『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます(4)』女三人寄れば姦しい最新巻の感想(ネタバレ注意)
FUNA先生関連作品4作品同時発売の一つ。
『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』の原作最新巻の感想です!
同時並行で刊行されているFUNA先生の3作品の中では、個人的には一番好きな作品なのですが、今巻も期待を裏切らない面白さで安心しました。
最初は転移能力を駆使してのお金儲けの話だったのが段々と外交がメインになってきましたが、個人的には良い方向に面白くなっていっていると思います。
この手の小説にありがちなご都合主義だと感じる展開ではあるものの、そういったご都合主義を痛快に感じてしまう僕がいます。
バトル面でのチート能力で主人公が無双する小説は、面白いとは思うものの食傷気味な所もありますが、そういう意味で『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』は新鮮に感じられる小説ですよね。
実は、転移能力というのはネタとしては面白いと思うものの、特異すぎてネタ切れも早いのではないかと思っていた所もあるのですが、そういう思いとは裏腹に4冊まで巻を重ねても面白さが色褪せません。
恐らく、与えられた能力自体はそこまで万能感のあるものではないけど、それをどう上手く使っていくのかという主人公の考え方自体が面白いから、飽きさせない面白さがあるのだと思います。
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本作の概要
元々は転移能力を駆使してのお金儲けが目的だった主人公のミツハですが、かなり忙しくなってきたミツハは、自身が子爵家を給うゼグレイウス王国の外交問題に巻き込まれてしまっています。
しかし、使節団に同行する上でキャンピングカーを用意したり、コレットとザビーネと一緒の道中を満喫していた楽しそうです。
新しいキャラクターが増えていくのも良いですが、コレットやザビーネといった序盤から登場しているキャラクターの活躍の場が広がっていくような展開の方が好きなので、これは嬉しいですね。
転移能力で世界の広がったミツハでしたが、そのミツハと親しくなったコレットやザビーネの世界も広がっていきます。
また、ダリスソン王国やクールソス王国、そして地球の格好を相手取った外交でも痛快な活躍をミツハは見せてくれます。
本作の見所
用意周到なミツハ
ミツハは転移能力があるとか、そういう問題じゃなくて用意周到な所がありますよね。
大体にして、老後に備えてお金儲けしようとしている時点で用意周到だと思います。
そして、前巻で登場した海の向こうの敵に対抗すべく近隣国家と同盟を結ぶための使節団に同行することになったミツハですが、長旅のための用意が中々に周到です。
キャンピングカーを用意するという発想はまあ良いですが、その種類まで周到に考えて選んでいます。
また、連絡用の通信機をあちこちに仕込んでいますが、その説明がまた詳しい詳しい。
そういえばFUNA先生ってアマチュア無線の資格持ちなんですね。
やっぱり作者の得意分野って作品に反映されるものなんだなぁと思いました。
ザビーネの友達
今巻の特徴としては、終始コレットとザビーネの二人がミツハと行動していた3人ワンセットという感じで姦しい感じでした。
コレットは1巻の、ザビーネは2巻のヒロインといった感じのキャラクターでしたが、平民の女の子と王女様の2人はかなり立場に違いがあることもあって、今まで絡みはありませんでしたが、今巻ではミツハを挟んで身分差を超えた友達のような関係になっています。
最初は自分には教えられていないことをコレットが知っていたことでザビーネが拗ねていましたが・・
「ヤマノ子爵閣下は、必要だと思ったことを、必要だと思った相手に、必要だと思った時にお伝えになります。そしてそれは、相手のことをどう思っているかということとは無関係です」
コレットが拗ねるザビーネを気遣って、明らかにミツハとは身分差を超えた友人同士であるコレットに上下関係を意識した発言をさせてしまったことで、ザビーネはちょっとバツが悪いことに気付きます。
