『咲宮センパイの弓日(1)』ゆるめの女子高生の裏稼業のギャップが面白い漫画(ネタバレ含む感想)
『咲宮センパイの弓日』は、弓道の腕はピカイチだけどかなり天然女子高生でもある咲宮先輩が、実は殺し屋のバイトをやっているというなかなかにアグレッシブな設定の漫画となります。
いや、「普段は普通の高校生が実は裏の世界で・・」みたいな設定自体は枚挙に暇がありませんが、何というか咲宮先輩の場合はあまりにも自然体というか、裏の世界の住人感があまり存在しないところが珍しいところだと思います。
なんというか、一応は危険な裏稼業のことを隠してはいるようなのですが、ちょっと隠し事をしているくらいの感覚で・・
そう、例えばバイト禁止なのに学校に黙ってバイトしているくらいの気楽さでしかないのが面白いんですよね。
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本作の概要
後輩たちの憧れの先輩女子といえば凛々しい雰囲気の女子を想像してしまいますが、本作品の咲宮先輩はどちらかといえばゆるめの天然キャラとなります。
そのマイペースさがちょっと不思議に感じられるようなところのある性質なのですが、だからこそそんな咲宮先輩が殺し屋のアルバイトをしているなんて誰も思いません。
後輩たちを伴って遊びに行くついでに裏稼業をこなすような独特の展開が見所となります。
本作の見所
お命ちょうだいいたしました
個性的なキャラクターってつまりはどういうキャラクターなのかと考えた時に、やっぱり何かしらのギャップがあるキャラクターが当てはまるのだと思います。
そういう意味で咲宮先輩は複数のギャップがあるキャラクターなのではないでしょうか?
凛々しくて後輩に人気のある先輩なのかと思えば、意外とマイペースなゆるキャラで、ちょっと天然で不思議なところもあるというギャップ。
そんな普通の女子高生なのかと思いきや実は凄腕の殺し屋だというギャップ。
そもそも殺し屋という裏稼業を気楽なアルバイト感覚でやっているというギャップ。
そういうギャップがたくさんあるところがこの漫画の面白さであり、咲宮先輩というキャラクターの面白さですよね。
「お命ちょうだいいたしました」
そんなセリフが決め台詞なのも、使い古されているようでいて珍しく、咲宮先輩のような女子高生の口から発せられているというだけでちょっと面白いですよね。
そして、それもまたギャップなのでしょう。
後輩を伴う裏稼業
女子高生なのに殺し屋というギャップについては前述しましたが、フィクション作品においてはまあそれなりにありそうな設定でもあります。
殺し屋に限らず、ちょっと人に知られるわけにはいかない秘密を持った主人公やヒロインなんて枚挙に暇がありません。
しかし、咲宮先輩の場合面白いのはそんな職業なのにあまりにもマイペースというか気楽なところ。
例えば、普通は必要以上に日常側の住人と近付かないように意識したり、仲の良い友人がいても自分のいる非日常の世界には極力巻き込まないようにしたり、あるいは何かしらのキッカケで巻き込んでしまうようななることが物語の始まりだったり、そういうのがいわゆるテンプレ的な展開なのではないかと思います。
「バイトで渋谷に行かなきゃなんないんだけど、私一度も渋谷に行ったことがないから不安で・・。よかったら一緒に来てくれないかな・・」
しかし、こんな気楽な感じに殺し屋の仕事を遂行する現場付近まで自分を慕う後輩たちを伴うのが咲宮先輩というキャラクターなのです。
ラブホテルの一室からターゲットを狙撃(弓矢)するというのは、なんだかありそうな展開ではありますが、後輩たちはラブホテルに入っていく咲宮先輩を見てあらぬ誤解をしてしまっています。
まあ、女子高生、バイトにラブホテルというキーワードが加われば誰だっていかがわしい仕事を想像してしまいます・・が、まさかそれが殺し屋だなんて思わないですよね。(笑)
バイト仲間の不知火昌子
どうやら雇われの殺し屋であるらしい咲宮先輩は、誰かとチームを組むこともあるようですね。
狙撃(弓矢)で殺しをする都合上、それが可能な環境を作り上げる必要が生じる場合もあるということなのだと思われます。
目標を弓で狙えるようにするために窓を開ける。
簡単なようでいて難しい仕事を任されているのは不知火昌子というちょっと男勝りな雰囲気のお姉さん。
「弓矢の天才だっていつもマネージャーから聞かされてたから、どんなすげえ奴かと思ったら・・とんでもねえ大バカ野郎じゃねえか・・」
まともに電車に乗れない。仕事に向かう最中にお土産もの屋に夢中になる。挙句にお巡りさんに道を尋ねる。
これから殺し屋として働くのに、そんな緊張感が皆無である咲宮先輩に苛立つ不知火昌子でしたが、なんとか仕事はうまく遂行することができたようです。
危険な仕事なので当然と言えば当然なのかもしれませんが、咲宮先輩もマイペースなようでいて実はしっかりと不知火昌子のことを見定めていたりしたのも興味深いですが、次は無いと思わされるくらい相性が悪く見えたのにこの後も一緒に仕事をしていることから意外と相性が良かったのかもしれませんね。
取材を受ける咲宮センパイ
あり得ない話ですが自分がもし殺し屋だったら、そうでなくても大きな声では言えない犯罪じみたことをしている人間だったなら、余程の自己主張の強すぎる異常者でもない限りは極力人の目に触れないことを意識するはずです。
ほとんどの人間は何がリスクなのかを理解していて、可能な限りそれを避けようとするものですからね。
そういう意味でも咲宮先輩は本当にマイペースなキャラクターで、特にリスクを犯すことに快感を覚えるような異常者じみた性格ではないのに、学校の部活に来た取材に対して積極的に答えています。
むしろ、普通の人よりもサービス精神が旺盛なくらいでしょうか?
異常者というよりはリスクをリスクとも思っていない様子という感じで一見するとマヌケっぽくも見えるのですが、よく言えばどんな時でも自然体で格好良いような気もします。
総括
いかがでしたでしょうか?
めっちゃ中毒性があって面白いってほどではないけど、ついつい継続して読み続けようと思ってしまうような癖のある漫画で良かったと思います。
良いと思う漫画が必ずしも面白いとイコールではなくて、面白い以外の何かに魅力があるケースもあるということには随分前から気付いていたのですけど、『咲宮センパイの弓日』はまさにそういうタイプの漫画でした。