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『エロマンガ先生(12)』山田エルフの逆転ストーリーの感想(ネタバレ注意)

 

今一番恥ずかしいたタイトルのエロマンガ先生。10か月ぶりの最新巻です。

11巻ではサブヒロインとしてもなかなかに微妙な扱いを受けていたエルフがラストで言っていた「このわたしが、逆転しにきてやったわ!」というセリフ。

12巻はそんな伏線めいたセリフを一冊かけて回収するような内容になっています。

実は個人的にはエルフのようなタイプのキャラクターはそんなに好きな方ではなく、少なくともエロマンガ先生のキャラクターの中では下から数えた方が早い感じなので、エルフがメインの話ということが分かったことであまり期待していなかったのですが・・

蓋を空けたら想像以上に面白かったです。

エルフの提案で始まる商業作家とイラストレーターによる同人誌作成が、互いのイラストレーターを入れ替えて行われるという発想も面白いですね。

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本作の概要

いつも突然やってくるエルフは、今回もまた自分が勝利するための秘策を用意してやってきました。

その秘策とは、紗霧を更に可愛い女の子にするため女子力を上げる手伝いをすることだったり、マサムネと紗霧の創作者としてのレベルを上げるために同人誌作成を提案することだったり、なぜかマサムネと紗霧のプラスになることばかり。

いったいエルフにどのような思惑があるのか、その辺が12巻の見所となります。

本作の見所

ブコメの肝

12巻は、11巻ラストで電撃のように登場したエルフの宣戦布告のようなゴリ押しから始まります。

「マサムネ! この大先輩が教えてあげる! ラブコメの肝は! 配置したキャラクターの人間関係が、ダイナミックに変動していくところなのよ!」

そして、ゴチャゴチャ色々と言っているもののこの時点でその真意は分かりませんけど、要するに固まりかけた人間関係に一石を投じることで自分が付け入る隙を作ろうってことなのかと思いました。

しかし、エルフのセリフが何だか自然にメタく感じられるのが面白いですね。

エルフはラノベ作家であり、そんなエルフがラノベ的ラブコメになぞらえて自分がどういうことをしようとしているのか宣言しているわけですから、結果的にメタいのに自然に今後の展開を示唆することになっているわけです。

「ラブコメはパズルゲームとよく似ている。・・わたしはね、現実の恋愛もそうだと思うの。恋愛って、人間関係を、自分の望むように変化させていくことだもの」

一方でそれを現実的な考えにもなぞらえている。少なくとも僕はエルフのセリフには一定の説得力があると感じました。

「私も兄さんも、ラノベのキャラじゃない。作者の思ったとおりになんて、動かないもん」

いや、ラノベのキャラだろってツッコミは横に置いておいて、紗霧の立場からすれば今のマサムネとの関係を壊されたくない思いがあるでしょうから、当然エルフの発言を否定します。

しかし、あくまでも現実だとしたら、"作者"の思った通りには動かなかったとしても"他の誰か"の思った通りに動いてしまうことはあるのではないかと思います。

ある特定の人間関係を変えるキッカケになる人は、現実にはいくらでもいますからね。

そして、あくまでも『エロマンガ先生』という世界の中においては現実の人間であるエルフは、"作者"ではなく"他の誰か"なわけで、つまりは紗霧のセリフは否定されていることになるわけです。

エルフがラノベ作家だからか、メタいのかそうじゃないのかの境界が曖昧なやり取りから始まるわけなのですが、個人的にはこういうの結構好きでした。

エルフの策略

しかし、エルフがマサムネに好意を持っているからこそ今回のような言動をしていることは間違いないと思うのですが、そのためにやっていることが「何でそれがエルフの勝利に繋がるのだろう?」と疑問を呈さずにはいられないようなことだったりします。

エルフがしようとしたことは、紗霧と一緒に暮らして付きっ切りで紗霧の女子力向上のための協力をするということ。

冗談なのか本気なのか、一時的にマサムネと紗霧のイチャイチャを阻止できるみたいなことも言っていましたが、それでも紗霧のメリットの方が大きそうですよね?

実際、その後のエルフの行動に紗霧とマサムネの関係を壊すと予感させるようなものはなく、むしろプラスになることの方が多かったような気がします。

同人誌作成のエピソードも、互いの書き手とイラストレーターを入れ替えて作成することによって生じる変化を投じたという感じで、確かにアメリアと組んだことによっていつもとは違った作品作りをするマサムネに紗霧は嫉妬したりもしていましたが、これだってエルフにとってプラスにはなっていないですし、嫉妬こそあれマサムネと紗霧にとってもプラスの方が大きかったと思われます。

一体エルフの行動の目的は何なのか?

その答えが分かるまでずっとエルフの言動の理由を考えさせられるのが12巻の肝になっています。

そして、僕は・・というか多くの人がそうだと思うのですが、ずっとエルフの勝利条件をずっと誤認したまま読み進めることになったため、だからこそエルフの目的が最後まで分からなかったのだと思います。

恐らくマサムネに好意を持っているエルフの勝利条件は、マサムネが紗霧ではなくエルフを選ぶこと。

僕は最初そう思っていましたが、それが違っていたわけですね。

というか、この勝利条件ならマサムネと紗霧の二人にとってプラスになることだけをやり続ける意味がマジでわかりません。(笑)

そして、エルフが想定していた勝利条件とは、エルフがマサムネと恋人同士になることではなく、三人で仲良く一緒に暮らすことでした。

なるほど、だとしたらマサムネと紗霧の両方のプラスになる言動を取っている理由になりますが、これはさすがに分かりませんね。(笑)

外に出る紗霧

最初は部屋から出ることすらできなかった紗霧ですが、エルフの家にお泊りするために少しだけ外に出ます。

それだけなら、以前も少し外に出たことがあるはずなので大きな成長とまでは言えないかもしれませんが、母親に連れていかれたエルフを追いかけるためにタクシーに乗って移動し、エルフたちの前に現れたシーンは少々驚きました。

一気に成長したものだなぁと。まあ、こういう変化って最初の一歩以降は急激なものなのかもしれないと感じたエピソードでした。

総括

いかがでしたでしょうか?

エルフの発想が想像の右斜め上でビックリしましたね。

若干エルフに策略に乗ってしまいそうな雰囲気のある紗霧と、絶対に乗らない強い意志を持っているマサムネ。

この辺のエルフの揺さぶりが今後の見所のひとつになっていくのかもしれませんね。