『このライトノベルがすごい 2019』平成最後のトレンドをチェックしよう!
2004年末に登場した『このライトノベルがすごい2005』から、記念すべき15冊目を数える『このライトノベルがすごい2019』が発売しました。
10周年である『このライトノベルがすごい2014』には特別企画的な内容があったので、15周年にあたる今年にも何かあるかなと思っていましたが、特にそういうことは無いようです。あるとしたら20周年でしょうか?
しかし、ついこの間10周年だと思っていたら、もう15周年とは時が経つのは早いものですね。
個人的には、丁度僕がライトノベルを読み漁るようになり始めた時期に刊行された書籍ということもあり、今まで15冊全てを読んできています。それだけに15年という時間の短さにビビっています。(笑)
自分の押し作品のランクインに一喜一憂するだけではなく、今まで知らなかった作品を知るキッカケとなるライトノベルのカタログ的な本書。
本記事では、今年のライトノベルのトレンドの、個人的に気になった点をチェックしていきたいと思います!
平成最後の『このライトノベルがすごい』に大注目です!
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文庫部門
ランキング上位作品の動向
錆喰いビスコ
ライトノベルはかなり読み漁っているつもりでしたが、今年文庫部門で1位になった作品は『錆喰いビスコ』という未読の作品でした。
他のライトノベルとは随分雰囲気の違う表紙だったからか、何となく目に入っていなくて今まで存在すら把握していませんでしたが、どうやら相当評判の良い作品のようですね。
今年の電撃大賞銀賞受賞作ということで、新作にして1位獲得となります。
新作での1位は『狼と香辛料』以来の2作品目ではないでしょうか?
そして、そういえば『狼と香辛料』も電撃大賞銀賞受賞作ということで共通点がありますね。
何となく、電撃大賞では大賞受賞作品よりも金賞・銀賞クラスの作品の方が大成しているイメージが強くて、『狼と香辛料』はそのイメージを強めていた所があると思っているのですが、『錆喰いビスコ』の今回の1位獲得でそのイメージが更に強くなったかもしれません。
いや、もちろん大賞受賞作にも面白い作品はたくさんあるのですけどね。
りゅうおうのおしごと
今年は『りゅうおうのおしごと』が、三連覇して『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。』以来の殿堂入りを果たすか否かに注目していましたが、残念ながら惜しくも2位でした。
1位とは僅差で、3位以下を突き放していただけに残念でしたね。
巻を増すごとに当初の勢いが無くなっていく作品も少なくありませんが、『りゅうおうのおしごと』はそんなこともなく、むしろ勢いは増していくばかり。
今年はアニメ化もされ、巻を増すごとに熱さも増していく名作なので個人的には1位になることを予想していました。
殿堂入りしても当然くらいに思っていたのですが・・
それだけその勢いにまで打ち勝つ『錆喰いビスコ』が凄かったということなのかもしれませんね。
結果は残念(といっても十分凄い2位)でしたが、逆に言えば今後も『このライトノベルがすごい』にランクインする姿を見ることができるかもしれないということ。
是非1位に返り咲く姿を見せて欲しい!
ちなみに、アンケートの世代別ランキングでは20代中盤から後半の中では1位になっているようです。いわゆるヒカルの碁世代で、囲碁と将棋とテーマは違いますが盤競技がテーマの作品に興味を持ちやすい世代なのかもしれませんね。
弱キャラ友崎くん
2年前に8位、去年7位と着々と順位を上げていた『弱キャラ友崎くん』がついに3位まで順位を上げてきました。
かなりの躍進ですが、個人的には全く驚きはありません。
正直、初登場時からもっと上でも良いと思っていた作品なので、ようやくあるべき所まで上がってきたという印象です。
比較的若い世代からの支持が高いようですが、設定やキャラ描写が秀逸で、中高生が主人公のラブコメはちょっと・・というオジサンにも楽しめる内容になっています。
個人的に今年ベスト3に入っている『弱キャラ友崎くん』と『りゅうおうのおしごと』の2作品は、2010年代のライトノベルで好きなものを5作品だけ選べと言われたら、間違いなく選択するであろう作品だと思います。(あとの3作品はその時の気分で変わりそう)
作者の屋久ユウキ先生のインタビューによると、既に物語は三分の二ほど進行していて折り返しているようなので先はそれほど長くなさそうなのが残念な所ですが、最新巻が非常に気になる所で終わっていることもあって続刊が今一番楽しみな作品だったりします。
早く読みたいけど、あんまり早く終わって欲しくもない。
ちょっと複雑な気分ですけど、やっぱり早く読みたいという方が勝りますね。
『弱キャラ友崎くん』関連の記事はこちら
その他の動向
『ソードアート・オンライン』『とある魔術の禁書目録』の高順位は相変わらずですが、意外にも10代から20代前半の若い世代からの支持が大きい。昔からのファンは新しい作品に目がいっていて、ライトノベル経験(?)の浅い若い世代が超大型シリーズを支持しているというような構図でしょうか?
