あるいは 迷った 困った

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『はたらく魔王さまのメシ!』食事は全ての基本って感じの短編集の感想(ネタバレ注意)

 

『メシ!』ってなんだ?

本編じゃないってことは分かるけど・・と、そう思いながら読んだはたらく魔王さまのメシ!でしたが、どうやら色々なキャラクターの食に纏わる短編を集めた短編集だったようですね。

最後には食というより職にも纏わる短編が載っていましたが、はたらく魔王さまらしい俗っぽい日常が描かれた短編で、思っていた以上に面白かったです。

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本作の概要

日本に来たばかり真奥と芦屋の苦労。

漆原がパソコンを買ってもらうキッカケになった出来事。

うどんを食べたがらない鈴乃。

珍しく映画館で散財する真奥。

アラス・ラムスの食事に悩む恵美。

エンテ・イスラの料理を嗜む千穂。

そして、真奥がマグロナルドで働くキッカケになった出来事。

全てが食に纏わる短編ですが、特に最後のエピソードは本編では描かれていない真奥がマグロナルドで働くキッカケとあって、かなり重要度の高いエピソードなので注目度が高いです。

本作の見所

炊飯器の使い方

日本に来たばかりの真奥と芦屋がお米の食べ方を巡って四苦八苦するエピソード。

今の真奥たちの普通の若者っぽい口調とは違っていて、まさに魔王って感じの喋り方なのに会話の内容はお米の炊き方のことばかりってのがギャップがあって面白かったです。

「この三日間、私は水を飲んで過ごしていました!」

「早くこのコメを食う方法を見つけよう! お前が死んでしまうぞ!!」

真奥が入院している間、水道水だけで過ごしていた芦屋。そんな状態を一刻も早く脱するために、唯一手元にあるコメの食べ方を模索していきます。

まあ、確かに何も知らない状態で炊く前のコメだけを見せられたら、それこそ砂利っぽい何かにしか見えなくて食べ方は分かりませんよね。(笑)

コメを研ぐというキーワードは入手していたようですが、それだって知らなければコメを水で洗うなんて発想にはいたらないでしょう。

最初はコメを研がずに炊いて、ぬめりや匂いの強いコメができてしまい、それを洗って食べるという荒業に挑んでいた真奥たちでしたが、炊きあがったコメを洗うのは難しいにもほどがあります。

そこから、じゃあ炊く前に洗えば良いんだと正解に近い所にたどり着くのはさすがは真奥たちといったところでしょうか。

全くの無知の状態からまともにコメを炊けるようになるまで四回かかったようですが、これは意外と順調な方なのではないかと思いました。

古いポテトの活用方法

珍しく外出している漆原がファストフード店のコッテリアで、パソコンを買ってもらうキッカケとなった出来事を思い出すというエピソード。

適当に頼んだポテトの味がブラックペッパーで、かつて真奥の家で飽きるほど古くなったブラックペッパー味のポテトを食べた経験が嫌な思い出になっていて、思い出すに至ったようですね。

「貴様は堕天使だろう。半分天使で半分悪魔なら、その名がよかろうと魔王様が仰ったのだ」

ちなみに、このエピソードでルシフェルの日本での名前である漆原半蔵の由来が明らかになります。どうやら、漆原も明らかに現代日本においては古臭い感じのする名前は不満に思っていたようですね。

そして、漆原の戸籍を作った動機は図書館で借りられる本の冊数に1人当たりの制限があるので、漆原の分も利用者登録しておいて借りられる冊数を増やす所にあったようです。

そういうわけで図書館に連れていかれた漆原は・・

蔵書検索用の端末をこっそりインターネットに接続して、古いポテトを美味しく食べる方法を検索して、それを芦屋に教えます。

「エビで鯛を釣る、だったよなぁ、今思うと」

ちょっと役に立ったからといって、そう簡単に芦屋が漆原にパソコンを与えるとは思えませんでしたが、恵美が出現し、千穂にも正体が露見し、時期的に芦屋が相当に動揺していたこともあったようですね。(笑)

カレーうどんは美味しいけども

大のうどん好きで、毎日聖別食材をうどんの麺にして食すことで聖法気を蓄えており、作るうどんの種類も豊富。

Wikipediaより抜粋

・・と、こんな風にキャラクター紹介されたりするほどのうどん好きで、うどんを啜っている姿を容易に想像することができるのが鈴乃というキャラクターです。

「うどんは・・しばらくいい」

そんな鈴乃がうどんを拒否するという驚天動地のエピソード。

恵美も真奥も千穂も、何かあったのかと鈴乃を心配します。

「一体なんなんだお前達! 私だってうどんを食べたくないときくらいある!」

いや、鈴乃の言い分はもっともで、好きな食べ物でもその時の気分次第で、食べたいかと言われたら微妙な時もあったりするものですが、鈴乃の場合はもうそういうレベルではなくうどん好きキャラクターが定着しているので、周囲の反応も然るべきといったところです。

