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『七つの魔剣が支配する(1)』圧倒的な剣と魔法の世界の物語の感想(ネタバレ注意)

 

天鏡のアルデラミン宇野朴人先生の最新作である七つの魔剣が支配する

前作の完結からほとんど間も置かずに発売されました。

まさに矢継ぎ早というか、ファンとしては嬉しい限りですね!

・・って、もう発売からだいぶ経ってる?

もう2巻も発売されているですって!?

いや、発売日に購入していたものの、諸事情があって読むのを後回しにしてしまっていて、2巻が発売してから慌てて「置いて行かれる!」と1巻を読んでいた次第でした。

ファン失格かもしれませんが、逆に言えば1巻2巻と立て続けに読めるメリットもあり、本記事を書いている今まさに2巻を読書中だったりします。

しかし、差し障りのない端的な感想ですが想像以上に面白かったので、若干放置していたことを後悔していたりもします。

内容的にはいわゆる魔法学園もので、何だかいわくのありそうな学園の新入生の仲間たちが主人公という物語となります。

読み進める内にハリー・ポッターっぽさがあると連想しましたが、作者の宇野朴人先生自身がTwitterで「児童文学じゃないハリー・ポッター」と公言されていますね。

「児童文学じゃない」という部分については、最後まで読めばなるほどと納得できるものと思います。

何というか舞台となるキンバリー魔法学園は、謎やいわくが溢れていそうという点ではハリー・ポッターホグワーツ魔法魔術学校と似通っていますが、より闇が深そうに感じられるんですよね。

1巻のエピローグでは、「えっ、この物語どういう方向に行くの!?」と少々驚かされもしますが、今後にも期待できそうな作品だと思いました。

 

 

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本作の概要

キンバリー魔法学園の入学式。

新入生のオリバー・ホーンは、トロールの暴走事件を通して5人の新入生と仲間になります。

一癖も二癖もありそうなキンバリー魔法学園の教師や先輩、そして学園そのものに比べるとまだまだ初々しい良識的な新入生という感じの6人。

しかし、相対的にキンバリー魔法学園そのものの癖が強いだけで、実のところ強烈な個性を持つ仲間たちとの学園生活が始まります。

この辺は、まさにハリー・ポッターっぽさのある展開ですね。

ですがキンバリー魔法学園に漂う闇というか、郷が深そうな部分はハリー・ポッターホグワーツ魔法魔術学校以上だと思います。

最後まで読めば、主人公オリバー・ホーンの闇(というか秘密?)と、今後の七つの魔剣が支配するの展開を予見させるようなエピソードが見られます。

序盤から登場人物が多く、情報量も多いので、最初少し読みづらいなぁと思ったりもしましたが、後半はどっぷりと惹き込まれて一気に読むことができました。

本作の見所

オリバー・ホーンと5人の仲間

キンバリー魔法学園の入学式でオリバー・ホーンは5人の仲間と出会います。

生き物好きの巻き毛の少女・カティ・アールト。

カティの口喧嘩友達で魔法農家出身の少年・ガイ・グリーンウッド。

普通人枠で受験してきたプライドの高そうな少年・ピート・レストン。

名家出身のオリバーの理解者でまとめ役の少女・ミシェーラ・マクファーレン(シェラ)。

そして、東方からシェラの父親が連れてきたナナオ・ヒビヤ。

天鏡のアルデラミンの騎士団を彷彿とさせる個性的な仲間たちが揃いました。

今巻では、特にナナオ・ヒビヤとカティ・アールトにスポットが当たっていましたが、今後は他のキャラクターもどんどん深堀されていくものと予想されます。

宇野朴人先生の作品は、天鏡のアルデラミンもそうでしたがメインのキャラクターの誰もが主人公、またはヒロイン足りえる個性があるのが特徴です。

しかし、恐らくナナオが七つの魔剣が支配するのヒロイン、そうでなくともキーパーソンであることは間違いなさそうな気がします。

1巻時点で唯一過去がある程度明確に描かれたキャラクターだったからというのがその根拠です。

そもそもキャラの深みというか、作り込みが他のキャラクターよりも精緻な気がしますしね。

魔宮キンバリー

夜になると内部構造が変わったりと、不思議でもあり危険でもあるキンバリー魔法学園の校舎。

この辺もまさにハリー・ポッターっぽい部分ですね。

あまり他の作品との類似点ばかりをあげつらうのも良くないかもしれませんが、正直それが良いと思っている部分でもあるので悪しからず。

ハリー・ポッターとの違いとしては、ハリー・ポッター以上に怖い・・というか危険度が高そうなところでしょうか?