確かに、これらはもはや殿堂入りクラスの作品なので、たくさんのライトノベルを読んできた人からは支持されにくくなってきているのかもしれませんね。
個人的には、かなり好きな『賭博師は祈らない』が13位と高順位なのが嬉しい所。
未読の作品の中では『三角の距離は限りないゼロ』が忙しくて積んだままにしてしまっていたのですが、8位と高順位になるような作品なのであれば優先度を上げて読んでみたいと思っています。
単行本・ノベルス部門
ランキング上位作品の動向
本好きの下剋上
単行本・ノベルス部門は『本好きの下剋上』が堂々の連覇!
単行本・ノベルス部門の作品の中では頭一つ抜けた高クオリティの作品なので、一度トップになったらなかなか陥落しないであろうことは予想の範疇でしたが、やっぱり予想通りの結果となりました。
今年は8月から5カ月連続関連書籍が発売するなど、 露出が多かったのも影響しているかもしれませんね。
個人的には、本編もモチロン面白いと思いますが、5カ月連続の途中で発売された短編集が想像以上に面白かったことが記憶に新しいです。
主人公以外のキャラクター、それこそ両手の指で足りないくらい多くのキャラクターが短編くらいなら主人公を張れるほどにキャラが立っているのが特徴の本作品ですが、主人公不在の短編集の発売によってそれが証明されたような気がしますね。
単行本・ノベルス部門の作品は、ここ数年で急速に刊行数が増しているような気がします。似通ったような作品が多いのは玉に傷ですが、そんな中で明らかに他には無い魅力を持った『本好きの下剋上』がトップになるのはある意味必然なのかもしれませんね。
『本好きの下剋上』以外にも面白い作品はありますが、恐らく競合作品が多いケースが多い気がするので、そういう意味でも『本好きの下剋上』はこういうランキングで有利なのかもしれないと思いました。
海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと
単行本・ノベルス部門でも知らない作品が一つ上位にランクインしていました。
作者の石川博品先生の名前はどこかで聞いたことがあるような気がしたので調べてみたら、『このライトノベルがすごい2015』で5位にランクインした『後宮楽園球場』、『このライトノベルがすごい2017』で6位にランクインした『メロディ・リリック・アイドル・マジック』の作者さんでした。
というわけで『このライトノベルがすごい』の常連の先生でした。
この中では『後宮楽園球場』は読んだことがあります。かなりの色物作品ということもあって僕には合わなかったのですが、ギラギラに尖った個性的な作品だったのは覚えています。
『海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと』は粗筋を調べてみた限り、少なくとも『後宮楽園球場』とは随分違った雰囲気の作品で、何となくゼロ年代作品ぽさがあるような気がしますね。
『このライトノベルがすごい2019』で始めて知った作品で、いくつか読んでみたいと思った作品が出てきましたが、その内の一つです。
「物語」シリーズ
安定の『物語』シリーズ。
かなりランキングの浮き沈みは激しいですが、高順位の常連作品になっていますね。
単行本・ノベルス部門の作品の中では恐らく一番の古株ではないでしょうか?