しかし、平民相手にもちゃんと謝れる王女様は、最終的にはコレットとも仲良くなりました。
ミツハと新旧ヒロインの2人の3人組。
この組み合わせだと若干コレットの存在感が薄くなる感が否めませんが、みんな身分も性格も違うのに何だかバランスの良い組み合わせに感じますね。
コレットとザビーネが、ミツハの持ち込んだレトロゲームに嵌ってミツハに構ってくれなくなったりする所も面白いです。
コレットとザビーネが日本へ
本作品最大の魅力といえば、この手の異世界転生・転移ものの小説としては異例の『異世界と地球を行き来できる』点にあると思います。
大抵の場合は、異世界に行きっぱなし。戻ってくるとしても完結する時に戻ってくる感じですからね。
しかし、それだけに前巻では地球での描写が少なかったのを不満に感じられている人が多いようで、僕もその一人です。
その点、今巻では地球側の描写が多くて良かったと思います。
コレットとザビーネが拳銃の使い方を覚えるために隊長さんの元を訪れたり、地球にいるタイミングでミツハに何かがあった時のために、日本での生活を経験させたりと、異世界転移ものの小説としては本作品以外ではまず見られないような描写があります。
そもそも異世界転生・転移ものの面白さは、普段訪れることのない世界に普通の人が行くところにあるわけですが、その逆パターン、異世界の住人が地球・日本に来たらどうなるのかというのも面白いですよね。
ダリスソン王国とレミア王女
使節団が最初に訪れたダリスソン王国のレミア王女も良いキャラをしていると思います。
「ゲッゲッゲッ!」
ミツハの持ってきたカードゲームに嵌り、その実力も高いレミア王女。
若くとも優秀で、なおかつ高潔な王女様ですが、ゲーム中の笑い方が・・
どういうキャラクター性を狙っているのかは謎ですが、ギャップがある感じがして僕は嫌いではありません。
ちなみに、文明レベルが中世レベルの異世界において、これから開発する銃火器のデモンストレーションをするシーンは、実際のところ異世界も転移能力もあまり関係ないのですけど、謎のカタルシスがあったような気がします。
地球でも外交するミツハ
以前もありましたが、あくまでも異世界の住人として地球に各国の代表と外交するミツハが地味に好きです。
「何人か、お帰りですよ。駐車場まで案内してあげて!」
転移能力ってこんなことにも使えるんですね。
持ち込み禁止の録音などの記録媒体を持ち込んだ人間を転移能力であぶりだすミツハ。
そして・・
「もし私に危害を加える者がいたら、魔法の力で、心臓をキュッ、と」
同席するコレットとザビーネは護衛だと紹介し、実在しない魔法の力を仄めかすミツハ。
地球での外交は面倒くさがっていて、あまりミツハに利は無さそうな気もしますが、想像以上に楽しんでいるような気もしますね。
しかし、今は異世界の貴族ナノハとして地球で外交しているミツハですが、実は日本人であることがバレるような展開もありそうな気がします。
「そしてそれも、そう先のことではないような気がする」と地の文で明らかにフラグっぽいことが語られていますしね。
当て馬のクールソス王国
良からぬことを考えていた悪人もいたものの、上層であるレミア王女は高潔だったダリスソン王国に対して、クールソス王国は明らかに当て馬のような扱いでした。
少々ミツハが強引すぎる気もして、ちょっとだけクールソス王国の王様にも同情してしまいましたが、こういう現実にはありえないご都合主義が痛快なのは最近の異世界転生ものの最大の特徴で、『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』も例外ではありませんね。
総括
いかがでしたでしょうか?
さすがはFUNA先生の作品は安定して面白い!
実は、こうしてレビュー記事を書いていますが、面白いと思う作品とレビュー記事を書きやすい作品は必ずしもイコールではありません。
FUNA先生の作品は、その面白さに反して何故かレビュー記事が非常に書きづらいのですが、とっても好きなので同時発売の原作小説2冊ともレビュー記事を書かせていただきました。
3作品も同時並行で出されているので一つ一つの刊行間隔は長いですが、今後も続刊を楽しみにしています!