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『弱キャラ友崎くん(8.5)』パーフェクトヒロインの内面も描かれる短編集の感想(ネタバレ注意)

 

Lv6.5に続き弱キャラ友崎くんにおける2冊目の短編集となります。

魅力的なキャラクターが多数登場するようなラノベが巻数を重ねると短編集が増えてくるのはひとつの特徴だと思いますが、弱キャラ友崎くんもそういった特徴を備える作品になってきました。

また、こういった作品の中には短編集は退屈だと感じさせれるようなタイトルもあったりしますが、早く本編を読みたいという思いは確かにあるものの短編集は短編集で魅力的で面白いと感じさせれれる作品も少なくありません。

僕は、弱キャラ友崎くんの場合は後者なのではないかと感じています。

Lv6.5の場合は、大きな分岐点となる7巻に繋がる内容になっていましたし、そして今回のLv8.5は主にその7巻、あるいは8巻を補完するような内容になっていました。

7巻自体が下手したら2冊分はありそうな相当なボリュームでしたが、考えてみればそんな7巻を補完しているような短編も相当数あることになります。

作者の屋久ユウキ先生がいかにこの7巻を重要なターニングポイントであると捉えているのかが伝わってきますし、それだけの納得感のあるエピソードであったことは否定のしようがありません。

・・とまあ、長々と述べてみましたが端的に言うと「今回も面白かった!」の一言に尽きます。

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本作の概要

中くらいの目標である彼女を作ることを達成した友崎君ですが、そこに至るまでには様々なことがあり、その後が気になるところが多かったと思います。

彼女が出来た友崎君もですが、彼女となった菊池風香はどう感じているのか?

彼女になれなかった七海みなみは?

彼女になるキッカケとなった脚本を書いた菊池風香はどこまで日南葵の内面を見透かしていたのか?

そんな気になるところが補完されるような内容の短編集なのだと感じました。

本作の見所

ファースト・クリスマス

友崎君の立ち回りが既に下手なリア充よりもリア充っぽいような気がしますね。(笑)

下手なリア充というのが我ながらよく分からない言葉ですけど、言わんとするところは何となく伝わるのではないかと思います。

要は、リア充を目指しているからこそ自身のことはリア充では無いと思っているだけで、傍から見たら完全にリア充であるという・・ね。

まあ、あまり作中ではリア充という言葉は使われていないような気もするというか、既に死語になっているような気もしますが、弱キャラ友崎くんを読んでいるとリア充という言葉を何故だか思い出しがちになります。

今何回リア充って書きましたっけ?

・・なんて前置きは置いておいて、これは時系列的に7巻直後くらいのエピソードになるのでしょうか。つまり、菊池風香が友崎君の彼女になった直後、その帰り道の二人の初々しい感じが読んでいてくすぐったく感じられます。

最初のデートの約束というある意味では最初のデート以上に楽しいかもしれないイベントが見所だと思います。

名もなき花

メインヒロインでありながら、あえて表面的な部分ばかりが描かれていると思われる変わったキャラクター。パーフェクトヒロイン日南葵に深入りした短編となります。

最初からある程度化けの皮を被っていることが明らかなキャラクター性が判明している上に、本編は基本的に友崎君の視点で語られているので当然の帰結といえば当然の帰結なのですが、裏側の存在が最初から明らかなのに分からないというのが興味深いキャラクターではありますよね。

そんな日南葵の妹の存在は仄めかされていましたが、この短編ではそんな二人の妹が初めて描かれています。

誰でもある程度は友人に対する顔と兄弟に対する顔は違ったりするもので、だからこそ妹に対する日南葵がどのように描かれるのかは興味深いところです。

また、日南葵のアタファミとの、そしてnanashiとの出会いについても描かれているのですが、何より興味深いのが日南葵の中くらいの目標が明らかになる点。

中くらいの目標という言葉自体は、日南葵が友崎君に課している課題の中間到達点を指す言葉で弱キャラ友崎くんの読者としてはおなじみの言葉ですが、考えてみれば日南葵が自身に対してもそんな目標を課していてもおかしくないですし、日南葵のキャラクター性からも非常に納得感のあるところです。

「nanashiを超える」

日本最多人口を誇る個人競技の覇者なら自身の孤独を共有できるのではないかという思いから立てたそれが日南葵の中くらいの目標で、確かに中の人の友崎君はともかくとして日南葵がnanashiに対して何かしらの尊敬の念を持っているであろうことは1巻の時点で分かっていたことだと思いますが、まさかそれが中くらいの目標だとまでは思っていませんでした。

