『氷川先生はオタク彼氏がほしい。(1)』年上彼女が可愛いラノベの感想(ネタバレ注意)
『氷川先生はオタク彼氏がほしい。』は、主人公が春休みに偶然知り合った理想の女性が、実は”雪姫”と恐れられる鬼教師で新学期から担任教師として現れるという物語となります。
生徒と教師の禁断の恋というのは古風な少女漫画でありそうな展開という気もしますが、それとは男女が逆になっている感じでしょうか?
なんとなく、最近読んで結構好きな作品でもある『ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?』と似た雰囲気の作品かと思って読んでみた次第です。
ちなみに、この二作品には共通点が多いですが、それぞれにそれぞれの良さがあってどちらも面白いと僕は感じました。『ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?』のコミカライズ版もレビュー記事を書いているので良かったら覗いてみてください。
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本作の概要
オタク少年はオタク少女に恋をするもの。
オタク高校生の霧島拓也は春休みのある日、大量に肌色成分多めのライトノベルを購入しているオタク少女と出会います。
とても話の合う理想的な少し年上の少女に恋をした拓也は、順調に関係を進展させていきます。
そんな充実した日々の中迎えた新学期。拓也のクラスの担任は"雪姫"と恐れられる鬼教師だったのですが、初めて近くで見た"雪姫"は拓也が恋したオタク少女・氷川真白にそっくりで・・
というか、そのもの本人でした。
そういうわけで、男子高校生と女教師の恋模様を描いた物語となります。
本作の見所
オタク少年の理想の彼女
こういうラノベや漫画のレビュー記事を書き続けていることからも、僕がそこそこのオタクであることはお察し頂けることと思いますが、オタク男子にとって趣味を同じとする女性はひとつの理想です。
その点は本作品の主人公である拓也に、大いに共感できるところ。
というか、オタクかどうかに関わらず、それに男女を問わずとも最も惹かれる異性って結局のところ『共感』と『尊敬』の二つがある人だと思うので、結果的にオタク少年が惹かれるのは同じオタク趣味のある女性になる可能性が高いというのは必然なのだと思います。
それだけに、とても綺麗で可愛らしい氷川真白に出会った霧島拓也が、少々舞い上がっている様子ながらも真白と楽し気に会話している物語の出だしはとても幸福感に満ちていたように感じられました。
可愛らしかったり美人だったりする女性って実は珍しくもありません。
『尊敬』できる女性なんてその辺にごろごろいます。
しかし、会話していて本当に楽しいと感じられる『共感』できる女性となると、グンと数が減るような気がします。
もちろん、女性と共感しやすい趣味嗜好をしている男性も世の中にはいるでしょうけど、いかにも男性的な趣味嗜好の人にとっては『共感』の部分が大きなハードルになりがちで、だからこそオタク少年(霧島拓也)はオタク女子(氷川真白)に、飛びつくように惹かれたのだと思います。
教師と生徒の禁断の恋愛
拓也は氷川真白のことを少し年上の女性だと思っていたようですが、実際には二十四歳と高校生の拓也にとってはかなりの年上。社会人同士であれば、まああり得る年齢差ではありますが、高校生から見た二十代半ばの女性は限りなく大人なはずです。
僕が高校生の時、古典の先生が二十三歳で結構美人な女性教師でしたが、当時の感覚だと自分よりも遥かに大人に感じたのを覚えています。今思えば相当可愛らしい女性でしたが、当時はハッキリ恋愛対象にはならないというか、そんなことを考える対象ですらありませんでした。
それに、年齢差云々を差し引いても倫理的に教師と生徒の恋愛というのは基本的には許されないものです。
個人的には、恋愛なんて結局は当事者の問題でしかないので本人たちが良ければ許すも許されないもないのではないかとも思うのですが、教師という仕事が周囲に与える影響はそんな浅はかな考えでは測れないほど大きいのかもしれませんね。
そして、少し年上のお姉さんだと思っていた氷川真白が、新学期に担任教師として登場した際には霧島拓也は本当に驚いたことだと思います。
しかし、名前も知っていて遠目からとはいえ姿を見たことがあったのに気付かなかったというのも面白いですね。大人って女性に限らず仕事の時とプライベートでは性格が違ったり、冴えないイメージだった人がオシャレだったり、意外な趣味を持っていたり、そもそも結構ギャップがあることが多いと思うのですけど、そう考えると気付かないこともまああるのかなぁという感じです。
つまり、恋愛ごとにおいて重要な要素のひとつであるギャップがこの時点で既にできあがっているわけですね。
鬼教師という触れ込みの氷川真白ですが、そういえばあまり鬼教師っぽい一面は見せていなかったような気がするので、今後は霧島拓也の前で鬼教師らしさを出さなければいけない状況に陥ってアタフタしてしまうようなエピソードがあったりすると面白そうだと思いました。
氷川先生が可愛すぎる!
往々にして恋愛中の女性は魅力的に見えるモノです。
素敵だなぁ~と感じた人が大抵彼氏持ちなのも、それが原因なのかもしれません。(笑)
・・で、なんでいきなりこんな一般論をぶつけたのかというと、本作品の氷川真白の描かれ方が、恋愛をしてどんどん魅力に磨きがかかっていく女性の姿そのもののように感じられたからです。
殊更ライトノベルのヒロインって、キャラクターとしてはとっても魅力的だし、可愛かったりもするものだけれど、それはあくまでも女性的な魅力や可愛さというよりはキャラクター的であるものだと思います。
もちろん、氷川真白もそういうヒロインと同じ部分はあると思うのですが、大げさに表現されているもののどこか現実的な女性の反応に近い部分がある気がして、そういう所が魅力的なキャラクターだと感じました。
何故なんでしょう?
中高生くらいのヒロインだとよりキャラクター的になりがちなのに、大人のヒロインってどこか現実的な女性に近い部分があったりするのって。
恐らくですが、中高生くらいのヒロインが主流のライトノベル業界においてあえて大人のヒロインを描こうとしているわけだから、そこに入り込むのはキャラクター属性的な魅力ではなく現実に近しいものになりがちになるということなのかと思っています。
だから僕はこういう大人のヒロインが登場する作品が殊の外好きなのかもしれません。
総括
いかがでしたでしょうか?
最近・・というか以前から僕はこういう年上女子が魅力的な作品群って結構好きで、例えばこういうのと似た状況の恋愛を描いたコミックエッセイのような書籍とかも読んだりするのですけど、現実の女性の好みは昔からずっと年下だったりするので自分でも不思議に思います。
最近ではフィクション作品で描かれる年上キャラそのものが自分よりは年下になってきているのも、もしかしたらこういう作品を面白いと思い始めた理由なのかと考えてみると少し時間の流れの速さが怖くなってきます。(笑)
なんというか、大人の女性をヒロインに据えているライトノベルって、中高生がヒロインのライトノベルとは違った新鮮さがあるような気がしていて、『氷川先生はオタク彼氏がほしい。』はまさにそういう作品。
女性が可愛く見える瞬間を上手く描いている作品だなぁという印象で、続きが楽しみな作品のひとつになりました。