はさっそく盛り上がっていますよね。
体格や使用している技、それに服装的に明らかに幻海っぽくて正体を隠す気の無さそうな覆面選手がどのような役割を果たしていくのかが気になるところですし、飛影の炎殺黒龍波で凄まじい戦いの序章と浦飯Tの実力を演出したかと思えば、蔵馬によってその凄まじさが飛影の右腕を犠牲にした結果であることが語られたことで今後への緊張感を煽っている。
そんな感じで暗黒武術会編の導入部はめちゃめちゃ上手い掴みになっていますよね。
トーナメントという比較的ストーリー展開であるにも関わらず常にワクワクさせてくれる暗黒武術会編の今後が楽しみです。