しかし、本編での日南葵はご存じの通り常に友崎君に課題を出し続ける上位者のような立ち位置で描かれています。

本編における日南葵が自身の中くらいの目標に対してどのように考えて取り組んでいるのか、そもそも変わったりはしていないのか、その辺がかなり気になるところではありますよね。

好きな人のカノジョ

七海みなみと菊池風香。

友崎君に告白してフラれた少女と、友崎君に告白されて彼女になった少女。

あまり空気を読まないことでお馴染みの夏林花火ですら空気を読む二人のやり取りが興味深い短編です。

ちなみに、日南葵に対してはかなり聡いと思わされる言動のあった菊池風香でしたが、七海みなみが友崎君のことを好きだった、まして告白までしていたということは知らなかったようです。

この短編で本人から暴露されていますが。(笑)

まあ、この二人のキャラクター性からすると険悪になったり気まずくなりすぎたりすることは無さそうだとは思ってはいたので方向性としては予想の範疇という内容でしたが、それでも中々に興味深い内容でした。

七海みなみの心情としては恐らく、自身の気持ちを菊池風香にも伝えることでスッキリしたかったのだと思います。

あまり褒められた行為ではないものの、だからといって止めることも微妙なラインの行為ではありますが、それを真摯に受け止めて会話しているのは菊池風香らしいと感じました。

「ありがとね。ほんとに」

これは恐らく菊池風香にとっては不要だけども、七海みなみにとっては必要な会話だったからだと思いますが、七海みなみは二度も礼を言っています。

しかし、ここで七海みなみと菊池風香の二人は随分と分かり合っているような気がしますが、何となく今後本編で友崎君がこの二人に何かしら怒られるような事態が起きそうな予感があったりもしますね。(笑)

嘘と朝焼け

何だか友崎君の周りをかき回していくことになりそうなレナのことを描いた短編となります。

レナは8巻で登場したばかりでまだよく分からないところのあるキャラクターなので、正直なところ短編で深掘りされていってもあまりピンとこないところがある上に、あまり弱キャラ友崎くんらしくないエピソードでもあるので感想に困るところがあったりします。

とはいえ、こうして短編の主人公にまでなるということは今後本編でもかなり重要な立ち回りを見せることが予想されますし、注目しておくべきキャラクターなのかもしれませんね。

みんなのうた

こういう短編ではカラオケのエピソードってひとつの定番ですよね。

アニメ化するらしいですし、アニメ化作品でも定番のエピソードという気がします。すこし古い定番な気もしますけど。(笑)

カラオケは特性上どうしても会話が少なくなりがちですが、選曲や歌い方なんかで性格が出るので面白いですよね。

炬燵の天使

菊池風香が主人公の短編です。

どうやら菊池風香の弟は姉と違って活発な性格らしく、彼氏ができたことを揶揄われて恥じらうという珍しい菊池風香が見られます。クラスメイトとの間柄ではあまりいじられたりするキャラクター性ではありませんからね。

まあ、そんな菊池風香が描かれているだけでも十分なのですがそれはあくまでもこの短編の導入部。

文化祭の打ち上げの際の日南葵とのやり取りを回想しているところがメインとなります。

菊池風香が日南葵の内面にかなり気付きかけているのは7巻の時点で明らかだっただけに、ただでさえ珍しい組み合わせのやり取りが非常に興味深いです。

なんというか、日南葵が菊池風香の目を通して自分自身のことを知ろうとしているような、そんな印象を受けました。

勇者友崎の冒険 VR体験版

ボーナストラックということなので一言だけ感想を言うと、竹井って実はメッチャ愛されてるキャラクターなのではないかと思いました。(笑)

総括

いかがでしたでしょうか?

菊池風香や七海みなみといった7巻で渦中にいたキャラクターが目立つ印象がありましたが、それ以上にパーフェクトヒロイン日南葵の内面にかつてなく踏み込んでいるのが興味深かったような気がします。

主人公である友崎君の視点からだと内面が未だよく分かっていないパーフェクトヒロインと一言で片づけられるキャラクターの特性上、本編ではその表面的な部分が強調して描かれているところがありました。

しかし、人の内面にかなり聡いところのありそうな菊池風香視点の短編で、かな~り日南葵の内面に踏み込んでいます。なんだかんだメインヒロインなのだとは思うので、今後はこの日南葵というキャラクターを詳らかにしていくことになるのではないかと僕は予想しています。

8巻の時点でその予兆はありましたしね。

そういうわけで友崎君が中くらいの目標を達成するまでのエピソードは一区切りなのだと思いますが、だからこそ今後の展開が読みづらいところがあります。

早く9巻を読んで、その答えが知りたいところですね!