今年は、週刊少年マガジンでコミカライズ版が連載され始めたことでも話題になりましたね。西尾維新先生の作品は今までにもコミカライズされていたり、そもそも西尾先生は漫画の原作とかもやっていたので、コミカライズとの相性は悪くないのですが、『物語』シリーズは漠然とコミカライズされないのだろうと思っていただけに驚いた記憶があります。
ちなみに、西尾先生の作品で言うと『忘却探偵』シリーズも14位にランクインしています。
西尾先生も初刊行の『このライトノベルがすごい2005』から定期的にランクインし続ける常連の先生ですね。
ちなみに、僕は『このライトノベルがすごい2005』に載っていたことから西尾先生の『戯言』シリーズのファンになり、今でも西尾先生が最も好きな作家の一人です。
こういう風に作品との出会いのキッカケを与えてくれるのは『このライトノベルがすごい』の一番良い所ですよね。
その他の動向
『このライトノベルがすごい2017』から始まった単行本・ノベルス部門も三度目。
対象作品が群雄割拠している印象が強いですが、上位にランクインするような作品は安定してきているような気がしますね。
初代王者の『オーバーロード』は安定の4位。
今年アニメ化して話題の『転生したらスライムだった件』も上位の常連になりつつありますが、今年も5位と高順位でした。
スライムといえば初トップ10入りの『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』が9位でした。バトルものが多い単行本・ノベルス部門において、珍しいほのぼの日常系の作品ですね。タイトルはほのぼの日常系じゃないですけど。(笑)
タイトルにスライムが入っている2作品とも、コミカライズ版が好調という共通点があるのも面白いですよね。
キャラクター女性部門
ランキング上位作品から多く登場するのはいつものことですが、『とある魔術の禁書目録』の御坂美琴がまた1位になっているのはさすがですね。
何と全15回中、9回も1位になっています。
魅力的なキャラクターであることは間違いありませんが、もう嫌と言うほどわかっているのでさすがに殿堂入りさせてしまって良いのではないでしょうか?
それよりも他の新しいキャラクターにスポットを当てて欲しいですよね。
ランキング上位作品からは、『本好きの下剋上』からマイン、『りゅうおうのおしごと』から空銀子、夜叉神天衣の2人。そして『弱キャラ友崎くん』からは七海みなみがランクインしています。
同作品の空銀子には及びませんでしたが、夜叉神天衣は最新刊での活躍から一気にファンが増えたのではないでしょうか?
僕も、最新刊を読んでから夜叉神天衣というキャラクターが好きになった一人です。
ちなみに、『りゅうおうのおしごと』からは残念ながらメインヒロインが完全にランク外という結果でしたが、最近はメインヒロイン以外にスポットを当てたエピソードが中心になっているので、その辺は仕方が無いのかもしれませんね。
そして、直近のエピソードで重要なキャラクターとなってきて、最新刊の短編集でも最もエピソードの多かった七海みなみが6位にランクイン。
よくよく考えると上位10人の中では一番普通の人ですね。(笑)
最近は食パン「超熟」のイメージキャラクターにもなって話題になりました。
個人的な好みで言えば、『弱キャラ友崎くん』のキャラクターの中では菊池風香、夏林花火あたりの方が好きで、次いで七海みなみという感じなのですが、七海みなみの方が上位にランクインしているのはわかる気がします。
『弱キャラ友崎くん』の中でも一番普通の女の子という感じがして、親しみやすさが断トツという感じがするのが人気の理由でしょうか?
ちなみに、菊池風香も21位にランクインしていました。
キャラクター男性部門
キャラクター部門ではやはり毎度の如く『とある魔術の禁書目録』が強いですね。
上条当麻に一方通行、『とある魔術の禁書目録』ではありませんがキリトや比企谷八幡あたりは上位の常連で、彼らも最早殿堂入りで良いのではないでしょうか?
特に、男性キャラクターは群雄割拠で入れ替わりの激しい女性キャラクターに比べて一部のキャラクターに人気が集中しがちなので、常連勢が殿堂入りしないと新鮮さが失われつつあるような気がします。
今年度の1位である『錆喰いビスコ』の赤星ビスコなどもランクインしていますが、こういう新鮮なキャラクターが入り込む余地が上位10人の内の数枠しかなくなってしまっているのが残念ですね。
イラストレーター部門
こちらも作品が上位にランクインしているイラストレーターが多いですね。
まあライトノベルの場合、作品を面白くする効果の一部をイラストが担っているのは間違いないので、妥当な所だと思います。
やっぱり『とある魔術の禁書目録』のはいむらきよたか先生が上位にいるのはいつものこと。『弱キャラ友崎くん』のフライ先生も3位にランクインしていますね。
そして、個人的に『りゅうおうのおしごと』『86―エイティシックス―』のしらび先生はマジで凄いと思います。
昨年度の8位から躍進しての1位で、『このライトノベルがすごい2019』の表紙イラストも描かれていますが、タイプの違う作品で雰囲気の違う絵を描き分けていて、しかもどちらもとっても魅力的。
『りゅうおうのおしごと』のポップで可愛らしい絵。『86―エイティシックス―』の格好良い絵。最初、同じ人が描いているということに気付いていなかったくらいですが、確かに言われてみれば同じ絵柄ですね。
同じ絵柄なのにこうも雰囲気を変えられるとはさすがな実力です。