・・で、どうやら真奥からもらった真奥がホルモンを布教するために鈴乃にあげたレトルトカレー(牛ホルモンカレー)をカレーうどんにアレンジして、その汁を跳ねさせてお気に入りの着物を汚してしまったことが、うどんを避けていた原因だったようですね。(笑)

いや、確かにカレーうどんは美味しいけれども、そうやって跳ね汁で洋服を汚しやすいのが玉に瑕なところ。

「だが、長く続かないことは分かっていた。もう四日もうどん断ちをしていたんだ。我慢ができなくなれば行動の端々に違和感が現れて、早晩バレていたことだったんだ」

「神も聖典も、修行中のうどんを禁じてはいないからな」

はい。聖職者の、それも偉い人のセリフです。(笑)

しかし、それを言うとレトルトカレーをくれた真奥が気にしてしまうのではないかと思って言い出せなかったという所は可愛らしかったと思います。

B級映画好きって意外だなぁ~

木崎店長に真奥のプライベートでの姿が想像できない。総合職の社員を目指す上で、現場の業務しかできないのは問題となる可能性を指摘された真奥は、恵美と再会して忙しくなって以降ご無沙汰していた趣味らしい趣味を思い出します。

映画鑑賞と、真奥や芦屋の節制ぶりからはなかなか結び付かない意外な趣味が真奥にはあったようですね。

「・・俺はどうしてこのことを忘れていたんだ」

そうやって忘れてしまう程度のことを趣味と言ってしまって良いのか否かは微妙なところですが、ともあれ映画を観ている真奥は意外にも楽しそうで、アシエスとともに2回も観てしまい、映画館の高い食べ物を飲み食いし、ただの娯楽でここまで散財する真奥は今までで初めてではないでしょうか?

いや、映画館に限らず財布の紐を緩くする独特の雰囲気のある場所って確かにありますよね。(笑)

子供の食事時間

自分の作った料理をアラス・ラムスが食べてくれないと、恵美が鈴乃に泣きつくエピソード。

いや、考えてみればOLの一人暮らしで、ちょっと保育園とかに預けるわけにもいかないような特殊な子供を抱えているとがメッチャ負担ですよね。

「レストランで食べたお子様ランチのハンバーグはきちんと食べたのよ? だからそれを再現すればと思ったんだけど・・このままだと私、食べないことにイライラしてアラス・ラムスのこと怒鳴っちゃいそうで・・」

これは恵美、相当イライラしているというか、困っている以上に複雑な心情なのかもしれません。

まあ、結果的には恵美の料理が云々とかそういう理由でアラス・ラムスは食べなかったのではなく、仕事が終わってからお風呂に入って、それから食事をするというのが子供的には遅い時間だったから食欲が無くなってしまっていたということらしいのですが、これはなるほどって思いました。

子供のいる人とかなら、ピンと来たのかもしれませんね。

未知の料理への挑戦

エメラダ、ルーマック、そして鈴乃の三人が世話になっている千穂にエンテ・イスラの料理を振る舞うというエピソード。

異文化交流って感じで面白かったです。

見たことの無い料理を次々と食べる千穂はやっぱり豪胆だと思います。

「これは南大陸のヴァシュラーマという国の伝統料理でな」

特に鈴乃が選んだメインディッシュ。デルギン・グ・ザという料理には千穂も大満足だったようですが・・

「できれば、私はデルギン・グ・ザ以外でお願いね・・あはは」

食事会の後、恵美はそのデルギン・グ・ザは遠慮したいという様子。

どうやら知らぬが仏というか、そういう素材なのかもしれませんね。

というか、これって恐らくうどん拒否エピソードの時に鈴乃が言っていたトカゲ料理ですよね?

マグロナルドの面接

真奥と芦屋が職探しに奔走している時のエピソードで、現在に繋がる需要なエピソードでもあります。

真奥がマグロナルドで働くキッカケが見られるのも良かったですね。

ファストフードのチェーン店なのに他の店舗よりも味が良く、クルー達に余裕がある雰囲気に惹かれた真奥は、マグロナルドのこの店舗で面接を受けることにします。

面接中、木崎店長が真奥に対して敬語なのが何か新鮮だと思いました。

さて、このエピソードは食というより職がメインになっているような気もしますが、はたらく魔王さまのメシ!のタイトルに相応しく食もちゃんと関係しています。

なんと、木崎店長が真奥を採用した理由が、本当に美味しそうにマグロナルドのメニューを食べていたことと、履歴書の本人希望欄に「うまい飯が食いたい」と書いてあったこと。

何ともな理由ですが、こういうのが縁って言うんでしょうかね?

その後、最近のマグロナルド(エンテ・イスラのことが千穂の計略により漏洩した後)の様子が少し描かれていて、これもまた面白かったと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

最近では本編の方がだいぶ佳境に差し掛かっていますが、その分はたらく魔王さまの魅力の1つである異世界人による日本での日常の成分が薄めだったので、これは嬉しい短編集でした。

千穂や鈴乃や芦屋など料理をするキャラクターが多かったり、真奥のアルバイト先もファストフードだったり、鈴乃のうどん好きがフューチャーされていたり、何かと食べ物との縁が強い作品らしい感じで良かったと思います。

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