狂気を秘めた上級生たちを警戒しなければいけない状況を、キンバリー魔法学園はそういう場所とオリバーたちがそれなりに受容していることが、この世界におけるキンバリー魔法学園の異常性を象徴していると思います。

生き物好きのカティ・アールト

今巻の物語は、入学式で暴走してカティを襲おうとしたトロールと、そんなトロールの処罰を巡るカティの奮闘が一つのテーマになっています。

七つの魔剣が支配するの世界観の中では人権を認められていない亜人種であるトロールですが、こういった亜人種の人権を巡るような派閥があるようです。

亜人種の人権を認める動きをする人権派と、それに対する保守派。

カティは筋金入りの人権派の家系で、自身を襲ったトロールすら擁護しようとします。

良くも悪くも極端で真っ直ぐな思想のカティには敵も多いですが、同じく人権派のミリガン先輩はカティに親身になるのですが・・

どうやら同じ人権派でも考えはそれぞれ。

ミリガン先輩もまた、カティから見たら信じられないような狂気を秘めた上級生だったのです。

いやはや、他の上級生に比べて優しすぎるキャラクターなので逆に怪しいと思ってはいましたが、まさかミリガン先輩があんなだったとは・・

そんなこんなで第1巻の物語、トラブルの中心にいたカティでしたが、善良ではあってもどこか生きづらそうな性格の少女です。

今後もトラブルのキッカケになったりする可能性が高そうなキャラクターだと思います。

死にたがりのナナオ・ヒビヤ

なかなかつかみどころの無い雰囲気のキャラクターですが、それでいて色々な意味で魅力的な東方のサムライ・ナナオ。

「次こそは心ゆくまで、呪い抜きの真剣で」

オリバーとの魔法剣の模擬戦では、まるで死に急ぐような斬り合いを求め・・

「死に損ないが死に場所を得る、これはただそれだけのこと」

魔宮キンバリーでは危険な上級生相手に自殺行為に等しいと分かっていながら挑む。

そんな死にたがりとしか思えないナナオの行動にはオリバーも怒り心頭でした。

「死を恐れぬことは、死に憑かれることとは似て非なる。━━そんな道理も思い出せぬほど、拙者は自分を見失ってござったな」

しかし、壮絶な過去を持ち、オリバーたちとは違った価値観を持っているナナオでしたが、最終的には自分の生き方を見つめなおすことになりました。

 いやはや、戦闘面でもいっとう格好良くて、ミリガン先輩との戦いでは現存する六つの魔剣のどれでもない、本作のタイトルである七つ目の魔剣の術理を無意識に使う少女。

死を恐れない性格と、天鏡のアルデラミンで言うところのヤトリのポジションっぽい立ち位置に、若干先行きの不安も感じさせますが、人好きのするあけすけな性格もあってとても魅力的なキャラクターだと思いました。

オリバー・ホーンの復習

1巻のクライマックスはミリガン先輩との戦闘でした。

しかし、エピローグでの展開には本書の中で一番驚かされました。

普通エピローグといえば後日譚というか、多少次巻への展開の伏線が貼られる程度で、本編以上の驚きがあることは稀だと思うのですが、そういう意味で例外的な感じのエピローグだったからです。

次巻への伏線というよりも、七つの魔剣が支配するという物語の目的、主軸が何なのかを予感させるようなエピソードだったのです。

本編では優秀ではあっても普通の新入生という感じだったオリバーですが、どうやら訳あり中の訳ありっぽいです。

「我らに君臨し、そして導け。・・全てはお前の魂が望み、その魔剣が斬り拓くままに。あの方を弑した魔人どもを悉く討ち果たそう」

オリバーの従兄の言うセリフです。

魔人どもとはキンバリー魔法学園の教師の一部のことで、既にオリバーはその内の一人であるダリウスを殺害しています。

あの方とは誰なのか?

ダリウスに関してはオリバーの母親の復習という感じでしたが、一体オリバーの過去に何があったのか?

魔人と称されるキンバリー魔法学園の教師たちは、何故オリバーに狙われるのか?

そんな感じでエピローグで一気に謎が噴出しましたね。

しかも、いずれはオリバーの同志(入学式で出会った仲間のことではなさそう)以外の者は全て敵に回り、そしてナナオが敵に回ることを予見させるモノローグが語られています。

非常に良好そうなオリバーたち6人の仲間の関係性ですが、どうやら一筋縄ではいかなさそうですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

かなり本格的で読み応えのあるファンタジー作品でしたね。

宇野朴人先生の前作天鏡のアルデラミンは軍事をメインに据えた物語だったので、ジャンル的にはかなり毛色が違う作品となります。

特定のジャンルで超名作を書かれる作家先生でも、別ジャンルになると文体が合っていなかったりと微妙な感想になることも多いのですが、七つの魔剣が支配するに関して言えば全くそのようなことはありませんでした。

僕はかなりの天鏡のアルデラミンファンだったので、良くも悪くもジャンル違いの新作のことを心配してしまっていましたが、それは杞憂だったようです。

実は、正直に言うと天鏡のアルデラミンの最終巻に32ページだけ掲載されていた七つの魔剣が支配するの序章を読んで、「ああこの作品は僕には合わないかも?」とか思っていました。

だから他の作品を優先して、長い間七つの魔剣が支配するの1巻を読むのを保留していたのです。

しかし、読後その判断が間違っていたことを理解しました。

人にもよるかもしれませんが、どうやら七つの魔剣が支配するは読み進める内にジワジワと面白くなってくる類の小説だったようです。

もし、僕と同じように天鏡のアルデラミンの最終巻に32ページだけを読んで「合わない」と判断して、まだ読んでいない人がいるとしたら、それは損をしている可能性がありますよ!

今後が最も楽しみな作品の一つだと思います。

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