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『ガンバ!Fly high(15)』自分の楽しい体操を求める話(ネタバレ含む感想)

 

最初はド素人の主人公が五輪の金メダリストを目指して体操を始めるというガンバ!Fly highですが、その五輪の最終選考会もいよいよ大詰め。真田、内田、そして藤巻駿がそれぞれ最も得意とする競技では新技を披露して幕を閉じます。

しかし、クライマックス感が凄いですが、まだまだ五輪の入り口にすら立っていません。

新たな技へ思いをはせる藤巻駿に、代表選手に起きた最大のピンチに代表選手の入れ替わり。五輪に向けての序章の序章すら胸が熱くなる展開です。

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大きくなりすぎた体格を理由に体操選手は引退してプロレスラーを目指す東と協力して、大きく成長した真田は得意の床で新技を二つも披露し、代表入り確実かと思えるほどの上位に付けます。

そして、僅かながら代表入りの可能性が見えてきた内田も跳馬で新たな・・いや、6年ぶりの大技・三回宙に挑戦します。練習でレントゲン状態になるのは内田らしい愛嬌ですが見事に三回宙を決めます。

藤巻駿も持ち技のギンガー、そしてトカチェフ前宙をさらに発展させ、今までで一番の鉄棒の演技を見せて見事に代表入り。

三人とも最も得意とする種目で最も素晴らしい演技を見せてくれました。

しかし、残念なのは真田でした。代表入り確実かと思いきや最終演技の鉄棒でプロテクターが外れる事故があり、自ら下りた形に近い落下で大幅に減点されてしまうことになります。それでも、E難度の連続放し技で真田という選手の存在を強く印象付けることになります。

内田、真田の二人は惜しくも代表入りを逃しますが、解説の蓑山の言うようにこの二人が最終選考会の影の主役といっても過言ではありませんでしたね。

五輪予選のエピソードは恐らくガンバ!Fly highの中でも最も長く、読み応えのある内容でしたが、祭りの前の盛り上がりとしては十分すぎるほどだったように感じられます。

久々に登場した藤巻駿の妹の藤巻あかねが友達とテレビで兄を応援するシーンがクロスしているのも、これまで藤巻駿が体操に捧げてきた時間が感じられて良かったですね。藤巻駿も初登場時と比較したら年齢的に成長しているのは分かるのですが、久々に登場するキャラクターがいるとより顕著にそれが分かります。

ちなみに、女子は折笠麗子とそのコーチとして岬コーチ。そして補助師としては上野が五輪関係者として招集されます。折笠麗子はともかく、上野が補助師として登場する展開は熱いですね。

しかし、そんな上野が藤巻駿を否定して帰宅しようとする一幕が印象的でした。

アジア大会における中国のポイントゲッターだった王景陽が中国の選考会の鉄棒で出した得点が10点満点という情報をもたらしたのは女性ジャーナリストのキャシー飛鳥ですが、現代では不可能と言われる10点満点を出す相手に藤巻駿も不可能といわれる新技で対抗したいと闘志を燃やすのですが、可能とは思えない。危険すぎるという理由で上野はそれに反対するのです。

上野が藤巻駿ではなく、その体操を否定する側に回る珍しい一幕ですが、これから藤巻駿がしようとしていることがそれだけ凄いことなのだと印象付ける役割としてこれ以上ない役割でしたね。

ともあれ、最終的には藤巻駿のこだわり、我儘を受け止める形で上野は協力することになります。

そんなこんなで立ち上がりは悪くない日本チームという感じでしたが、エースの杉原選手が慢性的な腰痛の悪化を理由に五輪を自体することになり、金メダルに向けていきなり暗雲が立ち込めます。

順位の繰り上げで五輪に内定することになった内田も最初は喜んでいましたが、その事実を知って複雑そうな面持ち。

ですが監督の徳丸が陰鬱とした選手たちのやる気を上手く引き出すやり手でした。あえてキャシー飛鳥の取材を内容が選手に筒抜けのロッカールームで行い、日本の優勝は無くなったと断定するかのような質問に、選手一人一人の役割を丁寧に説明した上で日本の優勝の可能性は何一つ変わらないと断言するのです。

それを聞いた選手たちは奮い立ちますが、やはり周囲からダメだダメだと言われたら自分たちでもダメだと感じてしまうもので、しかしその陰鬱さのベクトルを上手く正の方向へ変換したという感じでした。

そして、いよいよ次巻からは五輪が開幕します。

ガンバ!Fly highの最後のエピソード。名残惜しいですが楽しみですね。