『ガンバ!Fly high(6)』さすらい転校少女が再登場します!(ネタバレ含む感想)
『ガンバ!Fly high』は、藤巻駿をはじめとする平成学園の男子体操部員の成長と活躍を描いたスポーツ漫画です。
5巻までレビュー記事を書いてきて何を今更という感じかもしれませんが、これも以前から言及している通り『ガンバ!Fly high』はスポーツ漫画的な面白さだけが見所の作品ではありません。
4巻から5巻にかけて描かれている種目別選手権のエピソードはどちらかといえばスポーツ漫画的な面白さが際立つエピソードだったと思いますが、6巻前半の地区大会、そして後半の全国大会についてはスポーツ漫画的ではない部分の面白さが色濃いように感じられます。
地区大会では、またもや廃部・・&コーチたちの首が掛かった試合に頼りの三バカが出場できないというピンチの中、選手の入れ替えというある意味スポーツマンとしては絶対に許されないはずの反則を主人公たちにやらせてしまい、しかしそれが最後感動的な展開に繋がるなんて、なんて秀逸な物語展開だと思わされます。
そして何よりメインヒロインである相楽まり子との再会から始まる全国大会編。
甘酸っぱい雰囲気の展開になるのかと思いきや、試合を通して転校後の相楽まり子の人間関係に迫る独特な物語展開になっています。
いずれにしても、藤巻駿たちはただの成果発表というだけではない試合をすることになっている点に共通点がありますね。
個人的には、6巻後半の全国大会編のエピソードが大好きなのですけど、たぶんこのエピソードが好きな人って多いですよね?
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本作の概要
1年前より成長した藤巻駿が見違えたような活躍を見せるものの、とはいえ陰謀渦巻き三バカ抜きになった地区大会で優勝するのは簡単なことではないようです。
そんな中で行われたのはまさかの選手のすり替え。追いつめられていたとはいえ、上野が内田と入れ替わるという不正を平成学園体操部はやってしまいます。
その後、その不正の告白までしてしまったものの紆余曲折あり全国大会への出場を決めた平成学園。
そこでは久しぶりのメインヒロイン・相楽まり子との再会が待っています。
しかし、猫かぶりが得意なさすらいの転校少女は、そこでの人間関係に苦しめられていました。
本作の見所
選手のすり替えと地区大会の結末
正々堂々としていることが美徳とされる勝負の世界。スポーツの世界はまさにその筆頭だし、爽やかなイメージも手伝って反則がもたらすイメージへの悪影響は相当に大きいはずです。
真剣なプレイの中で発生する事故的な反則ならまだしも、明らかに故意の反則は許されざるべき行為ですよね。
しかし、『ガンバ!Fly high』におけるこの二度目の地区大会のエピソードでは、主人公である平成学園の男子体操部にかなり露骨な反則をさせています。
団体戦における途中からの選手のすり替え。上野が背格好の似ている三バカの一人である内田と、途中から入れ替わって団体戦を続けてしまったわけですね。
どんな選手にも得意不得意な種目があるわけで、こんな選手のすり替えがまかり通ったら極論どんな種目でも敵なしのジェネラリストが誕生してしまいます。(笑)
というわけで、選手をすり替えたという事実だけを捉えたらなんとも後味の悪そうなエピソードなわけですけど、実のところむしろ主人公である藤巻駿の綺麗な部分を強調するような結果になっているのが面白いところ。
平成学園が反則するに至った原因には大人たちの権力抗争に巻き込まれる形になったという同情すべき点があったこと。
それに敬愛するコーチたちの首が掛かっていたということ。
そんな同情すべき点があったので、もしかしたら黙って優勝していても良かったのかもしれません。
なんせ、三バカの内の一人が入れ替わっただけで平成学園は大活躍だったわけで、フルメンバーなら優勝はそもそも固かったわけなのですから。
「本当の優勝は君達だよ!! ごめんね!」
しかし、黙っていたら優勝だった表彰式、藤巻駿はどうしても黙っていられなくなって全てを打ち明け、金メダルを2位だった青春中学に譲ってしまいました。
その行動が、むしろ平成学園のスポーツマンシップが評価される結果に繋がったわけですね。
相楽まり子との再会
中学生にとっての1年といえば相当長い気もしますが、全国大会の開催地が福井になっていたこともあり、藤巻駿は福井に転校していったメインヒロインの相楽まり子と久しぶりの再会を果たします。
1年以上ぶりのはずですが、そう感じさせられないくらいに距離が近くて良いですね。
1年といえばあっという間と気もしますが、中学生くらいにとっての1年だと相当長いはずなのに、それを感じさせません。
こんな感じで『ガンバ!Fly high』という作品の序盤において相楽まり子というメインヒロインは、エピソードごとに別れと再登場を繰り返すことになるわけなのですが、変わらない相楽まり子と平成学園男子体操部の距離感が素敵だと思います。
最大の見所は観客席
そんなわけで初めての全国大会に臨む平成学園男子体操部。
アンドレアノフの教えを受けジュニアの大会も経験した平成学園は、初めてにしては余裕をもって全国大会に臨もうとしています。
李軍団の所属する中学校も出場していて緊張感も高まりますが、アンドレアノフの教えを受けた楽しい体操、それぞれの個性を発揮した体操を見せつけることになります。
しかし、この全国大会編。体操の演技のシーンはもとより観客席のいざこざがまた面白い。そういえば、種目別選手権では実況席が面白いことになっていましたが、『ガンバ!Fly high』は体操の演技を見ている側の人たちが面白いという特徴もありますよね。
そして、今回の観客代表は何といっても再会した相楽まり子ですが、どうやら藤巻駿相手には強がっていたものの転校先の学校での人間関係がうまくいっていないらしく、友人の園田優香里以外とは非常に険悪な関係になってしまっています。
そして、どうやらその遠因が藤巻駿にあるらしいのですが、とにかく基本爽やかな本作品にしては珍しい修羅場が観客席を舞台に繰り広げられています。
「まり子のために勝って!! あの子学校で孤立してるのよ・・。あの子を元気づけてあげて!!」
そして、園田優香里が相楽まり子に内緒で藤巻駿にかけた発破。
それが今までとは一味違う勝ちにこだわった必死な演技をするという珍しい藤巻駿の姿に繋がり、まあまさに観客席のいざこざが選手にまで影響を及ぼすという変わった展開に繋がるわけですね。
正直、演技そのものより観客席の印象が強いという変わったエピソードだと感じましたが、そういうのも面白いと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
観客席から目が離せない、スポーツ漫画としては非常に珍しい物語展開がメッチャ面白いですよね?
アンドレアノフの楽しい体操を尊敬する藤巻駿が、かなり勝ちにこだわった演技をする点でも珍しいエピソードで、実のところ今までの藤巻駿の体操の良さを打ち消している意味もあるのですが、それなのに「らしい」と思わされるのも良いところ。
7巻では全国大会にも観客席にも決着が着くことになると思いますが、このエピソードは本当に何度読んでも面白いと思います。