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『葬送のフリーレン(1)』クリア後のクリア後って感じのファンタジー(ネタバレ含む感想)

 

ファンタジーにおける冒険の終わり。しかし、往々にして終わりとは次の始まりに繋がるもので、葬送のフリーレンとはその次の始まりを描いた作品なのだと思います。

ゲームではクリア後の冒険が定番になりつつありますが、あれは次の始まりではなくあくまでも現在の冒険のオマケ要素というか、定番になりすぎてクリア後も含めて一つのストーリーになっているようなことも少なくないので、そういう意味で葬送のフリーレンはクリア後の更にクリア後の始まり。あるいは続きを描いたスピンオフのような作品と近いのかもしれませんが、それをメインとして描いているところに新しさがありますね。

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ところでファンタジー作品には人間とは寿命の異なる長命な種族が登場するのが当たり前になっています。エルフなんてその最たるもので、その生きる時間の違いに言及することのある作品は多々あるような気がしますが、多くは言及するだけで実際にその時間の違いを実感できるような作品は思い当たりません。

葬送のフリーレンでは、勇者一行が魔王を倒す旅に要した時間は10年とかなり長いですが、勇者一行の一人であったエルフのフリーレンにとっては僅かな時間でしかなく、魔王を倒した後の人生においてはフリーレン以外のパーティメンバーが次々と年老いていくのにフリーレンは全く変わりません。そこにある何とも言えない郷愁が葬送のフリーレンという作品の最大の魅力でしょうか?

「50年後。もっと綺麗に見える場所知ってるから、案内するよ」とは平和な時代の幕開けに相応しいと勇者一行で鑑賞した流星群を観た際に、まるで再会を約束するかのように放ったフリーレンのセリフですが、あまりにも長い期間にフリーレンの持つ100年足らずしか生きない人間とは違った時間感覚が如実に表れていますね。

実際、勇者ヒンメルとは約束の50年後に再会することになるのですが、イケメン風だった風貌の面影の無い年老いた老人になっていました。

他の仲間とも再会し、約束通り流星群を見ることになるのですが、それで思い残すことは無くなったとばかりに勇者ヒンメルが真っ先にこの世を去ります。

そこでフリーレンは気付きます。たった10年一緒に旅をしただけの人間ヒンメル。人間の寿命の短さを知っていたのに、何でもっとその人のことを知ろうとしなかったのか?

その経験は、フリーレンにもっと人間を知ろうと考えさせるキッカケとなるのですが、ここまでが第1話の物語です。

何とも濃厚な第1話ですが、ともあれフリーレンの人間を知るための旅が始まります。

ところでファンタジーで旅というと、どこかの街や国を目指したり、多くの人はそういう旅を想像するかと思われます。

このフリーレンの旅にもそういう側面はありますが、それ以上に長い長い人生の旅という意味合いの方を強く感じます。わずか1巻の時間の流れがとても速く、フリーレン以外のキャラクターの時間の流れは速いのに、変わらないフリーレンが何だか寂しいですよね。

さて、そんな人間より長命な種族の時間間隔での人生の旅路を描くという興味深い作品ですが、今までに無かった作品ということもありストーリーの行く末どころかすぐ後の展開すら予想が難しい葬送のフリーレン。予想できないこれからの展開にとてもワクワクします。